「・・・男の人って弱いんだなァ・・って、思うようになって、」
あゆみはラビットフードを手に載せて、ウサギに食べさせてやった。
もう彼女の手からも餌を食べるくらい、すっかり慣れてしまっているようだった。
「はあ??」
この一大事になんでこの人はこんなに落ち着いているのか
と有吏は全く彼女の気持ちがわからなかった。
「水商売で勤めるようになって。 すっごーく落ち込んできたりするお客さんがいてね。 仕事のことだとか家庭のことだとかで悩んで。 ホント子供みたいに泣きそうになって『おれ、どーしたらいいんだあ・・・』って。 よしよしって頭を撫でてあげたり。」
あゆみはふっと笑った。
「彼も。 表面上はクールで大人で・・・すっごく冷静な人だけど・・・ホントにナイーブな人で。 だって、人から刺されるなんてよく考えたらすごい体験だと思わない? もう、どんだけショックだったかと思う。 まあ・・過去に自分がしたことを猛烈に反省して、刺した人を恨むというよりもそんな自分に立ち直れないんじゃあないかなあって・・」
そして
冷静すぎるくらいに結城のことをわかっていた。
「ねえ、有吏・・・」
あゆみは改まって有吏を見た。
「え・・・」
「・・・あたし。 彼のことが・・・好き、」
こっちが恥ずかしくなるくらい
まっすぐ見られて。
「・・・なんだよ、イキナリ・・・」
姉からそういう言葉を聞いたのは初めてだったので
こっちがドキドキしてしまう。
「・・ずっと思ってた。 どんどん彼のことが好きになっていって。 惹かれていって。 たぶん・・このまま諦められなくなっちゃうんじゃないかって・・・。 あたしなんかが・・・彼と一緒になれるはずがないって、諦めなくちゃって思う反面・・ずっとそういう気持ちだった、」
ウサギを段ボールの寝床に戻してやった。
タオルの中にすぐにもごもごと入って行ってしまった。
「彼も・・・今までいろいろあった人だけど、あたしにとっては彼と出会ってから今日までの彼が全てだから。 元カノに恨まれて、刺されても・・・あたしにとっては大好きな彼であることには変わりがないから・・・・」
子供のころは
6つも離れたこの姉は大人で
この人の気持ちなんかわかるわけでもなかったけど
自分がハタチを超えた今
すごくすごく姉の気持ちがわかるようになった。
頼りないようで
すごく芯がしっかりしていて。
スタイリストになりたくて専門学校へ行きたいと言ったときに両親は反対した。
もっと堅実な仕事について欲しいと願ったけれど
彼女は自分の信念を曲げなかった。
慣れない水商売を始めたときも
自分にはつらい顔ひとつ見せずに笑顔で頑張って来た。
今のこの姉の瞳は
ちっとも変っていなかった。
この事件はあゆみを逆に強くしたようです。 有吏はそんな姉に驚き・・・
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