「まれ」 第121回
第21週 「復活マルジョレーヌ」
第21週 「復活マルジョレーヌ」
夫婦も女将もパティシエも全部やりたい！の巻
徹） 「本格フランス菓子、アット能登。風光明媚
な能登半島。新鮮な魚介や伝統工芸を堪能
したあとに、ふらりと入った裏通りのひなびた
店。そこであなたを待つのは、伝統的なフラ
ンス菓子の修業を積んだ魔法のパティシエ。
とろける舌触り。奇跡のようなおいしさ。パリ
のパティスリーに迷い込んだような空間で、
あなたは、思いもよらない、本場フランスの
味に出会うだろう。あなたはいつしか、日常
の悩みを忘れて、幸せな笑みを浮かべてい
る。希！ 世界一のパティシエになれよ！」。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
圭太） 希！ お前…もう、パティシエに戻れ。
横浜でも、フランスでも、修業に行って
こい。お父さんの企画書読んで、ケーキ、
やりとなってしもてんろ。パティシエ戻り
てえげんろ。
希） 戻りたい…。
圭太） ほんなら…。
希） ほんでも…うちは、圭太のそばにもおりたいげ
んよ。能登に戻って、圭太と暮らしとったら、何で
もねえ日常が、まんで幸せで。お父さんはきっと、
ほれや分かっとって、ほやさけ、この、企画書を
っちゃ、残してくれてんと思う。見て、これ。お父さ
んの資料。飲食店の、いろんな営業の形をっちゃ、
まとめてくれたやつ。例えば、1日50個って決めて、
商品の希少価値を高めるとか。営業時間を限定
するとか。この企画書は、店開くためだけじゃない。
うちへの最後の…夢も、夫婦も、どっちもやってみ
れっちゅう、お父さんからの応援なんじゃねえかっ
て思うげん。できるかもしれん…。
夫婦も、夢もどっちも！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
みのり） 生まれるまでに
お父さん戻ってくれればいいね。
一徹） 俺、見とってん。お父さんや、出てくとこ。
みのり） なして止めんかったん？
一徹） 背中見とったら、何か、止めたら、
駄目やって気やして。お父さんの背中…。
みのり） ほうけ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
希） できるわ…店と女将さん！
圭太） マジか！
希） 見てこれ！ 一日のスケジュール。
ギリッギリやけど、なんとか両方やれそうやろ。
圭太） 大丈夫か？ 体。
希） 慣れれば、うまい事もっと時間回されるし、
販売するケーキの数をっちゃ限定すれば、
仕込みの時間も減らされるし。
お父さんの企画書信じて、やってみたい。
圭太） 分かった。
希） ありがとう。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
圭太） あいつは、うちが一番大変な時に、パティシエ
休んで、戻ってきてくれてん。店やるがも、女将
の仕事こなすがも、かなり無理せなできんと思
う。ほんでも、俺も協力するさけ、何とかやらし
てやりてえと思うとるげ。
弥太郎） ひとつの家の中で、夫婦でそれぞれ夢をっ
ちゃ持つっちゅうがは、並大抵のことじゃねえ
げぞ。しかも、２人とも職人ちゅう難しい仕事
ねん。
圭太） 分かっとる。
弥太郎） 希ちゃんは、要領よく妥協するっちゅう事の
できん、不器用な子や。女将とパティシエ、両
方にまともにぶつかって、壊れてしまうかもし
れん。ほれを守ってやれるか。ああ？
われの器や、試されるげんぞ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
直美） 女将とパティシエ、
両方やりたいっちゅうとるそうやね。
希） はい…。
直美） 私は反対やよ。あんたの気持ちも分かる。
パティシエの仕事辞めて、こっち戻ってきて
くれたがは、まんで感謝しとるげんよ。
ほんでも、輪島のために、圭太が思いっきり、
漆に没頭できるように、支えてやってほしい
げん。圭太が親方としてやっていけるかどう
かは、女将の、あんたにかかっとるげんさけ。
希） はい。
直美） 全く…。塗師屋も経営はギリギリやろがに。
ほして、店やるがに、いくらぐれえかかるが。
希） …お金？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
文） 徹も、最後に役に立ったな。
藍子） えっ？
文） 希の店や。徹の失踪や、
いいきっかけになったわいね。
藍子） ほうですね。
文） 藍子は、気持ちの、整理ついたんけ？
私なら、日本中一生かけても、捜しだして、
目の前で、離婚届にはんこ押してやるわいね。
藍子） ほんでも、希と一徹もおるげんし。
文） ２人とも、もう結婚して、自立した大人や。
藍子） …ほうですね。
文） あんたは、一人の人間として、自由に動けるげ
んよ。いろんな道をちゃ、じっくり考えてみまし。
ほうせなまた、あっという間に６年たつげぞ。
希） え～っと…。勢いで、肝心な事忘れとった。
お金…必要経費…。お金…。
圭太） おっ！ これすげえな！
希） ほうやろ！ ショーケースは、
マ・シェリ・シュ・シュみてえに、
両側から見えるタイプにしたいげん！
圭太） あっ、皿はもちろん、輪島塗やろ！
開店祝いにプレゼントしてやるさけな。
希） 本当け！
でも、うちや欲しいが、全部で、30枚やけど。
圭太） お…おう、任しとけま。
希） やった～！ じゃあ、合計は…。
圭太） いくらや？
希） 一、十、百…。1000万！
圭太） 1000万！？
希） ほんなん無理や！ ちょ…もっと削らな！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「まれ」を楽しくご覧になっている皆様は、
この先は華麗にスルーでお願いします。
希が考えたタイムスケジュールがこちら↓
３時００分 起床 掃除 選択
４時００分 出勤 仕込み
７時００分 朝食
７時３０分 出勤 仕込み再開
１０時００分 開店
１３時００分 閉店 片付け 昼食
１４時００分 女将業（布作り・糊作り・紙作り）
１９時００分 夕食準備
２０時００分 夕食
２１時００分 女将業（梱包・経理・検品・発送）
２３時００分 入浴・家計簿等
０時００分 就寝
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４時００分 出勤 仕込み
７時００分 朝食
７時３０分 出勤 仕込み再開
１０時００分 開店
１３時００分 閉店 片付け 昼食
１４時００分 女将業（布作り・糊作り・紙作り）
１９時００分 夕食準備
２０時００分 夕食
２１時００分 女将業（梱包・経理・検品・発送）
２３時００分 入浴・家計簿等
０時００分 就寝
３時間しか寝ないのか！ てか、絶対無理だろー！！
希と圭太以外、みんなそう思ってると思うよ。だって、
今までだって何一つまともにやれてないんだから…。
頭のいい器用な子なら、できない事もないかもしれな
いけど、希は、バカだし、不器用だし、センスないしｗ
それにしても、あの膨大な資料の中に、開業資金や
必要経費についての資料がないってのが逆に凄い！
筋金入りの大ぼら吹き、夢見るだけのおバカさん…。
いやいやいや、知ってはいたけどさ、口だけなんだよ
ね～津村家の人たちは。お金で苦労してるはずなの
に、ちゃっかり人に寄生して生きてきたせいか、本当
には身についてないんだよね、金銭感覚も危機感も。
普通、最初にお金でしょ。お金の心配から入るでしょ。
こういう、自分で何とかする気ナッシングの人間って
いるよね…。あ～気持ち悪い。何もかも気持ち悪い。
塗師屋の女将も、パティシエもチョロイ仕事だったん
だね～。てか、どれもこれも何かやってたっけ？って
記憶しかないのだけれど。いつもバタバタ走り回って
ドヤ顔か、きつい目で怒鳴ってる姿しか浮かばない。
あと１か月半もあるのか…。深呼吸、深呼吸～ふぅ。
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