「・・あたしは彼を好きでい続ける。 これから先、何があっても。 彼に・・・うとまれても、」
あゆみはその決心を口にすることによって
また自分の気持ちを確かめた気がした。
そして
脇の棚の引き出しに入った小さな箱を取り出した。
結城に貰ったパールの指輪だった。
「これ。 結城さんから貰ったの、」
「・・指輪・・・?」
「これは・・・彼のお母さんの形身なんですって。 それを彼のおばさまから聞いた時・・すごく嬉しかった、」
あゆみの笑顔は
本当に輝いていた。
「彼がどんな気持ちであたしにこれをくれたんだろうって・・・思うだけで胸がいっぱいになって、」
この人と
これからの人生を歩いて行けたらどんなに幸せだろう
って
初めて思えた。
そして
そのあと・・・あの『事件』があって・・・
あゆみの表情から笑顔が消えた。
「・・ごめんね。 有吏には・・心配かけちゃうと思うけど。 ・・あたしは大丈夫だから。」
「そうかあ・・・・。 なんか切ない・・・」
茜は大きなため息をついた。
「結局。 おれってなんもできないんだよな・・・。 勢い余って結城さんのお父さんとお母さんにはつきあうのは反対みたいなこと言ったって、姉ちゃんを説得することもできないし。」
有吏はアイスコーヒーのストローを意味もなくぐるぐると回すだけだった。
「でも。 びっくりした。 女に恨まれて刺されるなんてドラマだけの世界だと思ってたし・・・・」
「・・何とも、思わない?」
有吏は彼女の顔色を伺った。
「・・何ともって・・・。 まあ、胸が痛いというか。 あたしの知っている結城さんだって・・・ほんと大人で優しくていい人だったから。」
茜はそう言ってから
自暴自棄になった彼からいきなり押し倒されて抱きしめられたことを思い出してしまった。
あのときの彼は
やっぱり少しだけ本当の自分をさらけ出そうとしてた。
「あのときも。 もう事業部を辞めて実家に戻って・・・お見合いをするって言ってたし。 でも今度のことだって本心じゃないと思う。 あの人・・・本当は音楽に対してもすごく情熱がある人だから、」
結城のことを『あの人』という彼女にちくんと胸を痛めた。
そして
いきなりこの前の『キス』のことを一気に思い出し、有吏は一人カーッと赤面をした。
あれは。
いったい何だったんだ???
またこうやってなんでもなかったかのようにお茶を飲んだりしてるけど。
彼女もぜんっぜん気にしてない風で。
いきなり恥ずかしくなり彼女を正視できなくなった。
「でも。 お姉さん・・・すっごく強い人なんだね。 だっていきなりプロポーズを取り下げられちゃったんだよ? あたしならもう泣いて喚いてめちゃくちゃ責めちゃうけど、」
「おれは。 いったいどーすりゃいいんだろ・・・・」
有吏はまたあゆみのことを思い、頬杖をついて店の外をガラス越しに見た。
有吏は姉の気持ちを思うと、やはり心配でなりません・・・
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