Danke~ありがとう(20) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「だからさ・・こっちは忙しいんだから。 用もないのに来るなっつーの、」


志藤は迷惑そうに真尋に言った。



「や、なんか。 煮詰まっちゃってさ、」



「煮詰まったやつが! こんなとこで漫画なんか読むか!」


暢気に漫画雑誌をデスクの隣で読まれて非常に腹立たしかった。



「あー、ねえねえ。」


真尋は思い出したように話しかけてきた。



「あ?」



「あの・・斯波って男。 なにモン???」



「へ?」


志藤はタバコを手にしたまま真尋に振り返る。



「なんかフリーの音楽の・・ライターだとか。 今もそれ続けてるとか・・・」


「ああ、まあ。 ウチも専門家が欲しかったし。 ほんまにクラシックのこと勉強してるから・・・。」


志藤は思い出したように棚から雑誌を数冊取り出した。



「これとか。 おまえのことも書いてるで、」



付箋をしたページを開いた。



真尋のデビュー公演のときのものだった。



『北都マサヒロは日本では無名のピアニストだ。 コンクールでの輝かしい経歴もない。 この若い演奏家を起用した北都フィルは勇気がある、と思いもしたが彼の演奏を初めて聴いて驚いた。』



真尋は身を乗り出すようにその記事を読んだ。



『テクニックはまだまだだが、その表現力の豊かさそして溢れんばかりのイキイキとした旋律。 オケに気後れすることなく堂々と、それどころか彼が弾くピアノの音がオケ全体を引っ張るように。 聴いていてこんなにわくわくする演奏は久しぶりだった。・・・・』



とにかく


真尋の演奏を褒めちぎってあった。



「あいつの評論ってけっこう辛口なんやけど。 おまえのことはめっちゃほめてる。 どの公演でも、」



志藤につくづく言われて



「・・・・や・・・ここまで言われるとな~~~、」


真尋もそう言いながらもまんざらでもなさそうだった。



「まー、とにかく。 音楽のことはよく知ってるから。 曲作りで煮詰まったらあいつに相談したら?」



「・・って、なんっか・・・近寄りがたい空気もあるんだよなあ・・・」


それでもやっぱり苦手なのだった。




そして絵梨沙はひとつのヤマを越えて、ものすごくミナとのセッションが楽しくなってきた。



「今のところ。 もう少しピアノ抑え目にして。 ヴァイオリンの高音が鈍る、」


斯波の指示も素直に聞ける。



「あの、この部分なんですけど。 どうしても走り気味になってしまうんですけど、」


絵梨沙が楽譜を広げてあるテーブルに来て、斯波にずいっと近づいて話をし始めると



「えっ・・・・」



彼は少し驚いて、彼女と距離を取った。



「・・??」


その行動がなんだか不自然で怪訝な顔をした。



「ここは。 きみがきちんとリズムを守って。 そうすれば・・・桜庭も合ってくるから・・」



また目も合わさずにそっけなく言われた。



少し彼に慣れてきたとは思うけれど


ずっと気になっていたことがあった。



ミナと話をするときと自分と話をするときの態度が違う気がして。



まともに視線も合わせてくれない・・



絵梨沙はため息をついた。


やっぱり絵梨沙にはちょっと冷たい???



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