Moon river(15) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「え? お盆休み? わかんねー。 この前帰ったからいいじゃん。 ばあちゃんは? 元気? おれ、ほんっと今忙しいからさあ。」

母から電話があった。



母ちゃんには悪いけど

おれは今

マユちゃんのことで頭がいっぱいなんだ。




「・・って! おい!」

真尋に肩を揺さぶられてハッとした。


「おまえ~~~。 おれが一生懸命弾いてるのに、寝るなよっ!」


「あっ、いえ! 目、目つぶってただけだから!!」

慌てて目を見開いた。


「疲れてんじゃねーの?」

真尋は腕組みをして八神をため息混じりにちょっと睨んだ。


「疲れてなんか、」


「コレ、斯波っちに仕上がってるかどうか今日の午後聴かせる事になってるんだけど。 どう?」



「・・・・」

寝ていたのでもちろん答えられなかった。



「・・・よく寝れましたので。 いいと思います、」

ぼーっとして答えた。


「バカ、」

真尋は八神のオデコをぴしゃっと叩いた。



不本意だったが

部署には内緒で

真尋の家で仮眠を取らせてもらってしまった。



「かわいそう。 なんか痩せちゃってない?」

絵梨沙が彼の寝ている寝室をちょこっと覗いてもどってきた。


「バカだと思わない? 彼女に入れ込みすぎだっつーの、」

真尋は昼食をばくばく食べながらそう言った。


「八神さんって、ほんと一途よね。 いつも一生懸命だし。」

真尋は口をもぐもぐさせながら、


「志藤さんや斯波っちに聞かれても、口裏合わせておいてやって。 ここでおれの練習に張り付いてたってことで。」



『バカ』と言いながらも

結局

八神が心配で。

疲れている彼を庇いたくなってしまう。



絵梨沙も真尋のぶっきらぼうな思いやりに、ちょっと笑って

「うん、」

と頷いた。



「ほんっと・・・すみません。」

八神は真っ青な顔をしてリビングにやってきた。


なぜなら

もう外は真っ暗で。



「いいのよ。 斯波さんには連絡しておきましたから。 真尋の調子がよくなくて今日はちょっと勘弁してくださいって言っておいたし。 八神さんもつきっきりで真尋のところにいてくれたって、」

絵梨沙にそう言われて


もう穴があったら入りたいほど恐縮してしまった。



「おれ、なにやってんだろ、」

ほとほと自分が情けない。


「でも、体は大事だから。 よっぽど疲れていたんじゃない? また倒れちゃうといけないし。」


「私的なことで疲れてるだけなんで、」

気まずそうにそう言った。


「真尋から聞いてます。 でも、あたしはその気持ちわかるから。」

絵梨沙は真鈴にミルクを飲ませながら微笑んだ。



「あたしは真尋と結婚してから、ほとんど演奏家として活動はしてないし。 子供も生まれて普通の主婦の生活中心に送っています。 みんな、もったいないって言ってくれるけど。 だけど、真尋を支えるには、あたしが中途半端じゃだめだから。 あたしは確かに海外のコンクールでも優勝したりしたことはあるけど、真尋には敵わないと思ってますから。  彼は『天才』です。 あたしは『秀才』まではいけたかもしれないけど、『天才』には、いくら練習をつんでも敵わない。 『天才』を支える仕事が自分の一生の仕事だと思ってるし、」



ミルクを飲み終わった真鈴を立て抱きにして、背中をさすった。



「絵梨沙さん、」



「理屈じゃないんですよね。 あたしは、どうなってもいいから真尋を支えていきたいって。」



絵梨沙の言葉は

本当に温かかった。

今の自分には



「うまくいくといいですね。 その彼女のコンクール。」

絵梨沙は美しい瞳で八神を見つめた。


「ありがとう、ございます。 ほんっと・・・真尋さんもなんだかんだ言っておれを庇ってくれたりして。 感謝しています!」



感情が昂ぶって

涙が出そうだった。




「あ、ごくろーさん。」

社に戻ると、斯波にそう言われて心が痛かった。



「・・遅くなって、すみません。」

頭を下げた。



「真尋、そんなにダメだった?」

書き物をしながらそう言われ、



「いえ、」



どう答えていいかわからない。



自分を庇ってくれた真尋に

全てを擦り付けるようで、もう良心が痛んで仕方がない。



「ぜんっぜん・・・ダメじゃなかった、です。」



「は?」

斯波は顔を上げた。



「す、すみません!!」



八神はオデコが膝につくくらい

斯波に頭を下げてしまった。



「おれ、真尋さんのピアノもロクに聴かないで・・寝てしまって、」


「は?」



「ちょっと仮眠をとったほうがいいって、絵梨沙さんに言われて・・甘えてしまって! ほんっと、」

声が震えていた。



自分が情けなくて

どーしようもない。



「真尋さんと絵梨沙さんはおれを庇ってくれたんです。 ほんと、恥ずかしい限りです。 もう、社員失格です!」

涙がこぼれた。



疲労で八神はぐったりですが、真尋や絵梨沙の優しさに・・

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