夕方になり高宮のもとに妹の恵がやってきた。
「本当に驚いた。 お母さんも取りみだしちゃって、」
「・・ごめん。 ・・紘之は?」
7月に生まれたばかりの甥っ子だった。
「さすがに。 まだ病院には連れてこれないから。 お母さんに頼んできたけど。 これもあれも持って行きなさいとか言っちゃって、いろいろ持たされて・・」
恵は母から託された紙袋を指差した。
「夏希さんがいるのに、また余計なことばっかりなんだから。」
「・・まあ。 少しは気を遣ってくれてんじゃない?」
高宮は笑った。
「ほんと。 お兄ちゃんが倒れたって聞いた時のお母さんのあわてようが、あたしもびっくりした。」
妹の言う意味がなんとなくわかり、
「・・・うん、」
まさか自分のことで泣きだすとかも思わずに。
「結婚式は残念だったけど。 今はゆっくり休んでね。」
「ん・・・」
高宮は少しの沈黙の後、
「恵に頼みがあるんだけど、」
ぽつりと言った。
「え?」
「今日はもう終わりにしましょう。 食事でも行きますか。」
志藤はパソコンを閉じながら真太郎に言った。
「いえ、」
真太郎は背を向けながら、資料を整理ながら小さな声で言った。
もう
どこまでも真面目なこの人が
こんなことをしでかして。
高宮が倒れてしまって。
きっと
自分が楽しいことや楽をするようなことを考えるのも罪だと思ってしまうのだろう。
もう真太郎のことがわかりすぎているだけに、志藤は彼が気の毒になってしまう。
南とのことは我々がとやかく言うことではなく。
二人が解決することだ。
余計なことは言わないようにしようと思いつつ。
「ま、いいじゃないですか。 腹は減っちゃうでしょ。 どーやったって。」
志藤は明るく言う。
「・・・志藤さんだって。 文句の一つも言いたかったでしょう、」
真太郎はボソっとそう言った。
高宮は恵にある『お願い事』をします。 そして真太郎は・・・
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