絵梨沙の妊娠のニュースは日本にもすぐに伝えられた。
「あ~~、エリちゃんだいじょぶなんかなあ・・。 ほんまに心配! あたしが飛んで行ってなんでもしてあげたいのに!」
特に南はそわそわ落ち着かなかった。
「おまえは自分の心配をせえ。 ・・NYにはもう来月からやろ、」
志藤はタバコの煙を吐いた。
「・・まあ・・」
真太郎にNY支社への2年間の勤務が社長から命じられた。
南は迷ったが、志藤の後押しもあって一緒についていくことになっていた。
「NYは別にあたしは仕事で行くわけやなし。 ほんまウイーンで過ごしたいなあ・・」
「何のためにジュニアと一緒に行くことにしたんやって、」
「だってさあ・・・。 真尋が子供みたいなもんなんだよ? 初めての子供だし、エリちゃんのお母さんだって忙しくて行ったりできないのに。 日本に帰ってくればええのに、」
「エリちゃんがウイーンで産みたいって言うてんやもん。 しゃあないやん。 彼女はウイーンで過ごした時間も長いし慣れてるから大丈夫やって言うねんけど、」
「それにしても・・・。 真尋とエリちゃんの赤ちゃんかあ・・・。」
南は夢を見るようにうっとりとした。
自分には子供ができず、悩んだこともあったが
真尋と絵梨沙の子供の誕生が本当に待ち遠しかった。
「・・にしても。 あいつが親かよ・・・」
志藤は何だか気が抜けたように真尋のことを思った。
「な~~~、ほんとおれ頑張るからさあ。 なんか仕事ないかな、」
真尋はシェーンベルグに言った。
「いきなり張り切り出しても。 仕事なんかそうそうあるか、」
彼は耳掃除をしながらつまらなそうにそう言った。
「ほんと。 子供も生まれるし。 やっぱおれも自己満足ばっかしてないでがんばろーって思ってるのに、」
その言葉に巨匠は彼をジロっと睨み
「・・本当に何でもやるか?」
と言った。
それがあまりにも真剣だったので
「や・・あの、サーカスとかは無理かも、だけど。」
ピントの外れたことを言ってしまった。
シェーンベルグは思わず、ふふっと笑ってしまった。
「バカが、」
絵梨沙は最初の診察から1週間後にまた病院に来るように言われ、出かけて行った。
その病院は市内の大きな総合病院でかなり待たされて疲れてため息をついていた。
ようやく診察を終えて会計を済ませると、
あれ・・・?
シェーンベルグが杖をついて病院を出て行くのを見てしまった。
先生・・・どこか悪いのかしら。
絵梨沙は首をひねった。
「は? ジイさんが病院? ああ・・前に大病して入院したことがあるって言ってたなあ。」
真尋は呑気に言った。
「そう・・。 じゃあ定期健診みたいなものかしら、」
「だって今日も元気だったよ? それより、ね。 病院どうだった?」
「今日は検査をしただけよ、」
「なんだあ。 つまんないな~~。 動いたりしないの?」
と、甘えるように絵梨沙のおなかに耳を当てたりした。
「まだまだ、すごーく小さいんだから。 わからないわよ、」
「おれ。 頑張るからな・・。 ぜったい、」
真尋は優しく絵梨沙のおなかをなでた。
絵梨沙に赤ちゃんができて張り切る真尋でしたが、絵梨沙は病院で遭遇したシェーンベルグが気になって・・
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