有吏が風呂に入っている間
あゆみは彼からのおみやげをそっと両親の位牌の前に置いた。
手を合わせて目を閉じる。
有吏がんばってるよ・・・
あたしはずうっと・・・有吏のこと見てるから。
だから安心して
両親が死んでから
ずっと誓い続けてきたことだった。
この子を一人前にするまでは
あたしはどこまでも頑張ろうって。
自分のことは
全部終わってからでいいから・・・・・
「え、チケット??」
「うん。 来週。 北都マサヒロさんのリサイタルがあるんだ。 おれは客として行くことになるから、きみも。」
結城は仕事帰りに『ゆうき』に寄って、彼女の仕事が終わるのを待った。
「北都マサヒロさんの、」
「とにかく。 彼のピアノは最高だから。 一緒に聴きたいなって思って。」
「・・ありがとうございます・・・・。 でも、有吏は・・」
弟も仕事でそこには行くだろう
そう思ってためらった。
「有吏はスタッフとして仕事になると思うけど。」
「・・そう、ですか。」
まだ有吏には何も言えていない。
「その髪留め。 キレイだね。」
結城は彼女の髪に目をやった。
「え? ああ・・・有吏が京都で買ってきてくれたんです。 いちおう西陣織で、」
あゆみは嬉しそうに手をやった。
「その京都でやるイベントの企画にも参加させてもらえるようになったってホント喜んでて。」
弟のことを話す彼女は
本当に嬉しそうで。
自分に入り込める隙間なんかないんじゃないか、とつい弱気になりそうだった。
「遅かったじゃん。 この辺あんまり人通りがないから、駅についたら迎えに行ったのに。」
家に戻ったのが12時近かったので、有吏は心配そうに言った。
「あ・・・ごめん。 ちょっと後片付けが長引いて・・・。 女将さんに食事をごちそうに、」
あゆみはとっさにウソをついてしまった。
帰りに結城の部屋に寄ってきて、すぐそこまで彼に送ってきてもらった。
少しの間も惜しんで彼に会いたい
そう思う反面、有吏に本当のことをどうしても言えず心がシクシクと痛んだ。
「わ~~~! ヤバい!! 目覚ましが止まっているとは!!」
有吏は朝起きてもうパニックになっていた。
この前の日曜日も出勤だったので、この日は午後からでいいと言われて
油断して寝過ごした。
もちろんあゆみは出かけていていないので、起こしてくれる人はいない。
「頭、バクハツしてるし~~~!!」
寝癖が思いっきりついていたので、あゆみの部屋に入ってドライヤーを借りようとした。
そして髪を何とか整えた後、彼女のドレッサーにそれを置いたとき
あれ・・・?
そこにあったある物を思わず手に取った。
有吏が偶然手にしたものは・・・・?
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