「ねー。 見て。 これすっごいキレイでしょ~~。 秘書課のみんながくれたんだよ、」
夏希は高宮の病室に大きな花を活けた。
「やっぱり花があると華やかになるよね。 気持ちも明るくなるし、」
嬉しそうに花瓶を置く彼女に
「・・あんこは、元気?」
高宮は言った。
「うん。 元気、元気。 今朝早起きしてお散歩も行ったし。 この前、獣医さんが言ってたんだけどもう少ししたらお年頃だけど、避妊手術とかは考えてないんですか?って言われたの。」
「避妊手術?」
「うん。 でもね。 あたし、あんこにはお母さんになってもらいたいかなーって。 もしさあ、赤ちゃんが生まれて、もっとワンちゃんが増えたら楽しくない?」
夏希は目を輝かせて言った。
「え~~、増やすの~?」
「相手はね。 獣医さんが探してくれるって! もしその気ならって。」
「犬っていっぺんに2~3匹産むかもなんだよ?? そんなに増やしてどーすんだよ・・」
高宮はまた暴走しそうな夏希を止めた。
「そっかあ・・・。 うーん、誰かもらってくれないかな・・・。 でも! 知らない人とかはヤだな。 友達とかで~~、」
また適当な・・・
高宮は苦笑いをした。
「とりあえず。 その話はまだ待ってて。 いっくらなんでもいきなり増やせないし、」
「そっかあ・・・」
夏希はガッカリした。
少しの沈黙の後、高宮は
「明日。 お昼ごろ・・・来てくれる?」
と、夏希に言った。
「え? 明日は日曜で休みだから・・いいけど。 別に午前中にも来るよ。何か持って来て欲しいもの、ある?」
「ううん。 ないけど。」
「あんこも連れてきたいな~~~。 ま、無理だけど。」
「・・・ん、」
もう入院して明日で1週間になる。
起き上がるのはトイレとシャワーの時だけで、あとは安静にしていなくてはならない。
胃の痛みは薬のおかげで和らいだ。
「ね、見て! これ笑える、」
夏希は無邪気に友達から来たおもしろいメールを高宮に見せて笑った。
「まだちゃんとしたもの食べられないんだよね。 ドロドロみたいなヤツばっかで、」
夏希は思い出したように言った。
「ん・・・。 腹減ってんだか、痛いんだかなんだかよくわかんないよ・・・。」
「じゃあ焼肉とかも当分無理だね~~~、」
心底残念そうに言った。
「それより。 夏希はちゃんと食べてるの?」
「え? あたし? だからあ。 これでもちゃんと一人暮らし何年もしてたんだから。 今は隆ちゃんのおかげでお金の心配をしなくてよくなったし。 って、別にコンビニでお菓子ばっかり買ってるわけじゃないよ。 ちゃんと作ったりもしてる。 昨日はねえ・・・。 え、なんだっけ? お好み焼きを作ろうと思って・・・粉がなくって・・・、焼きそばの麺と、ホットケーキミックスがあったから~~~、それで焼いて。」
もう何が出来たのか想像を絶した。
「・・・なに、食べたの?」
おそるおそる聞くと、
「うん。 なんか、甘いもんじゃみたいなヤツ。 キャベツも入れたし、豚肉も! 栄養はあるよね!」
意味わかんないし・・・
高宮は腹の底からのおかしさが滲んできて、堪えるように笑った。
「あ~~~、早く隆ちゃんとタン塩、食べたいよね!」
夏希は夢見るように言った。
高宮は夏希のいつもの調子に救われる気持ちです・・
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