Sturm~嵐(19) | My sweet home ~恋のカタチ。

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そのノクターンは



3人の知っている真尋のソレではなかった。



彼が弾き始めてすぐにその『異変』に気付いた。




本質は変わっていない。


うまく口に表せない。



だけど




志藤は鋭い目で彼がピアノを弾く後ろ姿を見た。



言葉に表すと



『ちゃんとしている』のだ。



もうそうとしか言えない。



今までの彼のピアノがちゃんとしていなかったわけではない。 しかし、彼独特の解釈と表現が満載だった。



自由に、それでいて曲の持つ本質を損なわないピアノ。



しかし


このピアノは『正確すぎる』ほどなのだ。



しかも



志藤は少し立ち上がって真尋の手元に注目した。



指の動きが前より速く、正確だ。



音がクリアで透き通ったガラスのようだった。



真尋は『凡人並み』だったそのテクニックでも、それを上回る表現力で多くの称賛を得てきた。


最初は難しいことをやらせようと思ったりしたが、それよりも真尋が真尋らしい音が出せる曲でいいんじゃないか、と思うようになった。



誰にも真似できないその表現力がある限り、彼はピアノで食べていけることができると思っていた。



志藤はシェーンベルグと目が合った。



そして巨匠はふっと笑った。



まるで志藤の驚きが手にとるようにわかっているかのように。




この人。



とんでもないことを真尋に施そうとしている?



ゾクっとした。



彼と同じことを絵梨沙も考えていた。



無条件に胸を揺さぶる彼のピアノではない。




彼のピアノが


変わっていた・・・・




つづいて。


ラヴェルの『水の戯れ』




絵梨沙は胸がどきどきしてきた。



思わず手を胸にやった。




志藤は思わず巨匠の表情を伺います・・・


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