Piece of dreams(20) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

『私から逃れられると思うな、』



『あの人』の

そんな言葉でうなされてハッと目が覚めた。




夢・・・




萌香は胸を押さえる。

はあっと息をついた。




私は

一生

『あの』過去から抜け出すことはできないの・・?



『人生いくらだってやり直しはきく。』



そう優しく言って微笑んだ斯波の顔がふっと浮かんだ。





気がつけば

彼女のことを考えてしまう。



あの愛人という男のこと以外にも

彼女は重い重い過去を背負っているのではないだろうか。


体中を鎖でくくりつけられて

そこから動けないような

彼女を見ているとそんな気がした。




「・・それでな、」

志藤は斯波に話しかけるが、明らかにぼんやりとしている。


「・・聞いてる?」

と身を乗り出すと、ハッと我に返り


「あ・・、す、すみません・・。 ぼーっとしてしまって、」

斯波は慌てた。



冷静沈着な彼には珍しい様子だった。



「なんかあったん?」

志藤は彼に言った。


「え、なにが、ですか?」


「なんかここんとこぼんやりしてることが多いし。 珍しいなあって。 隙のない男が。」

志藤は苦笑いをした。



「隙がない男って、」


「まあ、なにがあっても。 おまえがおれに相談なんかすることないやろけど。」

と、言いながらファイルをまとめた。



もちろん

志藤にも萌香を自分のところのマンションに住まわせることになったことは内緒だった。



「あ、志藤さん。」

廊下を歩いていると総務の女子社員に声をかけられた。


「なに?」


「あのう、栗栖さんなんですけど。」


「栗栖?」


「彼女、異動の時に書いてもらった住所、引越ししたんでしょうか。」


「は?」


「重要な郵便物なんかが戻ってきてしまうって。 彼女、引越しした時に会社の電話番号しか知らせていなかったようで、こっちにかかってきてしまったんです。」


「聞いてへんけど、」


「彼女、外出していることが多いので、ちょっと聞いておいてもらえます? んで、ここに連絡するようにって伝えてください。 住所変わったのなら総務に申し出るようにとも言っておいてください。」

彼女からメモを手渡された。



「ああ・・うん、」



まだこっちに来て3ヶ月も経っていない。

それなのに・・引越し?



志藤は怪訝な顔をした。



「ああ、栗栖。 ちょっと。」

外出から戻った彼女を呼び止めた。


「はい、」


「おまえ、引越しした?」

と言われてドキっとした。



「えっ、」



思わず絶句をしてしまう。



「なんかな、総務の子から言われて。 大事な郵便物が戻ってきてしまうって。 ここに連絡してほしいって。 あと、総務にも新しい住所知らせてやってくれる? そんでおれの方の書類にも書いておいて。 控えやから、」

と志藤からメモと書類を手渡された。



「はい・・」

萌香は戸惑う。



どうしよう・・

でも、ごまかすわけにも。



萌香は志藤の差し出した用紙に住所と携帯の電話番号を書いた。


「ありがと。 なんか引越ししたトコ、不都合でもあったの?」


「いえ・・ちょっと、」

萌香はその場限りの言い訳も見つからなかった。


志藤はその雰囲気を察し、それ以上は聞かなかった。



「じゃあ・・総務には自分で行きますので。」

萌香は軽く一礼して席に着く。



志藤は彼女の書いた住所を見る。

ぼんやりと見ていたが




『・・ラフィーネ中目黒 1203・・・』



どこかで聞いた?




志藤はピンときて立ち上がってファイルを取り出した。



志藤が二人のことに気づき始めたようです。

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