「今、お生まれになりましたよ、」
看護師が二人の前ににこやかに現れた。
「え! ほんまですか!」
南はいつものよく通る声で思わず大きな声を出した。
「ええ。 元気な男のお子さんです。 とっても安産でお母さんも元気で、」
南は思わず真太郎の手を取り、
「やった! 男の子やって!! よかった~~~!!」
と、ぴょんぴょんとび跳ねた。
「早く斯波さんに連絡しなくちゃ。 きっと寝れないで待ってるよ、」
真太郎も嬉しそうに言った。
「うん!!」
南は携帯を握りしめて、その場を立ち去った。
「え・・・? 生まれたの?」
斯波はやっぱり寝ていなかったようで、電話にすぐに出た。
「うん! 元気な男の子やって! 萌ちゃんも元気やっていうし。 ほんまによかったね~~~~!」
斯波は感無量なのか黙ったままだった。
「斯波ちゃんもお父ちゃんやな。 あ~~、ほんま。 嬉しくて。 泣ける、」
南は目の端にたまった涙を手でぬぐった。
「・・ありがと。 ・・うん、ありがと。」
斯波はいつものようにボソっとそう言った。
しばらくして赤ちゃんは新生児室に連れてこられた。
「あ、あれや。」
南はネームプレートを確認して指差した。
「ほんとだ。 なんか・・・しっかりした顔してるなあ。 真鈴が生まれた時はほんと、サルって感じだったのに。」
真太郎は微笑んだ。
「みんな。 赤ちゃんはかわいいねん。 あんなちっさくても・・・手動かして・・・。」
南は今この世に生を受けたばかりの
頼りないばかりの赤ん坊を見て
胸がいっぱいになってしまった。
思わずハンカチで顔を覆った。
「・・ほんま。 命ってすごいな・・・・。 人が・・・この世に生まれてくるって・・すごいことやな、」
自分には叶わないことが
以前は『罪』のように思えたことも
人としてこの世に生まれてくるというこの奇跡のできごとは
本当に尊く。
人工授精を勧められたこともあったが
何だかそれは踏み切れなくて
それはやっぱり自分たちの子供、というよりも神様からの授かりもののような気がしたから。
「・・すごい。 すごいね、」
南はひとりごとのようにそう言って、また泣いた。
二人は生まれてきた新しい命に感動します・・・
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