crescendo~だんだん強く(13) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

『Ballade』はいつもなら20人も入ればいっぱいだ。


この日は店のレイアウトを変えて、何とかイスを並べて40人は入るようにした。


その中にエレナも見つけた。


そして、なんとマエストロ・シモンも・・・


彼に気づいて、周囲はちょっとした驚きに包まれていたけど。


父は後からやってくると言っていた。



私もそのイスのうちのひとつに腰掛けた。



そして


タキシードに身を包んだ彼が登場して、店内は大いに沸いた。


いつもバイトの時でもラフな格好が多いので、ちょっとドキっとした。



彼は笑顔で


「みなさん。 クリスマスイヴの夜にようこそ『Ballade』へ。 今日はマスターの計らいでこうしてマサヒロ・ホクトの人生初ライヴを開くことができました。 すいません、せまっくるしいトコですけど呼吸困難にならないように気をつけて下さい。」


彼はそう言って笑わせたあと、ピアノの前に座った。




最初に弾き始めたのは


ベートーヴェンのピアノソナタ第17番 テンペスト。


彼のベートーヴェンは初めて聴いた。



ほんと


いつ練習していたのよ・・・



私はもう最初から彼のピアノにとりつかれたように動けなくなってしまった。



なんて


深い音を出せるんだろう。


私はそっと目を閉じた。



たくさんのピアニストの演奏を聴いて来た。


だけど


こんなにも心を揺さぶられるピアノはなかった・・・・



それは彼が生み出す少しだけ不安定な、きまりのない音の羅列。


解釈を逸脱しているわけでもなく


ギリギリのところで踏みとどまるこの感性。


感情を余すことなく全て鍵盤に伝えられることができている・・・



最初はどうしてこんなにも彼のピアノに惹かれるのか、理屈がわからなかった。


だけどこうして彼のピアノに近づくたびに


その答えが見えてきて。


誰でもできそうでできないその演奏を


私は思い知るのだ。



モーツアルト ピアノソナタ第8番イ短調K310



初めて彼のピアノを聴いたときよりも


間違いなく上手くなっている。



高校時代のそのブランクをあっという間に埋めてしまったかのように。



こんなに美しい音を出せる人が



ガツガツと猛獣のようにゴハンを食べたり


下着一枚でピアノを弾いていることに気づかなかったり


デリカシーのない言葉で私を傷つけたり



ほんと


信じられない。




私はクスっと笑ってしまった。



そして。


リストの『愛の夢第3番』


彼のピアノに没頭して周囲は全く気にならなかったけど、ふと気づくと


人目を憚らず涙する人達がいたりした。



そのくらい


彼の旋律は優しかった。



心があったかくなって


まるで雲の上にいるように。



やっぱり真尋のピアノは素晴らしいものでした・・・



My sweet home ~恋のカタチ。






↑↑↑↑↑↑


読んで頂いてありがとうございました。

ポチっ!わんわん お願いします!


人気ブログランキングへ 左矢印 携帯の方はコチラからお願いしますドキドキ


My sweet home ~恋のカタチ。