crescendo~だんだん強く(15) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

年が明けてすぐに


彼はオケとの練習に入った。


創立祭のイベントまであと1ヶ月を切った。




私は心配で少しだけ覗きに行ってしまった。




「彼がピアノを担当するマサヒロ・ホクトだ。 今日からいよいよ合わせてやっていくから、」



マエストロから紹介があって、彼が少しだけ会釈をした。



オケのメンバーは無反応だった。



ピリピリした空気が充満していて、それを感じているのか彼も珍しく緊張気味だった。




いきなり合わせることになったが、彼の音がすごく硬いのが気になった。



いつもの彼の良さが全く出ていない。


それどころか、あんなに弾き込んできたのに、ミスを連発して何度もやり直すハメになったりした。




「落ち着いて、」


ヴァイオリンのエレナが小さく声をかけたが、彼は無言でうつむいた。




「なんなんだよ、ありゃ。」


「マエストロ直々に指名したって噂だけど。 ひどいもんだな。」


「だいたい誰だよ。 アレ・・・・」


「なんでもバーで弾いてるって話だよ。 間違えて来ちゃったんじゃないの? 酒飲みに聴かせるピアノと同じように考えてんじゃないの?」




彼を非難する言葉が私にまで聞こえた。


もちろん彼にも聞こえているだろう。




初日は散々だった。




ホールの外で出てくるのを待っていると、勢いよくドアがあいてずんずんと大股で歩く彼が出てきた。



「あ・・・」


慌てて追いかけた。


私のことは視界に入っているはずなのに、そのまま歩き続けた。



こんな顔、今までみたことないくらいで。


すごく怖い顔だった。




私はとうとう彼に話しかけることができなくなってしまった。




私が部屋に戻ると隣からもうピアノの音が聴こえてきた。


それは全く休むことなくずっと続いて


異常なほどだった。




夜になってもそれはずっと続いたので、私は心配になり作ったクロックムッシュを持って隣にやって来た。


いつものように施錠がしておらず、簡単に入ることはできたけど


そこには一心不乱にピアノを弾き続ける彼の姿があった。



私が来たことにも全く気づかずに。



その怖いほどの気迫にそれ以上近づくこともできない。




すごい・・・・・



そのラフマニノフは迫力を増し


もう全て出来上がっているのに、全く納得できないようにエンドレスで弾きつづけていた。



こんなに弾いていたら手がおかしくなってしまう、と我に返った私は



「少し休憩した方がいいわ、」



思い切って声を掛けた。


それでも彼は一向に止めることはなかった。



オケに受け入れてもらえない真尋は我を忘れてピアノを弾いて・・・


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