crescendo~だんだん強く(11) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「え、ライヴ?」


私は目をぱちくりさせた。



「ウン。 マスターがね。 バーを貸切にして、おれのミニライヴをやってくれるって言うんだ。 お客さんからやって欲しいって言われてるって・・・」



彼はタバコをぷかーっとふかした。



「また、タバコ・・・」


私は未成年のクセに堂々とタバコを吸う彼がイヤで、箱を取り上げた。



「あ~~~、たまにだよ。 たまに!」



「でも・・・すごいじゃない。 そんなお客さんから熱望されて、」


私はタバコを自分のバッグにしまってしまった。



「まあ、バイト代にちょっと色がつくくらいだけど。 ピアコンの仕上げも忙しいけど・・・まあ、やってみたいかなって。 イブの日だよ。 絵梨沙も来なよ、」


「あ・・・うん、」



彼は彼で


小さいながらもきちんと仕事もしていた。




私の最初の仕事は市内の小さなホールで行われたライヴだった。


私のほかにもヴァイオリンやフルートやサックスの演奏家たちが集まって演奏をする。


最初はこのくらいのスケールでやりたいと思っていたので、ホッとした。



「緊張すんなよ、」


彼は忙しいのに来てくれた。



「どーしよ・・・。 なんか指先が冷たくなって、」


私が手をさすると、その手を彼はふっと自分の手で包み込んだ。



大きくて


キレイな手。



私の手を握ったまま彼は祈りを込めるようにして



「よしっ! 念入れといたから。 オッケーだって!」


そして笑顔でそう言った。


本当に不思議だった。


緊張していた気持ちが全て解き放たれる。



「絵梨沙はピアノを弾いてる姿が世界一キレイな女なんだから、」



歯の浮くようなセリフも


慣れてしまったのか


いちいち腹が立たなくなった。



それどころか


魔法の言葉のように私を包み込む。

私にもできるだろうか。


ピアノで人を感動させることが。




大好きなショパンのノクターン第8番。


お客さんの息遣いが聞こえてきそうだった。


みんなこうして私の演奏を聞いてくれている。


この空気に音が自然に溶け込んで。



つづいて


リストのパガニーニによる大練習曲第6番・・


これを弾いている頃には私は気持ちが本当に穏やかになって


自分の音をダイレクトに身体に感じて。




私は超一流のピアニストになって


世界中の有名なオケと競演して、スポットライトを浴び続けるのが夢だった。



今、こうしているのは


その夢にはまだ程遠いけど




ああ


私はこれをしたかったんだ



ようやく自分の夢がはっきりと見えた気がした。


小さな舞台でも


私の演奏を聴いてくれる人達がいる・・・




そして


演奏を終えると、お客さんが立って拍手をしてくれた。


歓声も飛び交い。



この感動が欲しかったんだ・・・・



今までコンクールのためだけにピアノを弾いてきた絵梨沙はお客さんの前で弾く歓びを覚えます。それはやっぱり真尋の・・・



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