Leben~命 (15) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

その晩


何とか絵梨沙をきちんとベッドで寝かせて、南は真尋が眠るリビングのもう一つのソファに寝てみた。


すると、本当に真夜中に真尋は起き出してピアノの部屋に行こうとしていた。


「ちょ、ちょっと! 何してんねん! こんな夜中に!」


南は真尋の腕を引っ張った。



「・・・・あ・・?」


もう半分寝ぼけているようだった。


「ほら! もうちゃんと寝て!」


「・・ピアノ・・弾かなきゃ・・・・。 第2楽章の・・・58小節目・・・」



聞き取れないようにブツブツと言う彼の言葉は


果たして正気なのかどうかもよくわからなかった。



「ほらほら。 な、明日やればええやん。 明日、」



まるで子供に言い聞かせるように、南は真尋を何とか引っ張ってベッドルームに連れて行った。



今度はちゃんとベッドで寝息を立て始めた。




はあ・・・



南は真尋のこの『奇行』を目の当たりにして、どっと疲れたようにため息をついた。




「あ・・もしもし。 志藤ちゃん? 南だけど、」


それから昼間の日本に電話をかけた。



「あたし。 今、ウイーンにいる。」


彼女の言葉に


「は???」


電話の向こうの志藤は驚いていた。




この状況を口にすることさえも、もう辛かったが


真尋と絵梨沙の今おかれている状況を仕事の責任者として知らせずにもいかず


南は全てを志藤に話した。



彼はしばらく黙ったままだった。



「あたし。 真太郎にわけを話してしばらくこっちにいる。 沢藤先生は生まれた後少し休みを取ってこっちにいれるって話やったけど・・公演が終わるまではとってもエリちゃんひとりで真尋のフォローなんかムリやし、」


南はポツリポツリと言葉をこぼした。



「・・そっか。 そんなことになってたんか、」


志藤はたくさんのことを思い巡らせているようだった。



「とにかく。 真尋の公演が成功するように見守ることも大事やけど、エリちゃんが安心して赤ちゃんを産めるように。 あたしは力になろうと思うから、」


南は少し力を込めてそう言った。




「じゃあ、今日は少しあたしはスタジオの方に行ってみますから。 先生は今抗がん剤の治療がつらい時なので、あんまりムリをしないように見ていないと、」



翌朝、出かけた真尋のあとから絵梨沙が仕度をしながら南に言った。



「え、ちょっと待って。あたしも一緒に行ってもいい?」


洗い物をしていた南は慌てて手を拭いた。



絵梨沙は少し考えて、



「ハイ、」



と小さく頷いた。




「だから! 全然合ってない! こっちの音をよく聞け!」


シェーンベルグは自分でオケの部分をピアノで弾きながら、真尋に厳しく言い放った。


そしてそこにあった杖で、真尋の足のスネをバシっと叩いた。



「いっ・・・・」


思わず顔をゆがめたが、真尋は必死にピアノを弾き続ける。



ずっとその繰り返しだった。


南はその壮絶さに息を呑んだ。



そして突然、シェーンベルグは立ち上がり、シンクに顔を突っ込んで嘔吐し始めた。



「先生!」


絵梨沙は駆け寄って、彼の背中を摩った。



抗がん剤の副作用である激しい吐き気と戦いながら、シェーンベルグは息を切らせながら真尋の指導を続けた。



南は壮絶な真尋のレッスンを目の当たりにします・・・


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