In a dream(12) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「もうしょうがないねえ。 だからひなたのいうとおりはやく病院にいけばよかったんだよ~。」


学校の帰りにひなたとななみが病院にやってきた。


「すぐこんなところ出ちまうから。 大丈夫だよ、」


父は孫たちが来てくれてご機嫌だった。


「おじいちゃん、これ。 ななみがずこうのじかんにかいたんだよ。 ハッピーとおはな~、」


ななみが嬉しそうに絵を見せた。


「そうかそうか。 これはじじの家だな、」


「そうだよ。 おにわのえだよ。」


「はやくみんなでハッピーのおさんぽ、行きたいよね~。」


ひなたやななみの笑顔に母は寂しそうに笑った。



明日から抗がん剤の治療が始まる。


副作用も激しいらしいので、こうしてにこやかに孫たちと会話をすることも難しくなるかもしれない。


それでも、できる限りの治療を頼んだことは後悔していなかった。


この人は最期までこの日常がないと


きっと絶望してしまう。



病院にも通う母のためにゆうこや子供たちは白川家に泊まることも多くなった。



「ああ、おかえり。 ごはんできているよ。 ゆうこはさっきこころを寝かしつけに行ったから。 そのまま寝ちゃうんじゃない?」


志藤は仕事帰りに白川家に立ち寄ると、母が笑顔で迎えてくれた。


「ああ、おかまいなく。 おれはひとりでも何とかなるし・・・」


「いいんだよ。 一人分も5人分も同じなんだから。 あたしが幸太郎ちゃんに夕飯に寄るようにゆうこに言っておいたんだから。 」


母はいつもと変らない。


結婚して8年になるけれど、この母はいつも本当に明るくて


白川家の太陽のような人だ。


「お義父さんの様子はどうですか、」


シンとした居間に志藤の声が通る。


「ん?  一昨日から抗がん剤の点滴始めたんだけど。 さすがに食欲もなくなってきてね。 先生がうまいこと説明してくれて、膵臓の治療だからって言ってくれたけど。 いちおうちゃんと言うこと聞いてるよ、」


お盆に志藤のための食事を運んできた。



「そうですか・・・」


「あたしは大丈夫だからってゆうこに言ったんだけどね。 あの子心配性だから。 あたしがひとりなのを気にしてるみたい。」


「子供たちもたくさんでうるさいでしょうが・・・おれのことは構いませんから、ゆうこはここに・・・」


「確かに。 子供といると気がまぎれるよね。 賑やかで。」



父の病が告知されたあとも


彼女の涙を見たことがない。



「ほんと。 あたしたちは幸せモンだと思うよ。 息子たちも娘も・・孫たちにこうして囲まれて。 幸太郎ちゃんのご両親は・・・寂しいだろうなあって・・申し訳ないくらい。」


自分の親のことまで心配してくれて。



志藤は小さなため息をついた。



「あたしたちも70近いし。 もういつあの世に行っちゃっても神様に文句言えないよ。 大事なのは残された時間を有意義に過ごさせてやること。 人間誰だっていつかは死ぬんだから。」



いつもこうして


自分たちよりも少しだけ高いところにいて、きちんと見ていてくれているという安心感に溢れた人だ。



「・・拓馬は・・どうしていますか。」



「拓馬? ああ・・何とか頑張ってるよ。 もうお父ちゃんの仕事くらいできるんだけどね。 いつまでもお父ちゃんがいると頼っちゃうから。 いい機会だよ。」



母は笑ってお茶を飲んだ。



拓馬がこれからどうなるのか。


二人は一瞬同じことを考えてしまった。



ゆうこの母は相変わらず深い人です・・・。 志藤は尊敬の念さえ覚えます。



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