June(18) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

奏が地下のレッスン場でピアノを弾いていると、いつの間にか真尋が入ってきていた。


「あ・・」


思わず手を止める。


「あ、いいよ。 遠慮すんなって、」


真尋は笑った。


奏は弾き続けた。


真尋は棚から楽譜をいろいろ取り出してペラペラとめくってみていた。


特に気にしている風もなかったのに


「・・ボーズ、巧いんだな、」


ボソっと言った。


「え?」


「その年で。 ショパンのワルツ・・・完璧じゃん。」


「や、まだやり始めたばっかで、」


「おれなんかソレ弾けたのウィーンに行ってからだぜ、」


「・・でも、今の真尋さんは。 スゴイですから、」


奏はポツリと言った。


「ま、別におれは今でもすごくねーからな。 ほんと、恵まれてたなーって思う、」


真尋はスッと奏の隣に行ってぽーんと人差し指で鍵盤を叩いた。


「挫折しそうになるとさ、誰かがおれに音楽が素晴らしいってこと・・思い出させてくれる。 ま、今は・・いろいろと自分でやんなくちゃならなくなって。 余計にありがたさ感じるっていうか、」


「・・志藤さんのことですか、」


奏は思い切って訊いてみた。


「ん。 なんだかんだでさあ、あの人がおれのピアノ信じてくれてたっつーか。 ボロクソ言われても、ずっとその気持ちだけは伝わってきたな。 おれは、いつもあの人に最上級のホメ言葉言わせてやる!って思いながらやってたかもな。」


真尋は静かに笑った。


「今はもう。 そういうことからも卒業した感じだし。 いろいろあったけど。 その頃が一番楽しかったかも。 その時はほんっと・・あのおっさん、いつ殺したろーかって思うくらいだったけどなー。 だって、何言ってもすげー勢いで100倍くらい言い返してくるんだもん。 おれなんかじゃぜんっぜん言い返せないの。 したらもう、ピアノで反撃するっきゃねーじゃんて、」


奏はその言葉に思わず笑ってしまった。


「ほんと・・そうですね、」


あの時のことを思い出した。


「ここで真尋さんのいろんなDVDも見せてもらいました。 ぼくも・・真尋さんみたいな『ラフマニノフ第2番』を弾いてみたい、」


「え? ほんと? あれはなー・・ほんっと大変だったからなー・・。 さすがのおれもおかしくなりそうだったけどなー。 ま、おれだけかもしれないけどな。」


いつものいたずらっ子のような顔を見せた。



「は? なに、真尋帰って来てんの??」


志藤は思わず手を休めて南を見た。


「うん。 一昨日から休暇で、」


「挨拶もないってナニ?」


「ああ、流れで週末の梓さんたちの結婚式にも顔出すって言うてたよ。 そん時でいいって思ってるんちゃう?」


南は全く気にしてない様子だった。


「いい年にもなって礼儀もしらんのかい、」


「まあまあ。 ね。 それより。 設楽さん、全然OKしてくれたよ。 その平林さんて人も良かったら招待してって言うたら、喜んでって。」


南は身を乗り出した。


「はあ? ほんまに?」


「ま。 もうこんだけ準備しちゃったから断ることもでけへんかったみたいやけど。 でも志藤ちゃんが考えてるみたいなこだわりなんか全然ないし。 二人が幸せになろうとしてるのに、ライバルだとかそんなん関係ないって。 みんなでお祝いしてあげたいやん、」


「・・・社長にちゃんと許可取ったんかい、」


「あったりまえやん。 社長だっていっこも気にしてへんかったよ。 そんなの。 お義母さんも喜んじゃってさ。」


志藤は首筋を手でマッサージするようにしてため息をついた。


「なんだかんだで。 みんな好きやなあ、」


その言葉に南は笑ってしまった。



真尋も志藤とともに歩んできた道のりが糧になっています。奏はこれからやってくる自分の未来が楽しみでたまりません…



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