Fine Tomorrow(4) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

高宮は芦田に呼ばれた。


なぜ呼ばれたのか

だいたいわかっていた。



自分が中途半端な気持ちでいることが一番いけないのだ。


3月いっぱいという約束をもう少し伸ばしてもらおうか、とも考えたが。

残るなら残る、帰るなら帰ると態度をはっきりさせねばならない。



正直

迷っていた。

しかし



唐突にやって来て

唐突に寝込まれた



彼女のことが

本当に愛しい。



自分が自分らしく生きていく上で

一番必要なのが

彼女だ。




「大変、申し訳ないのですが。 ぼくは・・・・約束どおり3月いっぱいで東京に戻りたいと思っています、」


高宮は芦田にそう告げた。



「そう・・か。」

まるでその答えを予期していたかのように彼は静かに頷いた。


「支社長秘書は水谷さんがいます。 まだまだ頼りないですが。 彼女、本当に素直で真面目なので。 残りの期間、彼女に教えることは精一杯教えていきたいと思いますので・・・・」


もう

それしか言いようがなかった。




芦田には高校3年生になる息子と高校1年生になる娘がいる。

妻と子供たちを東京に置いて、単身赴任覚悟でここに来ていることは、もちろんわかっていた。


彼について1年。

物静かだが、きちんとしたものの見方をしてくれるこの人が好きだった。


自分だけ

彼女と離れるのがつらいから、と言って

東京に戻るのかと

自身に問いかけることさえ、申し訳なく思っていた。



高宮は黙って彼に頭を下げた。

顔を見ることも

できない。



「・・・わかったよ。 残念だけど仕方がない。」



穏やかな声がして、高宮は顔を上げた。



「常務、」


「ここにきみが来てくれなかったら。 大変なことになっていたかもしれない。 本当にありがとう。」

逆に礼を言われた。


「いえ、ぼくは・・」


「社長もきみのことを買っている。 これからも・・・頑張って会社の力になって欲しい。」



その言葉に

膝の上に乗せた拳をぎゅっと握り締めた。



間違いなく

彼女が大変な思いをしてここまで来てくれたことが

この決心をつけてくれたのだ。



迷い

悩んでいた気持ちが

パッと晴れていくように。




ここに来て丸2日。

夏希は39℃台から熱が下がらなかった。


高宮は10時ごろ帰宅して、


「どう?」

と彼女のためにアイスクリームやらイオン飲料を買って来る。


「だ、大丈夫ですから・・ほんと。 すみません・・・」



穴があったら入りたかった。

ここまできて彼にものすごく迷惑を掛けていることがとてつもなく恥ずかしかった。



「何か食べられそう? おかゆとか・・」


「いえ・・ほんっと・・大丈夫ですから。 高宮さんは早くお風呂にでも入って休んでください・・・」



夏希はヨロヨロと冷蔵庫に向かい、昨日高宮が彼女のために買ってきてくれたプリンを取り出した。

それをマグカップに移して、いきなり電子レンジで温め始めた。


「な・・なにしてんの・・」

高宮は度肝を抜かれた。


「え・・?」



しばらくして、ほっかほかのとっろとろになった代物を取り出した。

夏希はそれをちょっとずつ飲み始めた。



飲んでる!



「それは・・・なに?」

おそるおそる聞くと、



「え・・・なんだろ・・・『ホットプリン』?」

今名づけたであろうその品の名を言った。


「冷たく冷えてるプリンを、なんであっためるの?」

ひきつった顔で言った。


「え・・おいしいんですよ。 栄養もあるし。 そのまま飲めるし・・・」



周囲にあま~~い匂いが漂う。

疑っている様子の彼に

「ほんっと美味しいんですよ・・飲んでみてください、」

夏希はマグカップを差し出した。




う~~~~ん。




あの

『バナナがゆ』

の恐怖が蘇り、食べるのがものすごくものすごく勇気がいった。


ちょっとだけ口をつけて。



「う・・・・・」

思わず口を押さえた。


「おいしいでしょ・・?」


「あ・・甘い!」

慌てて水を飲んだ。


「え、この甘いのがおいしいのに。」

夏希は不満そうに言った。


「も・・むせかえるほど甘いよ・・・。 やっぱそのまま食べるほうがおいしいよ・・」



なんでこの子は

食べ物をフツーに食べないんだ。



「おいしいのに・・」

夏希はしゅんとしてしまった。



ほんと

カワイイ。



自分と目線はほぼかわらないほど大きいのに。

彼女の額に手を当てた。



「まだ・・熱いね、」


「夕方、解熱剤を飲んだんですけど・・・すぐに上がってしまって・・・。」


「志藤さんには話しておいたから。 ゆっくり休んだほうがいい。」



「あたし・・なにをしているんでしょう・・」

自分にも問いかけた。


それがおかしくてプッと吹き出してしまった。

「今はね。 余計なことを考えないで。」




優しい

優しい目で。

彼女を見つめた。


夏希は相変わらず意味不明なものを食べておりますが・・

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