Only as for your eyes(3) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「高宮さんのことはね。 大まかだけど、夏希から聞いてる。 ホントはお兄さんが亡くなったことも聞いてたの。 昨日はヘタな芝居しちゃったけど、」

夏希の母は笑った。


「え、」


「夏希が。 高宮さんにはそんなこと言わないでって、言うから。 高宮さんが家族と疎遠になっちゃってること、すっごい気にしてるみたい。」



夏希がそんなことを考えているとは思ってもみなかった。



「ほんと、夏希とお母さんを見てると。 いい家族だなあって。 ぼくは小さい頃からあまり両親といる時間がなかったから。 父はほとんど家にいなかったし、母はそんな父を支えながら、兄の教育に身を削って。 ぼくと妹ははお手伝いさんに育てられたようなものでした。 家族全員で食卓を囲んだことさえ、記憶にあまりないくらいですから。 家族がいったいなんなのか。それさえもわからずに育ってしまいました。」



高宮は寂しそうにため息をつく。



夏希の母はコーヒーをカップに注ぎながら、



「夏希の父親はね、小学校の校長先生だったの。」

ふっと笑いながら言った。



「えっ・・・・」



失礼だが

あまりに彼女とのギャップがありすぎて

ちょっと想像つかない。



「あの子が中学生に上がったくらいのときかな。 校長になったのは。 とにかく、まあ、熱心な人でね。 学校でも家でも。口ぐせは、『子供には溢れるくらいの愛情を注ぎなさい』だった。」

クスっと笑った。


「子供のころに、家庭から溢れるほどの愛情を注いで育てたら、きっと子供はなにがあってもそこに戻ってくるって。 家庭がそういう場所だってこと、本能的に覚えるって。 そういうの知ってる子はね、グレたりしないって。」



溢れるほどの

愛情・・・。



「それは甘やかすって意味じゃなくてね。 子供と真剣に向き合って、なにを考えているのかとか。 子供が今思うことだとか、全部汲み取ってやることなんだって。」



なんだか

胸がいっぱいになってくる。



「想像だけで言うのは失礼だけど。 高宮さんは自分が帰れる場所、探してるのかなあって。」



母の優しい優しい言葉に

不覚にも

涙が出てきてしまった。



今の自分には帰る場所なんかない。

親からの愛情なんて

全くわからない。



「もう、選挙以外に大事なもんないんですよ。 ウチの親は、」

情けなくなってきた。


「今はそうかもしれない。 でもね、きっと、もっともっと時間が経ったら。それだけじゃないってわかるかもしれない。 人間、年取ると、考えは変わっていくしね。 お父さんだって政治家である前に人間だもん、」



高宮は鼻をすすった。



「夏希はね、たぶん、難しいことはいっこもわかってないと思うけど。 でも、あんたの心の中にぽっかりあいた穴がることはわかってると思う。 あの子がそれを埋められるほどの存在かどうかは別にして、あんたの寂しさを受け入れる覚悟はあるんだなあって、思った。」



ヤバ・・・

ほんっと

涙、止まらない。



高宮は手で涙を拭った。



「ぼくは・・・もう夏希以外にはなにもいらないんです、」



そんな彼の言葉に

母は少しだけ驚いたあと、



「ま、あたしもね、難しいことわかんないから!夏希はお父さんの血は一滴も引いてないと思うから。 あたしの血、100%みたいな子だからね。  えらそーなこと言えないけどさ!」

夏希の母は彼女ソックリな笑い方で、明るく笑った。



「は・・・・」




もう

泣き笑いみたいに、

高宮はちょっとだけ笑った。



「ね、メルアド交換してくれない? 夏希に内緒のことなんかも相談したいから。」

いたずらっぽく笑う母にさらに涙が引っ込んだ。




「たっだいまあ!」

その空気を打ち破るように、けたたましいほどの大声が玄関から聞こえる。


「あ~あ、うるさいのが帰ってきたよ、」

母は笑って立ち上がる。



「な・・、」

高宮はいきなり4~5人の夏希の友人に囲まれた。



「うっそ! やっぱりホントだったんだァ~! うっそみたい! 夏希が彼氏連れてくるなんて~!」


「しっかも! めっちゃイケメンじゃん! 背も高いし!」


「超エリートなんだってよ! あんまり恥ずかしいこと言っちゃダメだよ!」


「アツシにメールしよ、」

口々に色んなことを言う彼らに、


「ご、ごめんなさい。 なんっかみんな、隆ちゃんのこと見たいって言うから・・」

夏希は申し訳なさそうに言った。


「や・・・別に」

ひきつった顔で答える。




そして

「や~~! 海日和だな~!」


「ね、コレおいしいよ。 食べてみて!」



みんなで車に乗り込んで

なぜか海に向かうハメに



「ほんっと、ゴメンね、」

夏希はまたも申し訳ないように言った。


二人で海、を想像していた高宮は


「別に、」

同じようにひきつった笑顔を見せて、やり過ごす。




車で15分ほど走ると、もう海だった。


家から水着を着て来たので、みんな車の陰でいきなり服を脱ぎだす。


「い、いっくら水着着てるからってさあ。」

高宮はためらう。



夏希もTシャツを脱ぎながら、

「え、子供のころからこうしてましたよ、」

ケロっとして言った。


「それは子供だからだろっ!」



夏希はあっという間に水着になってしまった。



タンキニのビキニ姿が眩しい。



手足がスラっと長くて、胸もそれなりにある彼女にはすごくよく似合った。



「平気、平気。 誰も見てないから!」



いたずらっ子のような笑顔に

また心射抜かれた。



真夏の空の下、開放的にみんな弾けて・・

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