Believe(18) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「そう。 受かったの。 よかったね、」


夜実家に寄って拓馬は電気工事士の試験に合格したことを母に告げた。



「これで少しは仕事が増やせる。 今度川野のオヤジさんにも仕事を紹介してしてもらえるように頼んでみるよ、」



母の料理を食べるのも久しぶりだった。



給仕に来た母の二の腕が赤く蚯蚓腫れになっているのを見つけた。



「どしたの、それ・・・」


と指摘すると


「ああ。 またね、抗がん剤の治療が始まって。 最初は苦しくて暴れるから・・・・。 それを抑えようとするとすごい力でつかまれるからさ、」


母は笑いながら言った。



「・・・大丈夫かよ・・・・。 そういうときはおれが行くから、」



「優香ちゃんも看病を代わってくれるって言ったんだけど。 でも・・たぶんお父ちゃんの面倒はあたしじゃなくちゃダメだから。 なんだかんだ言ってビビリ屋だからね。 あの人は。 弱いところを他の人間には見られたくないんだよ、」



その傷にそっと触れた。



「あんなに苦しんでいる所を見るのは・・・つらいけど。 でも、お父ちゃんには何としてでも一日でも長く生きてもらう。 生きていれば・・絶対によかったって思うことばかりだと思うから、」



父はあんなだが


決して亭主関白ではない。



母親に手を出すことは一度もなく


口ではものすごいケンカはしょっちゅうだけど、結局口では母に勝てないし。


いつの間にかふてくされて飲みに行って終わってしまう。



母の方が何倍も上手なのだ。



「・・たまに。 うなされてる時もうわごとみたいにね。 『もっとちゃんと組まなくちゃダメだ!』とか『そこはきっちり楔掛けとけ』とか。 あんたに夢の中でも教え込んでるみたいに。 ああ、お父ちゃんも必死なんだなって。 自分の命の限りは知らないだろうけど・・・自分の全てをあんたに託したいって思ってる、」


父の思いが痛いほど伝わる。





「おはよ、」



拓馬は母を休ませたくて、無理を言って自分が病院にやって来た。



父は寝ているのか起きているのかわからないほどぐったりしている。


少しだけ目を開けてカーテンからこぼれる日差しを感じたのか



「・・・仕事は、」



ゆっくりと口を開いた。



「今日は休みだよ。 日曜だから。 お母ちゃんがちょっと用があるっていうから、おれが。」



「・・・別に、来なくてもいいんだ、」



弱々しい声だが、いつもの父の様子だった。



拓馬は母から託された洗濯した下着やパジャマをロッカーに入れた。



その背中に



「・・・おれは。 もう・・・現場には行かれねえかなあ、 こんなになっちまって、」



おそらく初めて聞く父の『弱音』が突き刺さる。



一瞬手を止めてしまったが、



「・・もうオヤジは自分の身体のことだけ考えてくれればいい。 おれが、全部やる。 オヤジは不満だろうけど、おれが・・・やるから。 ゆっくり治せばいいんだ、」



自分がこんなにウソがうまいだなんて


知らなかった。



初めて弱気を見せる父に拓馬は必死に演技を続けます・・




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