「だから。 斯波さんが理解してくださったことが本当に嬉しかったみたいで。」
絵梨沙はコーヒーを斯波に差し出した。
「おれは、自分がいいと思ったことを言ったまでだ。 彼の素晴らしさをたくさんの人に知ってもらいたいだけだ、」
本当はもっともっと言いたいことがあるようなのに
無口な彼の精一杯の気持ちのような気がして絵梨沙は胸がいっぱいになった。
・・・・・・
タバコを買いに行っただけのはずの真尋が1時間経っても戻ってこない。
「・・携帯も繋がらないし・・・、なにやってるのかしら、」
絵梨沙は電話を切ってため息をついた。
斯波も忙しくないわけではなかったので、多少イラついて
「どんだけ遠くに買いに行ったんだ、」
と、顔をしかめた。
「ちょっとあたし、コンビニまで見に行ってきます、」
いたたまれなくなった絵梨沙は出て行ってしまった。
イライラしている斯波に追い討ちをかけるように、寝ていた竜生がいきなり起きて泣き出した。
「あ~~~???」
どうしていいかわからず、放っておこうかとも思ったが
何だかめちゃくちゃ泣いているので、心配になり
「どーしたらいいんだよ・・まったく!!」
斯波はおそるおそる竜生を抱っこした。
こんな赤ん坊を抱くのは初めてのことで、どうやって抱いたらいいのかもよくわからない。
「おれはいったい何をしに来たんだっ!!!」
そして。
30分後。
「・・すみません・・・」
絵梨沙に連れられて真尋は戻ってきた。
いつものコンビニのもう少し先のコンビニに行って、そこでマンガを立ち読みしたりして時間を忘れていたようだった。
「意味がわからない!!! 時間はちゃんと言ってあっただろ!」
斯波は真尋に怒りをぶつけた。
「なんか立ち読みが止まんなくなっちゃってさあ・・・・。 おれ、没頭すると時間とかわかんなくなっちゃうし、」
当の本人はケロっとしていた。
「時間は守れ!! 人間として最低限のことはしろ!!」
几帳面な斯波は時間にルーズな人間は許せなかった。
「え~~~~、時間を守るのが人間として最低限のことかよ~~~、」
「人の迷惑を考えろ!!」
二人が言い争う中、絵梨沙は申し訳なさそうに
「あのっ・・・・。 竜生のことも、すみませんでした・・・。 もう、」
結局、大泣きした竜生は斯波に抱っこされたまま、またスヤスヤと寝てしまって
ずうっと斯波が座って抱いていた。
「・・・・よく寝てっから、」
斯波は気まずそうに手を出した絵梨沙にやんわりと言った。
「い、いえ・・でも・・・・」
真尋はそんな斯波の姿を見て、
「けっこう似合ってんじゃん。 子供抱っこする姿もサマになってるし、」
暢気にアハハと笑った。
斯波はテーブルの下の真尋の足を思いっきりふんずけた。
斯波ちゃん、真尋の自由人ぶりに翻弄されてます・・・。
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