映画 「さよなら渓谷」 | 日々のダダ漏れ

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日々想ったこと、感じたこと。日々、見たもの、聞いたもの、食べたものetc 日々のいろんな気持ちや体験を、ありあまる好奇心の赴くままに、自由に、ゆる~く、感じたままに、好き勝手に書いていこうかと思っています♪

映画 「さよなら渓谷」



ごく普通に見える夫婦。
だがふたりは残酷な事件の被害者と加害者だった―。

都会の喧騒から離れた緑が覆う渓谷で、幼児が殺害
され実母が犯人として逮捕されるショッキングな事件
が起こる。母親の逮捕により、事件は解決したかに見
えたが、1件の通報により、この渓谷に住む尾崎俊介
(大西信満)がこの母親と不倫関係にあった事がわか
り、俊介に共犯の疑いがかけられる。通報したのは、
俊介の妻・かなこ(真木よう子)であった。取材に当た
っていた週刊誌記者の渡辺(大森南朋)は、かなこが
俊介を告発したこと、2人が必要最低限の物しか持た
ず、まるで何かから隠れているかのような生活をして
いることにひっかかりを感じる。調べていくうちに、渡
辺は2人を結びつけている15年前の罪に行きつく…。


**********

かなこ) 死ねないのよ。
     触んないでよ!
     何でもしてくれるんでしょう。
     何度も書いてたじゃない。
     ねえ…何でもしてくれるんでしょう。
     ねえ、返事しなよ。
俊介) (頷く)
かなこ) じゃ、私より不幸になってよ。
     私の目の前で、苦しんでよ!(泣)

     
**********

かなこ) どうしてもあんたが許せない。
     私が死んで、あんたが幸せになるんだったら、
     私は絶対に死にたくない。
     あんたが死んで、楽になるんだったら、
     私は絶対にあんたを死なせない。
     こんなことで楽になろうとしないでよ。


**********

かなこ) さっきの…あの夜先に帰った子の名前。
俊介) えっ?
かなこ) あの夜、先に帰った子が、
     「かなこ」っていうの。
     あの夜私は…かなこは、先に帰ったの。

**********

かなこ) いつまでついてくる気? ついてこないで。
俊介) あの…
かなこ) なに? これ。
俊介) お金…持ってないですよね。

(俊介を殴るかなこ)

**********

かなこ) あの日、あなたに会わなきゃ…。
     ついてこないでよ!

**********

俊介) 飛び込むんじゃないかと、一瞬思って。
かなこ) 死ねばいいと思った?
俊介) すいません…。楽になれる気がして。
かなこ) 私、あんたが逃げたかと思った。
     だけど…戻ってきてほしかった。
俊介) (泣)


**********

俊介) 「死ね」って言われたら…俺、死ぬから。

**********

かなこ) あなたが留置所に入ってる時、
     あの渡辺って記者に何もかも話したよ。
     あの人、「それで幸せなのか」ってしきりに
     聞いてた。だから私答えたのよ。私たちは
     …幸せになろうと思って一緒にいるんじゃ
     ないって。私が決めることなのよね。


**********

俊介) 彼女は出ていきましたよ。
渡辺) えっ?
俊介) 置手紙ひとつですよ。
    ただ、「さようなら」ってだけ。
渡辺) そうですか…。
俊介) 幸せになりそうだったんですよ。
    幸せになりそうだったからです。
渡辺) だったらなればいいじゃないですか?
俊介) ダメですよ。
    一緒に不幸になるって約束したから。
    だから一緒にいれたんです。
渡辺) でも、それでいいんですか?
俊介) テーブル、新しくしたんですよ。ホーム
    センターで。安いんですね。棚も買って…。
    俺は捜し出しますよ。どんなことしても。
    彼女を見つけ出します。
渡辺) あの…。ひとつだけいいですか?
    もし、あの時に戻れるとしたら…
    事件を起こさなかった人生と、
    かなこさんに出会えた人生と…
    どっちを選びますか?


真木よう子「 幸先坂 」Music Video Clip(Short ver.)


**********

最後の記者の質問がゲスだ。もし、あの時に戻れる
としたら…。事件を起こさないで、彼女に出会える人
生、という選択肢があってもいいんじゃないかって…。
レイプを肯定する選択肢なんて入れるなよ、って思う。

かなこという名前で、暮らす日々。あの夜、先に帰っ
ていたら…あの子のように、かなこのように、先に帰
っていたら…。かなことして生き直せたなら…と思っ
たかどうかは分からない。けれども、その名前もまた、
事件を思い出さずにはいられない名前なわけで…。

どうしてもあんたが許せない。

それが正直な思いだろうと思う。許せると思ったとし
ても、人間的な美点を見いだしたとしても、その瞬間
に、それでもこいつは、レイプができる人間なんだと
思わずにはいられないだろうから。好意を感じれば、
感じるほど、それならなぜ?という思いが、消えない
だろうと思う。それは、白い布についてしまった絶対
に消えない黒いシミのようなもの。消そうとすればす
るほど、シミは広がって、憂鬱な気持ちだけが残る。

レイプ…。つまりは、暴力というものは、許せないもの
だと思う。そして、許してはいけないものなのだと思う。
「犬に噛まれたと思って忘れなさい」とよく言うけれど、
実際に、犬に噛まれた時の痛み、恐怖心を忘れられ
人なんているのだろうか? 場合によっては傷跡が
残ることもあるだろうし、傷跡が消えても、唐突に、理
不尽に噛まれた恐怖心は、長い時間をかけて、薄れ
ることはあっても、忘れることはないんじゃないだろう
か? 
犬に噛まれたように、忘れることが難しいことが、
突然の暴力であり、痛みなのではないだろうか。忘れ
る瞬間はあっても、必ず思い出す瞬間も…やってくる。
かなこと俊介は、幸せそうになることはできても、きっ
と完全に幸せにはなれない。傷つけた側は、その痛
みを知らないから…油断すると忘れてしまう。でも傷
つけられた側は、忘れられない。身体だけじゃなく…
心も…魂も傷ついてしまっているから。暴力を振るう
者と、暴力を受けた者との間には、暗くて深~い河が
ある…。もう探さないであげて。どんなことをしても彼
女を見つけ出すという男と、ゲスな質問をする男と…。
男ってホントバカだと思ってしまった女性は多いはず。
真木よう子は、いい女だ。再確認させられた映画です。


●「さよなら渓谷」HP

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