Surely(1) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「おー! うめ~~! この桜餅!」


拓馬は縁側に座って、詩織の祖母・八重からお茶をごちそうになっていた。


美味しそうに菓子をほおばる彼を八重は優しく見守った。



「たくさんあるから、他の皆さんにも持っていって。」


「ありがとうございます!」


「お父様は甘いものはお好きじゃないの?」


「酒呑みですからね。 あんまり食べないなァ、」


「さっき、どうですかと声をかけたら『大変申し訳ないですが、ご遠慮いたします。』って。 深々とお辞儀をされて、」


「ハハ・・・。 ただ苦手なだけのクセに、」


「厳しい人だけど・・・仕事はまじめにして下さるわねえ、」


「それだけが取り柄で。 ほんと、うるせーとしか言いようがないんだけど。 おれ、中学高校とあんま素行がよくなかったから。 オヤジとはいつも取っ組み合いのケンカになって。 吹っ飛ばされておれが骨折したり、」


拓馬の話に八重は目を丸くした


「あら、まあ・・・」


「兄貴も妹もデキが良かったし。 まあ・・・オヤジはおれを怒るためだけに生きてんじゃねーかって思ったり、」


拓馬はふっと寂しそうに笑った。


「手がかかる子ほどかわいいって言いますよ。 こうしてきちんとお父様の跡を継いでいるんだから、今は親孝行です、」


八重はそっとお茶に口をつけた。



「この年になってもまだ怒られてんだから。 子供みたいに、」



「いいご家族なのねえ、」


「え、」


「いつも。 文句を言いながらも楽しそうだし。 きっとご両親もご兄妹さんも仲がいいのねえ。」


そんな風に言われると、気恥ずかしい。



「や~~、そんな上等なもんじゃないよ・・いつもオヤジの声がうるさくてすんません、」


「この家は長いこと3人だけで。 女ばかりで静かでね。 ああいう威勢のいい声が聞こえることもないし。 私はとても楽しいのよ、」


「おばあちゃん・・・・」


「詩織も。 小さい頃は病気がちであまりお友達もいなかったし、大学に行ったり会社勤めをするようになって少しは明るくなって。 周りから反対もされたけど本当に良かったと思っているわ。 『千睦流』の家である以前にきちんと普通の感覚を持つ子になってほしかったから、」



孫娘を思う気持ちがひしひしと伝わる。



「たまに。 彼女がプロデュースした店なんかの写真を見せてもらうことがあるけど・・・すごくいい感じで。 いい感性してるなーって。」


「きっとそういうことがこれからの詩織の人生の糧になるでしょう。」



桜がほぼ満開になりつつあった。

まだ咲いたばかりなのに、花がそのままの形で風に乗ってくるくると落ちてきた。


それを手にして木を見上げる。


「鳥でしょう。 ああやってくちばしでつまんで落としてしまうの、」


八重は穏やかに言った。


「もったいねえなあ・・・。」


拓馬はそれを掌に乗せた。




詩織は仕事から戻って、自分の部屋のカーテンを開けた。


すると窓枠に何かが挟まっているのを見つけた。


鍵を開けて少しだけ窓を開けてそれを引き抜いた。



桜の押し花がちりばめられたブックマークだった。



きれい・・・・



きちんとコーティングされていて、桜の花が散ったようなレイアウトがされている。



・・あの人だ。



すぐにわかった。


見た目はちょっと怖いけど


笑うと笑顔が優しくて


口は悪いけど、こうしてびっくりするような繊細な心も持っている。




大事そうに手の中に収めた。




拓馬の感性にも惹かれていく詩織。 『桜の栞』は彼女の心をぎゅっと掴んだようです・・・




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