南は怪訝な顔で八神を覗き込んだ後、
「・・・知らなかったの?」
意外な言葉を口にした。
「へっ・・????」
声が裏返ってしまった。
そこに玉田と志藤が話をしながら戻ってきた。
「ちょっと! 聞いて! 八神ったらねえ!」
石膏のように固まったままの八神をほったらかしにして南は二人のところに飛んで行った。
「も~! 八神ってば、斯波ちゃんと萌ちゃんがつきあってること知らなかったんだよ~!!」
思いっきり大きな声で言われた。
「はあ?」
二人も一斉に八神を見た。
八神は箸を持ったまま
エビフライも口にできずに
その状況に
固まり続けた。
「ほんまに、知らなかったん?」
志藤も驚いたように彼を見た。
「もう・・・かれこれ2ヶ月くらい経つんじゃないですかね? 斯波さんはそーゆーこと口にしないからハッキリわかんないですけど。」
玉田も腕組みをして言った。
なに?
みんな・・・
知ってたの??
「一緒に住み始めたのがそのくらいなんちゃうのん?」
南が言った。
は?
一緒に
住んでる?????
またも衝撃だった。
「まあ、だいたいつきあいはじめてすぐに住んじゃったし。 ほんまにあの男あんなん見えてやることはや~って感じやもんな、」
志藤は笑った。
は・・・
それで
よかったんですか・・・
八神は体中の力が抜けた。
「でも! もうモロバレやもん。 ま、あたしは最初っからわかってたけどな。斯波ちゃんたち、最初は隠してたけどさあ。 たま~に残業中に二人で楽しそうにコソコソ話したり。 そん時の斯波ちゃんの顔がね! もうとろけそうにうれしそーな顔でさあ!」
南は八神の背中を叩く。
「まあ、でも。 お似合いっちゃお似合いですけどね。 美男美女だし、」
玉田も笑う。
「なんっか濃厚そうやもんな。 あの二人。」
志藤は昼間っから妄想をかき立てるようなことを平気で言ってまた笑う。
「八神~。 ニブすぎるって! あの二人、見てればわかるやん!」
南はどさくさにまぎれて、弁当箱の中のエビフライをパクっとつまみ食いしてしまった。
「あ・・・エビ・・」
「もうちょっとほら・・周り見てかないと。 おいてきぼりになっちゃうよ~~。」
南はそんなことはノープロと言わんばかりに豪快に笑った。
見てりゃわかるって・・・
八神はその後
何となく斯波と萌香に注目してしまった。
萌香が書類を手に斯波のところに行って彼の横に立ち少し顔を近づけるように斯波の話を聞いている。
時々、彼女は嬉しそうに微笑んだり
いつも怖い顔をしている斯波の顔が少し緩んで、彼女を見つめたり
やっぱ
わかるか・・
八神は自分の鈍さを恥じた。
栗栖さんが
来たばかりのころよりも
すっごく
優しそうな雰囲気になって
少しずつ笑顔が増えていったのは
そのせいだったんだ。
そうかあああああ。
八神はオーバーに
ひとりデスクにつっぷしてしまった。
そーゆーことになっておりました・・