Shooting star(8) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

もうすぐ梅雨になろうというのに

この日は嫌味なほど晴れていた。



「もう17年か。 早いものだな。」


「あっという間に経ってしまって・・・」

親戚たちは口々にそんなことを言っていた。




17年・・

まる16年。



おれはまだ小学校6年生になったばかりで。

兄貴は東大に合格して。

頭が良くて、スポーツも万能で。

高校生の時は生徒会長もやっていて。



親だけじゃなくて。

おれだって自慢の兄貴だった。



誰もが

父親の跡を継いで、立派な政治家になるって

信じてた。



でも。



東大にはたった2ヶ月しか通えなかった。


友達の運転する車に乗って。

箱根まで旅行に行く途中。

対向車がすごいスピードでセンターラインを超えてつっこんできたって。

両親の嘆き悲しむ姿が昨日のことのように蘇る。



おれと妹は

震える手をぎゅっと繋いでいた。




高宮は久しぶりの喪服が窮屈だった。

窮屈なのは神妙な席だからだけではない。




「ところで隆之介はどうしたんだ。 政則さんの跡を継いで次の選挙に出るって話だったけど。」


「なんだか本人がその気がないそうだ。 もったいないと言うか。」


「慎之介がいなくなって・・。 もう隆之介しかいないだろう、」



いやでも

そんなささやきが耳に入り。


兄の法要であったが、高宮はこの場に来るのが嫌で仕方がなかった。

父の後援会や政界の人間もここにはたくさん来ている。

自分に矛先が向いてくるのがわかっていたから。




「もうな、おまえは何もしなくていいんだよ。 こっちでお膳立てはするし。」

後援会長は子供のころから顔見知りだが、傷つくことを平気で言ってくる。


「何度も言うように。 おれは政治家になる気はありません。 やる気のない人間が立ったって未来はないですよ。」


「あの銀行の頭取の娘さんとの縁談はどうなったんだ。」


「母に断りました。 そういうみえみえの政略結婚もうんざりなんで。」

タバコを口にした。





「まったく何が不満なんだか。」


「アメリカで好きに勉強させてもらって。 それだって政則さんの跡を継ぐって話で。」



・・もう、やめろ・・。



「立てば絶対に当選させてやるのに。 ほんっと・・・わがままな坊ちゃんだ。」



おれのことなんか

何にもわかってないくせに!




「さあさ。 みなさまこちらで・・・」

母がお清めの席に案内をしているところに、



「おれ、帰る。」



突然、そう言った。



「隆之介? 何を言ってるの・・・これからみなさんに、お食事の席を、」


「・・・・。」


高宮は黒いネクタイをすっと外して、そのまま出て行った。



「隆之介!」

背中に聞こえる母の声にも振り向かなかった。



乗ってきた自分の車であてもなく、ただ走っていた。

首都高から見える夕陽がまぶしい。


もう

何時間走ったんだろう。

心の中は

ぽっかりと穴が開いたままで。

その空間を埋めるように

彼女の笑顔が脳裏に浮かんで離れない。




「もしもし、」

夏希は仕事を終えて社を出ようとしたところに電話を受けた。


「あ・・高宮だけど、」



ドキンとした。


「仕事、終わった?」


「今、帰るところです。」


「あと15分くらいで・・車で着くから。」


「え?」


「ちょっと・・行かない?」


「ど、どこに・・」


「決めて、ないけど。 じゃあ、会社の前で待ってるから。」

一方的に切られた。




え・・・

なに?



何だかいつもよりすっごく強引で。

ドキドキする胸の鼓動を抑えられなかった。

いつもの

彼じゃない気がした。



高宮は兄の法事でまたも親や周囲からのプレッシャーを受けますが・・


人気ブログランキングへ   左矢印お気に召しましたら、ポチっ!ぶーぶーお願いします!!