Lookin' for happiness(20) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

コンチェルトの出来具合を見るために

真尋はオケと初めて一緒に練習をすることになった。



のっそりと入っていく真尋に、志藤は後ろから彼の後頭部をペシっと叩いて、



「きちんと挨拶をせえ、」

と、まるで子供に叱るように言った。



「あっと・・みなさん、こんにちわ。」

真尋もまるで子供のような挨拶をして、オケのメンバーは思わずぷっと吹き出したりしていた。




「んじゃあ。 第1楽章のさわりだけいってみようか。」

指揮者の甲本が言った。



真尋はいつもより若干緊張したように、ピアノの前に座り両手を摩った。



甲本のタクトが振り下ろされた。


ゆうこはそっと裏の入口から中に入ってきた。


もう演奏は始まっているので、静かにと入って行った。


隅のほうでジッとしていようと思ったが、気がつくと隣に志藤がいた。

彼と目が合い、ちょっとだけ会釈をした。




わあ・・・




ゆうこはすぐにその音の素晴らしさに引き込まれた。




真尋のピアノが

本当に優しい。



楽譜を渡した頃はホントめちゃくちゃだったのに

このショパンのピアノコンチェルトは

カンペキにできていた。




学校の課題で忙しいといいながらも

彼は頑張ってやってくれたんだろう。




志藤はふっと微笑む。



あまりに真尋の調子が良かったので、甲本は


「このまま、続けて!」

と、通しで続けることをみんなに告げた。





あったかい。




志藤はそんな気持ちに包まれていた。



自分の内側からではなく

隣にいる彼女からその気持ちが伝わってくる気がした。




きっと

感情豊かな彼女は

この音に心を震わせているだろう。





『真太郎さんのことを知りもしないくせに、そんなこと言わないで下さい!』


『あたしは・・・このまま彼と一緒にいられるだけでいいって・・・』


『・・あたしが夢を見ていただけですから。』




『あたし・・泣いていましたか?』




あの時の彼女の顔を思い出す。



もう

支えていないと

どうにかなってしまいそうで。

たまらなかった。





そして

志藤はハッとする。




心臓が

ドキドキと音を立てた。




真尋のショパンが美しい旋律を奏でる。




・・おれ。




ずっと

彼女のこと

考えてた・・・。




『彼女』のことで頭がいっぱいだった。





ショパンを聴いても

奈緒のことを

思い出さなかった・・・・。




それは彼にとって

愕然とする気持ちであった。





真尋のピアノが志藤の迷いの答えを出してくれたようでした・・・


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