「最期。 ちょっと話ができたんやって。」
南は竜生を寝かしつけて、リビングにいる真太郎に静かに言った。
「そっか。」
真太郎は頬づえをついて、ホットミルクを飲んでいた。
いろんなことがあって眠れそうもなかった。
真尋と絵梨沙はまだ病院から戻らなかった。
「まだ明日公演があるのに。 真尋は大丈夫やろか、」
南は腕組みをして心配そうに言った。
「・・うん、」
二人は真尋の受けたショックを思うと胸が痛かった。
絵梨沙は真尋に寄りかかるように病院の待合室のイスで眠ってしまった。
ふと目を覚ますと、真尋は彼女の肩に手をやりながらどこを見るでもない目で遠くを見ていた。
「・・起きてたの・・?」
「ん・・。 なんか。 眠いけど眠れねえ。」
もう夜が明けて来て、外が少しずつ明るくなっていた。
「・・今日の公演は・・」
絵梨沙は彼に遠慮するように聞いた。
「・・もちろん。 やるよ。 やるっきゃないじゃん。」
真尋は落ち着いた声でそう言った。
その時
あー。
もういないんだな。
ジイさんは。
そう実感した。
家族の意向で
シェーンベルグ氏の死去は世間には伏せられた。
カタリナとその母は
今日も真尋の公演があることを気にしてくれていた。
「もう。 帰ってきてもなーんもしゃべらないの。 1~2時間くらい寝ただけでまた出かけちゃったし、」
南は真尋の自宅を訪れた志藤に言った。
「そっか、」
志藤は南が淹れてくれたコーヒーに砂糖を少しだけ入れてスプーンでグルグルとかき回した。
「エリちゃんも出かけちゃったし・・・。 今日は竜生とあたしは留守番やな、」
南は苦笑いをした。
「・・・先生の葬儀は、」
「まだわかんない。 先生のご家族が密葬にして改めてお世話になった人を呼んでお別れ会をしたいって言うてるって・・エリちゃんが。」
志藤は黙って頷いた。
その時
南はハッとして自分のバッグをいきなり漁りだした。
「あ?」
志藤が唖然としていると、南はそこから取り出した白い封筒を志藤に手渡した。
「これ! シェーンベルグ先生が公演が終わったら・・真尋のボスに渡して欲しいって・・・」
「は? おれに・・???」
意外すぎて目をぱちくりさせてしまった。
そっとそれを開けた。
そのまま固まった志藤に
「なんて???」
南はそれを覗き込んだ。
シェーンベルグは志藤に何を・・???
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