Ein Traum~夢(9) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

ホールに入ると、舞台上にピアノが1台だけ置いてあって、最前列の席には10人ほどの関係者がズラっと並んでいる。



指揮者、コンマス・・・等々紹介されたが、なんだかよくわからなかった。



「シェーンベルグ先生の直々の推薦です。 それなら私たちもぜひあなたの演奏を一度聴かないと、と思いまして。 日本の事務所からも資料を取り寄せて、あなたのこれまでの活動をビデオで見せていただきました。 非常に興味深い演奏をされる方ですね。」



カールと呼ばれたその男は丁寧な口調ながらもどこか冷たくて


本心なのかどうかよくわからないところがあり、真尋は警戒して


「はあ、」


と、小さく頷くだけだった。




「オーディションとはいえ。 特に課題はありません。 あなたの好きな曲を2曲。 弾いて下さい、」



彼はそれだけを言った。



好きな曲・・・・



真尋は一瞬のうちにたくさんのことを考えた。



日本から資料を取り寄せたってことは。


おれがどんな曲を得意としているかはわかっているはず。


ここは普通に弾くべきか・・・・




そして数分後、真尋は顔を上げた。



ピアノにずかずかと近づいて、座るなり弾き始めた。



ベートーヴェン ピアノソナタ第13番『月光』・・・・



純粋に自分が得意としている曲だ。


シェーンベルグに叩き込まれたこの曲のひとつひとつが、もう自分の身体の一部になっている。



全身全霊を込めたこの演奏に静かなホールには圧倒的な空気が充満していた。



それを弾き終えたあと、真尋は客席にいたコンマスに


「あの。 協力してもらってもいいですか、」


と、いきなり声を掛けた。


「は?」


彼は立ち上がる。



「・・・ヴァイオリンを。 お願いします、」



いきなりの展開にみな顔を見合わせて驚いていた。



「いったい、なにを・・・」


と、コンマスが舞台に上がると、真尋は彼に近づいてなにやら説明を始めた。



驚いた顔をしていた彼だが、真尋の言葉に2、3頷いた後



「・・わかった。 やってみよう、」



と承諾してくれた。



彼が少しヴァイオリンのチューニングをしたあと、曲目が告げられぬままそれは始まった・・・・




真尋のピアノから始まったそれを聴いた関係者は驚く



チャルダッシュ・・・



ピアノバーでヴァイオリン奏者を呼んで時々演奏した。


すごく盛り上がって場が弾けるこの曲が大好きだった。



真尋はピアノを弾きながらふふっと笑った。



アルテンベルグのコンマスだけあって、即興でもかなりの演奏を披露した。



が。


彼はちょっと『イジワル』をした。



途中、急にリズムを変えて弾き始めた。



真尋は一瞬彼をハッとして見た。




オーディションでも真尋は自分らしいピアノを披露します・・・・


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