Only as for your eyes(2) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「もう、どこ行ってたの。 お迎え火焚いちゃうよ、」

家に帰ると母が玄関前で待っていた。


「あ・・すみません、」

高宮は今の今まで彼女にしていたことを思うと、母に申し訳ない気がした。


「ごめんごめん。 新聞紙持ってきた?」


「火をつけるだけだよ。」

母はホウロクの上に置かれた木にマッチで新聞紙から火をつけた。



煙がぱあっと空高く舞い上がる。



この煙を目印に

亡くなった人が家に戻ってくるって

聞いたことはあるけど

実際にこうしてやってみるのは初めてだ。



高宮は夕暮れの空を見上げた。



彼女の大好きな

お父さんが

帰ってくる。




『加瀬、高宮のことお父さんみたいって言ってた、』



南にそう言われたことを思い出す。



お父さんか。

ちょっと、複雑だけど。


でも

そんなに大事な人と同等に思われてると思うと

本当に嬉しい。


きっと

いいお父さんだったんだろうな。


彼女の口から父親の話をされるたびに

そう思う。



家の中に入って、もう一度仏壇に手を合わせたあと、



「あれっ!」

夏希は食卓を見て驚いた。


「なに?」


「めちゃくちゃ普通のゴハンじゃん。」


「はあ? 普通でいいんじゃないの?」

母は言う。


「だってさ、肉じゃがと漬物と、お刺身がちょっとあって。 あと、もずく酢とか。 コレ、普通の夕飯だよ? せっかく隆ちゃんが来てくれたのに、」

不満そうに言う彼女に、


「そんな風に言うもんじゃないよ。 おれはこういうのが大好きだ。 おいしそうです。 いっただきます!」

高宮はニッコリ笑って食べ始めた。


「うん、おいしいです、」

と母に言った。


「ほら。 普通のゴハンが一番だって、」

母も笑った。


「仕方なく言ってんだよ、」

夏希はまだ納得がいかなかった。



「本当に美味しいよ。 あんまりこういうキチンとしたゴハン、食べないから。」


「え、あんたゴハンとか作ってあげてないの?」

母が普通に言うと、二人はドキっとした。


「え、そんなには作らないよ。 たまに。」

夏希は恥ずかしそうに言う。


「不思議な料理をな、」

高宮は笑った。


「不思議って!」


「ハハハ! 不思議だって!」

母にも思いっきり笑われた。


「そういう料理を娘に教えたのは誰よ!」

夏希は口を尖らせた。



食卓は3人だけでも、にぎやかだった。


というか、ほとんど母と夏希が騒々しく話をしているだけで、高宮は笑ってそれを聞いているだけなのだが。



「隆ちゃん、おかわりは?」

夏希が手を出した。


「もう、おなかいっぱいだよ、」


「え、まだ一膳しか食べてないじゃないですか。 普通は二膳はいくでしょう、」


「おれ、そんなにメシ食わないもん、」


「ダメだなァ、」

夏希は自分の茶碗に二膳目のゴハンを山盛りによそいはじめた。


「よく食べるでしょ? バカみたいに、」

母がそう言ったので、高宮は危うく味噌汁を吹き出しそうになってしまった。




翌朝。



「おはようございます、」

高宮は7時ごろ起きてきた。


「あれ、早いねえ、もっとゆっくり寝てればいいのに。」

母は食事の仕度をしながら言う。


「なんか今日、海に行くって言うから。」


「え? 海? 夏希、出かけちゃったよ。」

と言われて、


「は??」

目が覚めた。



「近所だけどね。 幼なじみの子がさ、ついこの間子供産んで。 見に行ってくるって。 子供好きだからさあ、」

と笑う。

高宮はつられて少し笑った。


「高宮さんは朝はパン?ゴハン?」


「や、どちらでも。」


「じゃあ、パンでいい? 今、コーヒー淹れるから。」


「すみません、」



静かな朝だった。

茶の間から青い空と白い雲が見える。

セミの鳴き声だけが響いて。




「田舎でしょう?」

母が食事を運んできてくれた。


「いいところですね。 ホント。 いっつも車の通る音がするようなところにいますから。 すっごく静かで落ち着きます、」


「まあねえ、それだけかな、」


「ひとりで寂しいですね、」

ちょっと母のことを思いやった。


「あたし? あたしは平気。 友達と自由にでかけたり、ひとりでもけっこう過ごせる性質だから。」

夏希の母はあっけらかんと言う。


「どっちみち。 一人になるし。 あの子が東京に行っても行かなくても。」

その言葉に胸がちくんと痛んだ。



「でも。 今回高宮さんを連れてっていいか~?って言われたとき、ちょっとドキっとした。」

と笑う。


「は?」



「なんか、あるんかなあって。 ひょっとして『お嬢さんを下さい!』とか言われたらどーしよって、」



ドッキーンとした。



「えっ、」



絶句していると、



「冗談、冗談。 夏希もただ遊びに行くだけだよって笑ってたし。 まあ、仲良くやってるんだなあって。」

心臓がバクバクいっていた。



「まあね。 まだまだだよね。 夏希なんか。 高宮さんがどこまで考えてるかわかんないけど。あんまりにも違いすぎるし。」

やはり母はそのことを心配している。



「そんなこと、」



高宮はやりきれない気持ちになった。



夏希の母としみじみと話をする高宮ですが・・

人気ブログランキングへ 左矢印お気に召しましたら、ポチっ!ぶーぶーお願いします!!