「なんか。 全体的に殺伐としてしまったな、」
南は秘書課のデスクで志藤と打ち合わせをしながら、ボソっと言った。
「え?」
「社長が倒れてから。 もう・・・ほんまにみんなてんてこまいで。 ピリピリして。」
大きくため息をつく。
「社長の具合はどうなん?」
「相変わらず。 もう手術してから1週間やのに。」
「そっか、」
「真太郎も。 家であんま口きかないし。」
「まあ。 いろいろあったしな、」
「んで。 シグマのことは丸く収まったけど。 ・・・高宮のおかげやったし。 自分がいたらなかったって言って・・・また落ち込むし、」
苦笑いをした。
「いっぺんに色んなこと押し寄せて。 精神的に不安定なんちゃうの? 仕事の他に父親の病状も心配せなアカンし。」
志藤は書類を揃えてファイルに綴じた。
「あたしも・・・何もしてあげらんないってゆーか、」
「珍しいなあ。 弱気やな、」
志藤は笑った。
「こんなにこんなに真太郎と一緒にいるのに。 こういう時、気の利いた言葉もかけてやれへんねん、」
「・・おまえがそんなやから『殺伐』としてるように感じるんやないの?」
「え・・・」
「いっつもみたく。 むちゃくちゃムダに明るいくらいやないと。 調子狂うわ、」
志藤は彼女の頭をポンと叩いて、そこを立ち去った。
そのとき、南の携帯が鳴った。
「はい。 南です。 あ、お義母さんですか? ・・・・え、」
ハッと顔を上げた。
「真太郎!」
南は待ちきれなくて、真太郎が戻るまで社長室でウロウロしていた。
「どうしたの?」
「もう、携帯切れてるし!」
「ああ、ごめん。 話し合いしてたから・・・」
と、携帯のスイッチを入れた。
「お義母さんから電話あってね。 お義父さん、意識取り戻したって!」
「え・・・」
真太郎はもう全身の筋肉が緩んでそこに座り込みそうなくらいだった。
二人が病院に駆けつけると、もう真緒も真尋も絵梨沙も子供たちもそこに来ていた。
「まだ朦朧としてるんだけど。 目をあけて。 うなずいたりしてる、」
真緒は真太郎と南をベッドサイドに誘った。
まだうつらうつらしているような感じで、
「真也さん、真也さん・・・」
ゆかりは泣きながら縋るように彼の手を握っていた。
その手をゆっくりと握り返してくれた。
真太郎はもうそれだけで嬉しくて安堵の気持ちでいっぱいだった。
「・・・ゆ・・かり・・」
母の名を呼んだ。
「も~~~、心配したんだから・・。 このまんま眠ったまんまになっちゃったら・・どーしようって、」
母は少女のように泣き続けた。
ようやく北都が意識を取り戻しました・・・が?
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