斯波は飲んでもないのに
すっかり自分を失ってしまった。
「・・・おれはっ!!! 水商売してる女なんかっ! 大っきらいだっ!!!!」
南に向かって思いっきりの言葉を浴びせてしまった。
やばい・・・
志藤はハッとして南を見たが
すでに遅かった。
南はそこにあったグラスに入った水を思いっきり斯波にぶっかけた。
「なっ・・・・・」
焦る彼に向って
「・・・水商売せな。 生活でけへんねん。 みんな必死に働いてんねん!!! あたしはキャバ嬢してたときも! 誇り持って仕事してた!! あんたのしてる仕事、どんだけ偉いねん! んで。 あんた何様やねん!!!」
スイッチがオンになるのが
人一倍速い南は
ブチ切れて大きなよく通る声で彼に啖呵を切った。
斯波は何かを言いたげだったが、それを口にすることなく
わなわなとふるわせて、ずぶぬれになったまま帰ってしまった。
「あ~あ~・・・。 しょうがないなァ・・」
香織が濡れたテーブルを拭く。
「明日。 あいつ『ここ辞めます』って言うんちゃうか~~~?」
志藤も冗談ぽく言いながらも心配だった。
「ふん。 あんなカタブツ。 いると空気悪くなる! うちの部署にはあんなんいらんわ!!」
南は憤慨おさまらず、またビールをぐいっと飲んだ。
すると
「・・・ほんっと・・・。 なんでぼくまで・・・」
斯波の隣にいた玉田もとばっちりをくってズブ濡れだった。
「あーあー、かわいそーになあ。」
泉川はハンカチを出して拭いてやった。
「んで。 あいつ。 ナニモン?」
南は構わずに志藤に真面目に言った。
「ナニモンって・・・。 おれもプライベートはようわからへん。 なんもしゃべらんし。 ただ・・・あの音楽評論家の斯波宗一郎の息子ってことしか・・・」
志藤は宙を見た。
「すっごい彼も辛口でさ。 エリちゃんも泣かされて大変だったんだよ、」
香織は笑った。
「ほんま?」
「ま。 でも・・・音楽のことに関しては。 おれよりプロやから。 その点ではすごいヤツなんやけどな、」
志藤はため息をついた。
斯波が帰宅するとマンションの入口前で待ち構えていた人影があった。
「清四郎~~~~、」
その女性にいきなり抱きつかれる。
「・・・なんだよ・・・。 また酔っぱらって、」
うるさそうに彼女を遠ざけた。
「また酔っぱらって・・って・・! これがあたしの仕事でしょ!」
逆ギレしたように女性はむくれた。
「ねー・・・。 泊めて~~~、」
とまた甘えるように言われて
「ここまで来るのが。 あんたんちより遠いだろ??? わざわざ来るなよ、」
「・・だって。 ひとりだし。」
「この前のヘンなカレシはどーしたんだよ、」
「知らないよ。 あんなやつ、」
「また金だけ持ってかれたか・・」
斯波はずんずんとエントランスを入っていく。
「も~~! 息子のクセに説教たれる気!?」
そして
女性は追いかけるようにヒールの音をカツカツと立てて歩いた。
斯波ちゃんが『水商売』を嫌うわけは・・・part3をごらんくださいσ(^_^;)
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