それからは
花婿もピアノを演奏したり、結婚式というよりもパーティーだかライヴだかもうワケがわからなくなるほど盛り上がった。
「すっごい・・・もー、楽しそうやろ。」
レオが撮ったビデオは日本にいるみんなにも送られた。
南はそれを会社に持って来て志藤たちに見せていた。
志藤は絵梨沙の幸せそうな笑顔に心からホッとしていた。
「いい仲間がいるんやな。 ウイーンに。 ほんまに二人楽しそうやもん、」
南は志藤を見て笑った。
「・・・ん、」
結婚まで怒濤の展開になり
本当に人騒がせだ、と思っていても
こうして二人の幸せな顔を見ると、やっぱり嬉しい。
「もう。 ひとりやないねんからな・・・。 ちょっとは大きい仕事取らないと。」
志藤は真尋の今後のことについて案じていた。
「は? CD??」
真尋は志藤からの電話に思わず声をあげてしまった。
「この前の渋谷のライヴ。 けっこう評判になって。 ムーンリバーからおまえのCD出そうかって話になって。」
志藤の声は明るかった。
真尋も喜んでくれると思ったのだが、
「うーん。 CDかあ・・・」
そのリアクションは気が抜けるほどそっけなかった。
「え、なにそのテンション、」
「おれはCDよりライヴをやっていきたいんだよね・・・。 生で聴いて欲しいっていうか。」
「それはもちろんやけど。 生で聴いてくれた人には、おまえのピアノを何度も聴いてもらえるし、まだ聴いてない人にはそのとっかかりにもなる。」
「うーん・・・・」
返事は思わしくなかった。
「ジイさんに聞いてみる。」
最後にそう言った。
「・・まだ。 早いな、」
シェーンベルグはそっけない様子で言った。
絵梨沙が作ってきたサンドイッチを頬張りながら、真尋を見た。
「まー、おれも。 あんまり乗り気じゃないんだけど・・・・」
「それは日本の売り方か?」
「日本はメディア戦略がさかんです。 クラシック演奏家もメディアで売り出すと人気が出ると言われていて、」
絵梨沙がコーヒーを運んで来ながらそう言った。
「今は。 200人くらいのホールはいっぱいになるくらいはなったし。 あとは・・・デカい仕事だが、」
シェーンベルグはコーヒーを口にした。
「まあ。 おれはそんなに焦ってないよ。 今のままこっちや日本でライヴ活動をしていければ。 お客さんも喜んでくれているし、」
真尋は親の心子知らずで暢気に笑った。
「ほんっまに欲がないというか、」
志藤は渋い顔をして電話を切った。
「まあ、しゃあないやん。 きっと真尋はこれから大きい仕事できるようになるって。」
南が彼を慰めるようにそう言った。
晴れて夫婦になった二人ですが、志藤はこれからの真尋を心配します・・・
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