「どうして。 あのホステスさんのトコ行ったとき。 なんもせえへんかったん?」
唐突に南は質問をぶつけた。
「え・・・」
突然、そんなことを言われて真太郎は目を大きく見張った。
「雰囲気的にさあ。 OKやったんちゃうの? 彼女のことはようわからへんけど。 1週間も同じ部屋にいて。 ほんまにどーにかなっちゃおうって思わなかったの?」
真太郎がリエとなにもなかったと知ったときから、南はそれが心に引っかかっていた。
「・・・思わなかった、」
真太郎は頬づえをついて小さな声で言った。
「うそ、」
南はちょっとムッとして彼の隣に座る。
「・・あの人はおれよりも年下だけど・・本当になんていうか・・・人生をちゃんと考えて生きてるっていうか。 尊敬するくらいに。 あの時ひとりにならずに彼女のところにいたのは・・・やっぱり一人でいられなかったからだと思う。 彼女、何も詮索してこなかったし。 楽だったのかもしれない。」
「・・・いっくら真太郎が真面目やからって・・あんなに美人と一緒にいて・・なんも思わなかったなんて・・おかしいやん、」
「気持ちと身体は別だよ。 おれがおかしいのかもしれないけど・・・。 彼女のことは愛してるとかそんなわけでもないし、・・そんな気持ちにはなれなかった。」
「男って理屈やないときもあるやん、」
いつの間に南は真太郎が浮気をしなかったことを責めているような空気になってしまった。
「愛してなくちゃ。 ・・・できないよ。 おれは、」
真太郎はぼうっとそう言って、床を見つめた。
ほんまに。
クソがつくほど真面目なんやから、
南は逆に呆れてしまうほどだった。
「・・・浮気してほしかったみたいに、言うなよ、」
真太郎はその空気を察して、ボソっと言った。
「もっとさあ。 欲持って生きたほうがよくない?」
南も片手を頬に充てながら言った。
「そんな欲はなくても生きていけるよ、」
生意気な・・・
南はちょっとだけ真太郎が憎たらしくなった。
「一緒に仕事し始めたころは。 こうやってよくくだらない口げんかしたよな、」
真太郎はふっと笑った。
「いっつもおれのこと子供扱いだったし。 ほんと、何とか南を見返したいって思ってた。」
結婚してからは
ケンカと言えるようなものはほとんどなくて。
別に我慢をしていたわけじゃないけど、結構お互いに気を遣ってたのかもしれない。
「ほんま。 赤ちゃん生まれるのって時間かかるなァ・・・」
南は自分でふっておきながらその話を逸らすように、つぶやいた。
「ん・・・」
窓の外はもう大雨だった。
こんな状況でも南らしいあけすけな質問を真太郎にぶつけます・・・
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