Lookin' for happiness(19) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「・・・ホントだよ~~~。 マジもう、檻に入れられてるって感じで~~。 あのオッサンがうるさくて、も~~。」



志藤が入ってきたのも気づかずに、真尋はピアノの下にもぐって電話中だった。



「ここんとこ忙しくてさあ。 ゆっくり二人でいられなかったのに。 バタバタとこっち来ることになっちゃって~。 今なにしてんの? え? 朝? ・・・もー、学校なんかどーでもいいじゃんかあ・・」




彼女に電話か。




ため息をついて、わざと荷物をドカっと置いた。




真尋はビクっとして、慌てて頭をピアノの底にぶつけてすごい音がした。



「いっ・・・でっ!! ・・あ~、なんでもないって。 んじゃあ、また。」

と慌てて電話を切った。


「盗み聞きしてんじゃねーよ、」

真尋はぬっとピアノの下から顔を出した。


「おれがここにいても気づかなかったクセに。 ったく、」

志藤はジロっと真尋を睨んだ。


「彼女に電話なんかしくさって、」

と言うと、



「・・妬くなよ。」

と、二ヤつかれて

本気で顔を踏んづけたくなった。



「早くやれ! うだうだしてないで!」

ものすごい怖い顔で言われて


「ハイハイ・・」

真尋は仕方なくピアノの下から出てきた。




いくら注意しても、真尋は疲れるとピアノの下に潜り込んで眠ったりしている。



ここが一番落ち着くと言って、いきなり来てみるとここで

エロ本を読み漁っていたり。

カップラーメンを食べていたり

ロクなことをしていない。



いっそのことここに布団を敷いた方がいいんじゃないか、と思うほど

彼の憩いの場のようだった。




普段の彼を見たら

あの美しい旋律を奏でているのは

別人ではないかと思えてくる。




相変わらず

メンデルスゾーンはダメだけど。




ミニコンサートで弾くもう一曲。


リストの『愛の夢第3番』は

涙が出そうなほど

完成度が高くて




こんだけ手のかかる真尋に

いきなりオケの大切なデビューコンサートでコンチェルトを頼んだことを

ちょっとだけ後悔したことがあったけど。




やっぱり

彼しかいない。




そう思わせるものがあった。



奈緒が死んでから

音楽とは一線を引くようになった。

コンサートにも行かなくなったし


もちろん

ピアノを弾くこともなくなり。



全てが彼女に繋がっている気がして

全てを避けて生きてきた。




こんなに音楽に向き合うのは

いつ以来なんだろう。




やっぱり

音楽は

いい。




そう思わせるくらい

真尋のピアノは

心を揺さぶる。





忘れかけていた音楽への情熱と向き合えたのも

真尋のピアノと出会えたからで。


真尋だけではなく

ここでは

大事な人に

たくさん出会えた気がする。




おれにも

まだ

こんなに優しい気持ちが残っていたんだ。




彼のピアノの音に包まれて

そんな風に考えていた。

 



真尋のピアノは不思議な不思議な力がありました・・・


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