Tomorrow comes over(9) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

二人は別室に呼ばれた。



「先日。 北都社長と少しお話をさせていただいたんです。」


心療内科医の三浦は二人にコーヒーを淹れてきてくれた。


静かに頭を下げる。



「さすがにホクトグループの御大ですよね。 お仕事のことはかなり詳しく覚えていらっしゃって。 ぼくにお話をしてくださいました。」



彼はまだ30そこそこといった若い医者で、ニコニコと話をした。



「でも。 ご家族の話になると・・・やっぱり口が重くなってしまって、」



真太郎はハッとして彼を見た。



「ご長男のことを・・・まだ思い出せないことを非常に心苦しく思っておられるようです。 他のご家族のこともあまりお話になって下さいません。」



「そう・・ですか、」


真太郎は落胆したようにうな垂れた。



「そのことを。 罪にさえ思うように。 ご自分を責めていらっしゃるようでした、」


南も心が痛かった。




「それでも・・ご自分の記憶の中にご長男のことはぼんやりとは存在するんだと思います。自分の過去を辿った時に必ずあなたのことが社長の記憶になくてはならないものだからです。」



ニコニコしていた三浦の目がキリッと厳しくなった。



「え・・・」



真太郎は医師を見た。




「こういう症例は実は珍しいことではないんです。 病気や事故である特定の事柄だけの記憶が飛んでしまう、ということは。 私も何人かそのような患者さんを診たことがあります。 それはある限られた期間のこともありますし、限られた『人物』であることもあります。 なぜか・・・特定の方の記憶を失っている場合、その方にとって特別な存在であることが多いんです。」



「特別・・?」


南は少し身を乗り出した。



「何十年も連れ添った奥様であったり、兄弟であったり。 そのようなことが多いんです。 人間の記憶って不思議なもので劇的なことが起こると嫌なことをきれいさっぱり忘れてしまったり、そんなこともあるんです。」



「嫌なことって・・・。 ぼくが父にとってそういう存在であったということですか?」


真太郎は少し動揺しながら言った。



三浦はそんな真太郎に落ち着いてにっこり笑い



「いえ。 それは裏返せば・・・『心配でどうしようもない』存在ってことだと思います。」



優しく言った。




心配・・・



南もこれまでの二人のことを思い出していた。




北都は表だって真太郎のことを大事に大事にしてきたような感じではなかったが


いつも心のどこかで彼のことを慈しみ、そして自分の跡を継ぐ彼のことを心配してきただろう。




「たぶん。 社長はご長男のことを・・・今もずっとずっと心配されている。 私はそう思いました。 」




医師の言葉がすごくすごく遠くに聞こえた。



真太郎は医師から意外な話を聞かされます・・・


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