「え・・そんなにスゴイ先生なの??」
私は気になって父にその巨匠のことを聞いてみた。
「ぼくが音楽院の生徒だったときの先生だったんだけど。 その後もたくさんの有名なピアニストを育ててね。 もうレッスンをして欲しいって人たちが後を絶たないくらいなんだよ。」
「そう・・・」
「じゃあ、マサはコンクールに出ることにしたんだね、」
父は嬉しそうだった。
「ええ・・・。 あんなに頑なだったのに。 その巨匠はやっぱりすごいかも、」
「すっごく気難しい人でね。 大変だと思うけど・・・。 まあ、厳しくて有名な人だったけど、もう80近いし最近はあまりレッスンもつけてないみたいだから、」
私はウイーンの真尋のことが心配になってしまった。
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ヘンないきさつだったが、真尋はシェーンベルグのレッスンを受けられることになった。
『ファンベルグ』のコンクールにエントリーもしてしまい、真尋は流されている気がして納得がいかなかったが
もう乗りかかった船なので仕方なく彼のレッスンに毎日のように出かけた。
「おい。 これを買ってこい。」
レッスンに行くと、彼にメモを手渡された。
「あ???」
そこにはレッスンには全く関係のない
牛乳やらパンやらチーズの銘柄が書いてあった。
「ただのおつかいじゃねーかよ、」
真尋は日本語で毒づいた。
すると
「今、何か不満を言っただろう、」
と、ジロっと睨まれた。
「や・・全然。」
ため息をついてそのおつかいに出かけた。
その後も
掃除をさせたり、ピアノについては彼は子供がするような指の運動を延々とさせたりして一向にレッスンをつけてくれる様子がない。
「あのさあ、もうコンクールエントリーしちゃったんだけど? 少なくとも10曲以上は仕上げないとじゃないの??」
イラついて真尋は言うと
「生徒のクセにわしに指図をするな、」
ギョロっとしたあの怖い目で睨まれる。
「10曲くらいレパートリーはあるだろう。」
「あるけどさ・・・」
「おまえはピアノバーで弾いてるって言ってたな、」
「・・もう4年くらいだけど・・・、」
「まず。 そのバイトをやめろ、」
「は????」
「コンクールのためには全く無意味だ。 むしろマイナスになる。」
「って、おれの収入源なんスけど、」
「他のバイトを探せ。 ピアノに関係のないバイトはいくらでもあるだろう、」
「ピアノに関係ないバイト??」
「そうだ。 コンクールが終わるまでで外でピアノを弾くことは許さない。」
「そんなあ・・・」
フランツもシェーンベルグのことはもちろん知っていた。
その話をすると、
「そうかあ。 まあ残念だけど。 シェーンベルグ先生が言いそうだね、」
彼は笑った。
「マスターも知ってるの?」
「おれはマークと音楽院で同級生だったけど、彼とは違う先生についてた。 でもすっごいそのころから変人で有名だったよ、」
「なんかさ~~~、わけわかんないジジイなんスよ。 あーーー、おれ何で生計立てていけばいいんだあ~~、」
真尋は髪をかきむしった。
「日本の事務所からの仕事、あるんだろ?」
「いちおう・・・。 でも小さいホールの演奏会が3つくらいだよ。 ジイさん、それは目をつぶってやるって言ってたけど、今後コンクールが終わるまで仕事受けるなっつーから・・・」
「ピアノがダメなら・・・バーテンでどう? おれももう一つ店やってるから最近忙しくて。」
「はあ? バーテン??」
どんどんこれまでの真尋の生活とは一変する道に進んで行った・・・。
おまけにピアノバーでの仕事も制限され真尋は不満ばかりで・・・。
ここからは真尋が巨匠について頑張るお話になります。いつものように『客観目線』になりまーす。
v(^-^)v
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