Believe(19) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「和馬はサラリーマンで。 所帯も持って・・頑張ってる。 オヤジの跡はおれが継ぐし、親の面倒はおれが見る。」



拓馬は自分の小さな決心を口にした。


何だか自分の表情を見られたくなくて背を向けたままだった。



父がどんな顔をして聞いているのか


それを思うだけでたまらない。




「・・・なに言ってやがんだ・・・。 おめえの世話になんかなろうだなんて思ってねえよ、」



それでも予想通りの父の答えが返ってきて


少しだけ嬉しかった。



しかし



「おまえだって・・・いづれは所帯を持つだろうが、」



その言葉が


いろんな意味を含んでいるようで。



「・・おれは。 結婚しないよ。 いいよ、もう・・・。 めんどくせえ、」



語尾が少し震えてしまった。



少しだけ強がったが、今はもう彼女以外の女性と結婚は考えられなかった。


彼女と一緒になれないのなら


一生ひとりでいいと本気で思った。




抗がん剤の点滴を受けていた父は


やはり具合がものすごく悪いようで、うなるようにそれに耐えていた。


昼間様子を見に来た主治医に


「・・・先生・・・。 もうこんな治療なんか・・やめてくれ。 良くなるどころか・・どんどん具合が悪くなる、」


あまりの苦しさに悪態をついた。


「もう少しで今日は終わりますから、」


なんとか宥めようとする医師に


「もう、外してくれ! こんなもん!」


思わず声を荒げて自分で点滴の管を引き抜こうとした。


そこにいた拓馬は慌てて父の身体をおさえつけた。


「バカっ!! なにすんだっ!」


「うるせえ! 離せ!!」


尚も暴れる父に


「頼むから!!! ちゃんと治療を受けてくれ!! んで・・・早く・・良くなって! おれにまた仕事をガンガン教えてくれっ!! 身体を治さないと、元も子もないだろーがっ!!」


拓馬はぐっと父を押さえつけた。


柔道が黒帯で


自分が高校生くらいの時もぶん投げられるほど力があった父が


今はいとも簡単に押さえつけることができる。



「・・たのむから・・・。 ちゃんと・・治療を受けてくれよ・・」



泣きそうになってしまった。



そんな拓馬の姿を見て、父は身体の力をふっと抜いた。



本当にこのまま父に病気のことを黙っていてもいいのか。



拓馬はそんな思いがふっと頭をよぎる。


こんなに苦しませて


一日でも長く生きて欲しいだなんて


おれたちのエゴじゃないのか。



涙を父に見られぬようにそっぽを向いて顔をさっと拭った。



その日から


父は黙って苦しみに耐えて


おとなしく治療を受けるようになった。


何も言わずに


黙々と。



苦しい治療に耐える父を見ていられない拓馬ですが、今はもう自分しかいないと思えて・・・



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