Fine Tomorrow(8) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

高宮がベッドの端に座り込んでボーっとしていると、携帯が鳴った。



「も、もしもし・・・」

慌てて出ると、萌香からだった。


「栗栖さん、」


「あの、加瀬さんがこっちに戻ってきていることは知っていますか?」

斯波から聴いた彼女の様子で、ひょっとしたら、と思っていた。



「え・・・」



頭が混乱していたが、彼女がここからいなくなったということは東京に戻った、と言うことには違いなく・・・



「い・・今、知った、」


「やっぱり。 黙って出てきたのね・・・」



「か、彼女はどうしてる!?」

夏希の様子が気になって仕方がない高宮はすごい勢いで聞いた。


「斯波さんしかいないところに戻ってきたみたいで。 私もまだ会ってないの。 まだ熱がありそうだったから家まで送っていったらしいけど。 もう泣いてばっかりで何も言わないんですって、」




胸がズキンと音を立てた。




泣いて・・・。




「高宮さんと何かあったのかなあって・・」



厳密に言えば・・おれとではないけど。



「おれが会社に行った後、こっちの支社長秘書の子が書類を届けてくれて。 彼女と会ってしまったようなんです・・・」


理沙が泣きながら話をしたことを思い出す。




「私、びっくりして。 この人が高宮さんの彼女だって・・・すぐピンときて 彼女がいるから高宮さんが東京へ戻ってしまうって。 そう思ったら・・・」

理沙はハンカチで涙を押さえながら朝の出来事を彼に伝えた。



「高宮さんがこっちに残ってくれるって、言ったって・・ウソをついてしまって・・・」



「え・・・」



彼女の言葉に驚いた。



「高宮さんがどんなにこちらで必要とされているかって・・ことも。 いえ・・・もう・・私とも離れられないって・・」

さらに衝撃は続く。



「高宮さんと・・・普通の関係じゃないみたいなことを、言ってしまって。」



「水谷さん・・・」



この

おとなしくて控えめな彼女が、まさかそんなことを言うなんて。

にわかには信じがたく。


そこまで彼女を突き動かしたものは

なんなのか。



「ごめんなさい! ・・・とんでもないことを言ってしまって! あ、あの日、私たち、何もなかったんです。 高宮さんから抱きしめられてキスまではしましたけど。 でも、ベッドに倒れこんだら、もう高宮さんはすぐに眠ってしまって・・・」



彼女の告白に体の力が抜けていく。




なにも

なかったんだ・・・。


いや、正しくは

キスはしてしまったけれど。 だ。




高宮は頭を抱え込む仕草をして、



「・・そうだったんだあ、」

いろんな後悔と安堵が入り混じる。



「彼女すっごくショックを受けてしまったみたいで。 本当にごめんなさい! 私も、・・なんであんなことを言ってしまったのか・・」


必死に謝る理沙が

なんだかかわいそうになって。



「いいよ・・・・もう、」

高宮はつぶやくようにそう言った。



「え・・」



「おれが、悪い。 たとえ何もなかったにしても。 おれの気持ちが弱くてそうなってしまったんだから・・・」

すっと立ち上がって部屋を出た。



それから、夏希の携帯に何度も電話をしたが、全く繋がらなくなり。




「そう、だったんですか・・」

萌香は夏希が戻ってきた事情を知る。


「その彼女のことは責められません。 ほんとおれのせいだし。 いっくら・・・自棄になっていたとはいえ彼女にそれをぶつけるなんて。」

自分の弱さが情けない。


理沙の気持ちをそんな風にもっていったのは自分の責任だ。


「それで・・・ショックを受けて具合が悪いのをおして戻ってきたのね。」



二人は夏希が今頃どうしているかを想像してしまい、たまらない気持ちになる。



高宮は意を決したように、



「今やらなくてはならない仕事があるから、とりあえず会社に戻るけど。 絶対にこのままにしないから。」

萌香にそう告げて電話を切った。




「栗栖・・さん・・」

夏希はそうとう憔悴しきっていた。


いつもの声の張りもないし、熱のせいか目もどんよりとしている。



「どう? まだ熱はあるの?」

萌香は優しくそう言った。


「38℃くらい・・」


「まだあるわね。 帰ってくるのもつらかったでしょう、」



つらかったでしょう

言われると。



東京行きの新幹線に乗っている時は

体よりも

心がつらくてつらくて仕方がなかった。



「栗栖さん・・・」

また泣きそうになる彼女に、


「アイスクリーム、買ってきたの。 これなら食べられると思って。」

にっこり笑って優しく彼女を包んだ。



「何も・・言わなくてもいいのよ。」

萌香はそう続けた。


「え・・」


「さっき・・高宮さんに電話をしたの。」



また

涙が出そうだった。



「彼もびっくりしてた。 あなたが急にいなくなったから。 それで、その理由も、わかってた。」



わかってた・・?



夏希は堪えきれずに涙をぽろりとこぼした。



「その彼女から聞いたみたい。 高宮さん、おれが悪いって、そればっかり。」


もう

耐え切れずに


「も、いいですから・・」

夏希はアイスクリームを食べていたスプーンをかちゃっと置いた。


「加瀬さん、」



「ほんっと・・・もういいんです! い、いきなり・・行ってしまったあたしが、バカだったんですから、」



本当に

衝動的に高宮に会いに行ってしまった自分の気持ちがものすごく恥ずかしくて

全て打ち消してしまいたかった。




そして

彼からされたキスも・・・・。



夏希は高宮と理沙の関係を誤解したまま、自己嫌悪に陥り・・

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