Love destiny(13) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

社長室の脇のデスクで仕事をしていると、北都が戻ってきた。


志藤は特に立ち上がるでもなく



「・・おつかれさまです。」



仕事をしながら言った。



そんな彼の様子に


「どうだ? オケの方は、」

北都は気にすることもなく声をかける。


「とにかく時間がないので。 オーデションで受かったメンバーはぼくが直接会って細かいことを決めます。 他は玉田くんに任せて。」


「そうか。」




志藤は顔を上げて



「ぼくのやりたいようにやらせてもらってもいいんですよね?」



挑戦的に言った。




北都はふっと笑って、



「どうぞ、」



と余裕の答えをした。



「真太郎さんのことも?」


「真太郎は私の『息子』と思ってくれなくて結構。 まだ新卒のヒラ社員だから。 おまえが先輩としていろいろ教えてやってくれ、」

北都はデスクに座って、書類に目を通し始めた。




よくもまあ。

おれなんかに

こんな大事なプロジェクトを任せるよな。

こんなわけわらかん男に。




志藤は冷めた目で北都を見た。




「あ、真太郎さん。 バイク便でホールの概要の書類届いてます。」


「ああ、待っていたんです。 また明日にでも見に行きましょう、」


「はい。」

ゆうこは真太郎に励まされすっかり立ち直り、彼と楽しそうに会話をしていた。




「あ、ボタンが少し取れそうになっています。 良かったら直しておきます、」

ゆうこは真太郎のスーツの上着の腕ボタンがひとつ緩んでいるのを見つけてそう言った。


「え? あ、ホントだ・・。」


「落とすといけませんから、」

ゆうこは手を出した。


「すみません、」

真太郎は上着を彼女に手渡した。




嬉しそうにボタンをつけなおすゆうこの姿を志藤は頬づえをついて

ぼーっと見ていた。





「え~~。 ホントですかあ? すごーい。 こんど連れてってください。」


「社交辞令? ほんとに約束しないの?」


志藤はあっという間に秘書課の他の女子社員や総務や経理の女子社員と親しくなって

彼女たちと楽しげに会話をする様子がここかしこで見受けられるようになった。




『社内の女の子にも片っ端から手え出したって・・・』




美奈の言葉をゆうこは思い出して




なんで

あんな人が来たのかしら。


社長がもんのすごい

説得して来てもらったって言うけど。

も、ぜんっぜんわかんない!




ゆうこ一人が

そんな彼に憤慨していた。




志藤は真太郎と打ち合わせをしていると

「今のところ。 クラシック演奏家で契約をしているのは・・・ピアニストの沢藤絵梨沙と、・・北都真尋、ですか。」

志藤は書類を見ながらそう言った。



「はい。 これからオケのメンバーの契約体制を整えて・・」

真太郎が言おうとするのを制するように



「・・なんですか? この北都真尋ってのは。」



堂々と真太郎に言ってのけた。




「お、弟ですが。」

少し気おされながら答える。


志藤はふっと笑って、

「そーですかあ。 んじゃ、このプロジェクトは・・北都社長の息子のためのものだったってことなんですかあ。」

バカにするようにそう言われ。



「そんなこと! 確かに真尋のピアノがきっかけだったのは認めますが。 ぼくはクラシックが大好きな人間の代表として、もっともっとクラシック音楽を世間の人に聴いて欲しいと思ったんです。 堅苦しいコンサートだけじゃなくて、気軽に若い人も来れるようなライブ形式にして・・・。 沢藤先生も言ってました。 音大を出ても演奏家として食べていける人間はほんの一握りだって。 中には才能があっても諦めて別の道を行く人もいるでしょう。 そういう人たちが芽を出せるきっかけにもなればって!」



真太郎は真剣に志藤に抗議をした。




それでも志藤は厳しい表情で



「夢みたいなこと言わないで下さい。 クラシック事業を軌道に乗せるのは生半可なことじゃあできないんですよ。 ぼくも音大を出て演奏家の道を諦めた人間ですから。 まだまだ日本人にはクラシック音楽はお金を出して聴きたい、と思う人はわずかなんです。 思いつきでできるようなことではないんです。 夢がそんなに簡単に叶うとは思わないで下さい。」



と、言い切った。




なぜか

反論できなかった。



『わかっています。』



と言いたかったのに。





真太郎にとっても志藤はあまりに刺激的な存在でありました・・

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