「相手悪かったなあ。 彼女が超人気モデルやったから、こっちまで飛び火してんねん。 素人やったら、悲しいけど あんたじゃまだまだ記事にはならへん、」
南も冷静かつ辛辣な意見を述べた。
志藤は怖い顔をしたまま黙って煙草の煙だけを吐きだした。
「・・エリちゃんに。 どう説明すんねん。 知らないんやろ? もちろん。 これは嫌でも明日発売される。 相手の彼女サイドにはもう取材が行ってるやろし。 世間に知られるのはもう防ぎようがない、」
南はさらに真尋に言った。
絵梨沙の名前を出されると
もうどうしていいかわからなくなったようで
さらにうなだれた。
志藤はそんな真尋の姿を見て、
何かがブチ切れた。
いきなりすごい勢いで真尋の前に行き、彼の胸倉をつかんだかと思うと
思いっきり殴りつけた。
その勢いで、尻もちをついてしまうほどの力で。
「し、志藤ちゃん!」
南は驚いた。
「おまえが殴り返せないことわかってて。 殴るのは反則やと思うけど。 ・・・エリちゃんを泣かせるようなことをするのはおれが許さない!!」
志藤は倒れた真尋の胸倉をつかんで、彼にかみつく勢いでそう言った。
「エリちゃんがどんな思いでおまえのいるウイーンに行ったと思ってんねん!! ナーバスすぎた彼女が世間の荒波に疲れ果てて! それで子供のころからの夢やったピアニストという仕事まで放り投げて、おまえのそばにいることを望んだんやで!! こんなことおれなんかが言う前におまえのほうがよっぽどわかってるはずや!!」
真尋は殴られた口元から血が滲んでいるのも気づかぬように志藤を真っ正面から見た。
「ようやく・・・ようやくお前のそばでピアノが弾けるようになったのに!!! なんて裏切りや! あんまりやんか! ・・こんなん彼女が知ったらどんだけ傷つくか! それを思うだけでおれはもう・・・。」
志藤は声を震わせた。
そして
「・・おまえなんか・・・地獄に堕ちろ!!!」
ものすごい捨て台詞を吐いて、志藤は乱暴に真尋の襟首をつかんでいた手を離して、部屋を出てしまった。
「・・だいじょぶか、」
南がハンカチを差し出したが、真尋はゆっくりと立ち上がって手で口元を拭った。
「・・絵梨沙には。 おれから話す・・。 ちゃんと、」
そしてポツリとそう言って出て行った。
南と真太郎は2人残されてお互いに無言で目を合わせて、ため息をついた。
真尋は覚悟を決めて、絵梨沙の家を訪ねた。
「いらっしゃい、」
笑顔で迎えられると、もう彼女の顔が心苦しくて見られない。
「・・・ひとり・・?」
家の中を見回す。
「今日はママは仙台まで泊りがけの出張なの。 明日戻るけど。 ねえ、おなか空いてない?」
絵梨沙の母がいなかったことは
卑怯だけどほっとした。
「メシは・・いいよ。 あのさ。 話があって。」
珍しく深刻そうな彼の表情に絵梨沙はきょとんとしていた。
「・・話?」
「うん・・・。 座って、くれる?」
もう心臓が破裂しそうだった。
志藤から死ぬほどの言葉を浴びせられた真尋は、覚悟を決めて絵梨沙のところに・・・
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