Pure Love(20) | My sweet home ~恋のカタチ。

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そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「あ、もしもし、」


南の家から戻って少ししたころ、夏希の携帯に高宮から電話があった。



「自分から電話とかメールとかしていいですか?って言ったわりには・・ぜんっぜん、来ないな。」

いきなりぼやかれた。


「やっ! きょ、今日はしようと思っていたんですよっ!」

慌ててつくろった。


「いっつもそう言うけど?」


「今日は・・南さんのお宅にお呼ばれをしまして、今、帰ってきて・・」

ちょっと言い訳をした。



実際。

普通の若い女の子と違って、夏希は電話やメールをそんなにこまめにする性格ではないので、用事がないのにそういうことをするのに全く慣れていなかった。



「南さんの家? 社長のところ?」


「え、ええ。 実は今日・・・ピアニストの北都マサヒロさんと初めてお会いして、」


「北都マサヒロ・・・。 ああ、社長の次男の?」



「も、すっごいヘンな人なんですよぉ~~!」

夏希は堰を切ったように、真尋の変人ぶりを話始める。




「ま・・噂には聞いてたけどね。 すっごい変人だって。」


「でも! 奥さんはめちゃめちゃキレイなんですよ。 そこにもびっくり。」


「ピアニストの沢藤絵梨沙だろ? よく雑誌とかCMとかにも出てたよ。」


「も、あたし・・ぜんぜん知らなくて。 もう・・うっとりするくらいの美人で。」

夏希は絵梨沙を思い出してため息をついた。



そして、はっと気づいたように、

「そちらは、どうですか?」

とようやく高宮本人に矛先を向けた。


「ん。 ・・ま、すんげえ・・忙しい。 雑用ってゆーか、こっちと全然やり方が違ってて。戸惑う。」

心なしか声に元気がない。


「疲れてますね、」


「ま・・・会社が借りてくれたマンスリーマンションには寝に帰るだけって感じだし。」


「今、まだ会社なんですか?」

夏希は時計を見る。



もう11時だった。



「ウン、そろそろ帰ろうかなって思ってたトコ。」


「体は、大丈夫ですか? また、ナントカ大腸炎とかになっちゃいますよ、」



高宮は思い出し笑いをしながら、


「そしたら・・・またバナナがゆを作りに来て。」

と言った。


「そんっなに食べたいですか?」

夏希がムッとして言うと、


「食べたい、食べたい。」

高宮は笑った。


「わかりましたよ。 じゃあ、もっとすごいヤツ考案していきますから!」


「想像絶するな~、」




疲れていても

彼女の声を聞くと元気になる。

すぐそばにいるように

彼女の元気な声が聞こえる。







う~~~~ん。




斯波は頭を悩ませていた。


みんなそれぞれに仕事が忙しく。

チラっと伝票のハンコ押しをしている夏希に目をやった。



こいつしかいないか。


いや! 

しかし・・。



すると、夏希がその視線を感じて彼を見た。



「なんですか怖い顔して・・・。」



元々だけど。



そう言いたかったが怖かったのでやめた。


「加瀬、ちょっと。」

斯波は彼女を手招きした。




「えっ! あたしが、沢藤絵梨沙さんのマネージャーを!?」

驚いた。



「マネージャーはオーバーだけど。 彼女、今月テレビの収録の仕事や雑誌の仕事がいくつかあって。 みんな今めっちゃ忙しいから、ついていかれないし。 おまえは、車の運転はできるの?」


「も、任せてください! 大学4年の夏に合宿免許で取りましたから! 得意は縦列駐車です!」

鼻息も荒く胸を張った。


「縦列駐車はどーでもいいんだけどさ。 都内、運転できる?」


「前に宅配便のバイトもしてましたから。 今、車停めるところうるさいじゃないですかあ? あたし、けっこう隙間見て停めるの得意だったんですよ!」


「だから、停めるのはどうでもいいからさ。 ま・・・マネージャーつってもおまえはついていくだけでいいから。 あとの仕事は教えるから。」

斯波はそう言いながらも、



果たして大丈夫だろうか?



そんな不安でいっぱいだった。


しかし、夏希は入社して初めて仰せつかった大きな仕事に、

「も! がんばります! いつもの実力の100%を出し切って!」

ますます張り切った。


「いつも100%の力を出せよ・・・・」

斯波はぼやくようにつっこんだ。





「はあ? 加瀬に!?」

志藤は怖い顔で斯波を見上げた。


「他にいなかったんで・・・」


「おれがいるやろ!」


「はあ???」


「エリちゃんの付き人ならおれがいるやんて!」

声を大にして言う彼に、


「あなたは取締役でしょう。 タレントのマネージャーしてどうするんですか・・・・」

大きなため息をついた。


「ほんまにもう・・・エリちゃんのことになると見境ないなあ。」

南も呆れた。


「彼女はおれの天使や・・」

志藤は夢見るような顔でそう言った。


「また始まった・・・。」



夏希は不安そうに寄って来て、

「あたし、なんかまずかったんでしょうか?」

南に言うと、


「ああ・・いいのいいの。 もう病気、やから。」

と呆れる南をよそに、


「彼女とウチが契約したてのころ。まだ、二十歳にもならないころで。 ほんっと、もう・・・震えるほど美しかったなあ。 女神が光臨してきた、みたいな?」

志藤は入り込んできた。


「ウチと契約したのだって、結局、真尋からの紹介やったんやん。」

南の冷静なつっこみに、


「そうなんですか?」

夏希の問いかけた。



「あの二人、留学先のウイーンで知り合って、学生時代からずうっとつきあってたの。 んで、エリちゃんが在学中に出たウイーンのコンクールで日本人初の優勝をしてしまって。 それでいろいろ仕事が入るようになってな。そういうのマネジメントしてくれるトコ彼女が探してたから。 んじゃ契約しよかーって。」

南は説明をした。


「ほんっと・・最初はもう沢藤絵梨沙に比べたら北都マサヒロなんかヘにもならないくらいの存在やったのにな。」

志藤は少し寂しそうにそう言った。



「もうええやん。 今、エリちゃんは幸せなんやから。」



志藤は夏希をジロっと睨んで、


「おまえ、エリちゃんに何かあったら体張って助けろよ!」

と言い放った。



「ボディガードもですか・・」



夏希はあまりに真剣な志藤に反論もできず・・・。



思いがけず夏希は絵梨沙のマネージャーをすることになりました・・

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