Danke~ありがとう(4) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

1週間後。



シェーンベルグの『お別れ会』が市内の教会で行われた。



絵梨沙も竜生を抱いて南とやって来た。



「すごい人・・・。 みんな先生の教え子なんかな、」


南が驚くほど人がいっぱいだった。



そこには何人も世界的ピアニストたちの姿があるのを絵梨沙は確認していた。



改めて彼の偉大さを思い知る。



その中で真尋は用意されたピアノの前に座っていた。



「ほら。 彼が・・・先生の『最後の弟子』って日本人だろ?」


「アルデンベルグの公演、すっごい評判だったらしいね。」


「まだ若そうだな、」



絵梨沙の後ろに座った人達の噂話が聴こえる。


やっぱり


良くも悪くも注目されている。




真尋はピアノの前で目を閉じてうつむいて動かなかった。



カタリナの母から参列者への言葉があったあと、



「本日は、父が最期までその命の限りを注ぎ込んだピアニストであるマサヒロ・ホクトのピアノで父を送り出したいと思います。 父は最期まで大好きなピアノの音に囲まれて幸せでした。 父が夢中になった彼のピアノを聴いて下さい。」



と真尋を紹介してくれた。



真尋は静かにピアノを弾き始めた。



『亡き王女のためのパヴァーヌ』



優しく切ない旋律で。



シェーンベルグの遺影が微笑んでいる。


こんな笑顔見たことなかったけど。


最期に


『もっと聴いていたかった・・・』


と言ってくれたとき



初めて優しく微笑みかけてくれた。



蒼々たる音楽関係者が集まる中


真尋のピアノはその場を水を打ったようにシンとさせた。



まるで広々とした氷の上をその旋律がすべるようにすうっと広がり


真尋の思い全てが人々に伝わった。



絵梨沙は大粒の涙をこぼした。


彼女の胸に抱かれた竜生が小さな手を伸ばした。


その手をそっと握って泣きながら微笑んだ。




朝は雨だったのに


いつの間にか雲間からうっすらと光が差してきた。



真尋は


これからどうしていくんだろう。



絵梨沙は静かにそう思った。





「おつかれ。 よう頑張ったなあ、」


帰宅した真尋に南はビールをグラスに注いでやった。



「ほんと。 なんか・・・・長い夢の中みたいでさ。 いったいどっからの時間が経ったのかもわかんねえ、」


真尋は気が抜けたように頬杖をついてそう言った。



そして



「・・・日本に。 帰ろうか、」



突然、絵梨沙のほうを向いてそう言った。



真尋の意外な言葉に・・・?


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