「二次会の後、もう12時過ぎてたんだけど。 沙希ちゃんのマンションが近いからってみんなで行ったんだ。 5人くらいかな? んで、飲んでたんだけど。 もう沙希ちゃんがみんなを帰したがってさあ。 おれも疲れてたからヨメとすぐ帰っちゃった。 他のヤツらも。 真尋も途中で寝ちゃったりして、ま 結果的に二人きりになっちゃって、」
真尋の友人の話を真太郎と南は食いつくように聞いていた。
「彼女のアプローチがすげーから。 真尋も『おれ、彼女いっから、』って言ってたんだけど。 結局さあ、あんな美女から言い寄られて。 酔っぱらってたら、ああもなるって。 まー、相手が悪かったよね。 彼女、他の芸能人とかスポーツ選手ともけっこう噂ある子だし。 狙った獲物は逃さないって業界では評判だよ、」
彼はグラスを拭きながらちょっと同情するように言った。
「ま。 相手のが1枚上手ってことやな、」
帰り道南が言った。
「・・どんな事情にせよ。 そうなったら男の負けだ。 真尋が弱かったってことだよ、」
真面目な真太郎は弟に少し同情しつつも、厳しい言葉を吐いた。
真尋は絵梨沙に電話を何度もしてみるが、全く出てくれない。
「きちんと話だけはしないと。 会わないで別れるなんて絶対に後悔するわよ、」
真理子は絵梨沙に言った。
「・・もういいの。 なんのいいわけも聞きなくない、」
絵梨沙は頑なだった。
「すんごい反省してたわよ。 気の毒なくらい。 誰だって間違いはある。 二度としないように頑張るチャンスを与えてあげたら、」
真理子は真尋の肩を持った。
「・・・・・・」
数日が経って自分なりに冷静に考えてみた。
でも
どうしても自分以外の女性とそのような関係になったことが許せなかった。
もう彼がいなかったら生きていけないと思うほど
彼に全てを委ねて
愛情だとかそんな言葉だけでは片付けられないほど、彼は自分の肉体の一部のようであった。
それが自分でもわかっているだけに
ものすごいジレンマに襲われる。
真尋はある決心をして、翌朝早く実家を出た。
「仕事?」
母の問いかけにも答えずに、靴をはく時間さえも惜しいほど慌てて家を出た。
絵梨沙は午後から以前お世話になっていたピアノの先生のところに挨拶に行くために自宅マンションのエントランスを出た。
外に出たところで、いきなり目の前に大きな人影が立ちはだかったので
「きゃっ!!!」
びっくりして後ずさりした。
「・・・3時間も待ってたぞ・・・」
真尋だった。
心臓がバクバクいっていた。
「な・・なんなの??」
胸を手で押さえながら怪しげに真尋を見た。
真尋は慌てた様子でポケットからくしゃくしゃになった紙切れを取り出した。
そして、それを徐に絵梨沙の前に突き出した。
「・・・・え、」
それは
絵梨沙を呆然とさせる『シロモノ』だった。
真尋の浮気の『事情』は同情の余地はありそうですが、真尋は大きな決心をして絵梨沙に会いに行きます・・
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