「え・・・」
意外なことを言い出した真尋に絵梨沙は驚いた。
「日本に。 あと2つこっちの仕事あるけど。 それ終わったら帰ろう。」
まさか日本に帰るなんて彼が思っているとは思わなかった。
「真尋・・・・」
「少し。 ゆっくりしたいかなって。 別に日本にずっと住むってわけじゃないけど・・・・。 なんか急に帰りたいなって思って。」
絵梨沙は南と目を合わせた。
真尋は北都の息子であることを投げ捨てたくて日本を飛び出した。
今までもプライベートで帰国したことはなかった。
「・・・それは。 いいと思うけど。 仕事のことは志藤ちゃんにあたしからも話しておくし、」
南は彼の真意を探りながら言った。
「うん。 南ちゃんもありがとな。 ほんっと・・助かった。 竜生が無事に生まれたのも南ちゃんのおかげだよ、」
とニッコリ笑った。
「あたしは。 あんたたちの手伝いが少しでもできたら嬉しいって思うから。 かわいいかわいい竜生のそばにいさせてもらって幸せやったし。 ・・・でも。 日本に帰ればみんないるもんね。 安心やん、」
「竜生は飛行機に乗せられんのかな??? 赤ん坊ってだいじょぶなの?」
真尋は絵梨沙に言った。
「・・病院の先生に聞いてみるわ、」
「オヤジとオフクロにも竜生見せてやらねーとだし。 って・・あの人が『おじいちゃん』って笑うよな。 どんな顔すんだろ、」
いつもの真尋に戻って
おかしそうに笑っていた。
『少しゆっくりしたい』
と言い出した真尋の気持ちを思うと
二人は苦笑いしかできなかった。
「え、日本に?」
志藤は南から電話を受けて驚いた。
「うん・・・。 しばらく休みたいって言うねん。」
「あの公演の後。 めっちゃオファーは来てるけど・・・。」
事業部としては今は勢いをつけてガンガン売り出したいところではあったが。
「真尋、気持ちの整理つけたいんちゃうかな。 ほんまに壮絶な毎日やったし。 あの子が日本に帰りたいなんて言うの、よっぽどやん。」
南に言われるまでもなく
志藤もすぐにそれを感じていた。
「・・・わかった。 仕事はこれから整理しよ思ってたし。 こっちでなんとかするわ。」
優しくそう言った。
南はそれから3日後、NYへと帰ることになった。
「あ~~、もう離れがたい~~~。 竜生、おばちゃんのこと忘れへんでな、」
ずっと母親代わりに竜生の面倒を見てきた彼女は最後にぎゅーっと抱っこして別れを惜しんだ。
「本当にありがとうございました。」
絵梨沙は南に感謝の気持ちでいっぱいだった。
「ううん。 ほんまに嬉しかった。 たいへんやったことも・・もう忘れてしまうくらい。」
南は竜生を絵梨沙に手渡した。
「今、北都の家は改築中やけど。 あと1年くらいでできあがる。 そしたらあたしと真太郎も日本に帰るし、エリちゃんと真尋たちが日本にいるときは一緒に暮らせる。 ・・・日本で住む所は沢藤先生や志藤ちゃんに頼んでおいたから大丈夫。」
「・・ハイ、」
一人っ子で育ってきた絵梨沙にとって『姉妹』という存在が本当に心強く感じた数ヶ月だった。
みんな大きな仕事をやり終えて静かな日々が戻ってきました・・・
↑↑↑↑↑↑
読んで頂いてありがとうございました。
ポチっ! お願いします!
人気ブログランキングへ
携帯の方はコチラからお願いします