Fine Tomorrow(18) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

翌日の夕方6時ごろ、彼はやってきた。


「だ、大丈夫ですか?」

慣れない松葉杖をついて歩くのがいかにも大変そうな様子だった。


「な、なんとか。 おれ、足にギブスも松葉杖も初めてだから、慣れなくて。」

寒いのにうっすら汗をかいているほどだった。



「ど、どうぞ・・・。」

夏希は少しドキドキしながら彼を部屋に入れた。


「おじゃま、します。」

この前、成り行きでこの部屋に来たが、こうして改まって彼を招くのも気恥ずかしい。



「ゴハン、作ったんですけど? 食べませんか?」



「え? ホント? なんかおれハラ減って・・・・」

と言ったとたん、高宮は忌まわしい過去を思い出す。


「ほんとですかあ? カレーなんですけど! ちょっと冒険しちゃいましたァ~。」

夏希は嬉しそうに言う。



「冒険・・・」



高宮は絶句した。




「これは・・」



「ジャーン! 丸ごとトマトと冬瓜のカレーです!!」



目の前に出された代物は。

確かにカレーなのだが、じゃがいもや肉よりも、ものすごい存在感のトマトと・・・とうがん??


「加瀬さんは・・トマトが好きなんだね、」

ひきつりながら言うと、


「そうなんです! もういつも冷蔵庫にトマトは常備してあって。 朝、何も食べたくないときもつめた~く冷やしたトマトなら食べれるし。 ウチの実家から送ってくるトマトが美味しくて!」


「しかし・・何故、とうがん? ていうか、とうがんってなに?」


「ああ。 ほんとは冬が旬の野菜じゃないんですけど。 たまたまこの前お母さんが送ってくれて。 鶏肉なんかと一緒に煮ると美味しいんですけど、ちょっとそれは難しいんで。 カレーにしちゃいました。」



しちゃいました・・・って。



「どうぞ!」

満面の笑みで勧められて、おそるおそるカレーを口に運んだ。


もぐもぐと口を動かす彼に、心配そうに


「どうですか?」

夏希は顔を覗き込む。


「うん・・・うまい、かも。」



何だか新鮮な味だ・・

トマトの酸味と甘さがカレーに合ってるかも。



でも、別々に食べたほうがうまいかも・・・



そう思ったが言わなかった。


そして冬瓜を口にしてみた。



「・・・・・・」



今まで冬瓜を食べたことがなかった高宮は初めての食感に無言になってしまった。



「だ、ダメですか?」


何も言わない彼に夏希は心配そうに言う。



「ダメってわけじゃないけど・・・」



なんちゅーか

それ自体の味はあんまりしないけど、この何とも言えない食感が・・・。


しかも、カレーとはうらはらな水っぽさ。

なんでカレーに入れたんだろ。



色んなことが頭を駆け巡る。



しかし

こんなオチを待っていたような気がする。

そう思ったら

笑いがこみ上げてきた。



「なに笑ってるんですか?」


「ううん。 加瀬さんといるといろんなことが知れて楽しいね。」


「は?」


「食べなよ。 美味しいよ。」



「え! 結構おいしいかも! 久々のヒット!」

夏希は笑顔でもりもりとカレーを食べていた。




そんなでもねーだろ・・・



そう思ったらまた、おかしくて笑ってしまった。



別に何もしなくても

おれはこういう空間を待っていたんだ。

おれが思いつかないことを次々とやってのけるきみが・・・ほんっとにカワイイんだ・・・。



「デザートもあるんです!」

夏希は張り切った。


「えっ・・・」

高宮はぎょっとした。


「まさか・・ホットプリンじゃないよね?」


「え、ちがいますよ~。」

夏希は冷蔵庫から"それ”を取り出してきた。



「はい!」



と差し出された皿には・・・


スライスしたりんごの上にマヨネーズがかかった代物が乗っていた。



「これは・・?」

高宮は皿と夏希を交互に見た。



「え、見たまんまです。 りんごのマヨネーズかけ~。」



高宮はしばし呆然とした後、自分的にこれを待っていたような気がして、こらえきれずブハっと笑ってしまった。



「え、何がそんなにおかしいんですか? どこがツボ?」



だめだ・・笑いが止まらない。



転がって笑う高宮の体を揺すりながら、



「ちょっとそんなに笑って・・・失礼じゃないですかあ・・」


「あ~、ごめんごめん。 あんまり期待通りだったから、」

涙まで出てきてしまった。


「ほんと、美味しいんですから! 小さい頃、お母さんがよくこうして出してくれて。 このりんごの酸味とマヨネーズの酸味とまろやかさが妙にマッチして・・」

夏希は美味しそうに食べ始めた。


「早く、高宮さんも食べてみて下さい・・」

ジロっと睨んだ。


「ハイハイ・・・」


まるで罰ゲームのような気分だった。

高宮はまたもおそるおそる口にした。



「・・・・・」



またも無言で口を動かして、



「フルーツサラダ?」

と言った。


「そうそう! そんな感じ!」


「でもなあ・・・・無理に一緒に食べなくてもいい気がするなあ・・」


「え~~?? そうかなあ、」

大いに不満そうに夏希はそれを完食した。



ほんと

彼女のこの食べ物のセンスも


おれ

結構楽しんでるよな。



久しぶりの『夏希ワールド』を高宮は心から楽しんでおりました・・

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