ごちそうさん(110)~図に乗るめ以子と闇屋と密告 | 日々のダダ漏れ

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ごちそうさん 第110回
「貧すればうどんす」
~図に乗るめ以子と闇屋と密告


ラジオ) 皇軍伝統の精神を、真骨頂にまで発揮した
     我が精鋭は、今や後方における、戦略的根
     拠の設定も完了し、所期の目的を達しました。
     ニューギニア島のブナ付近に挺進せる部隊
     は、1月下旬。ソロモン諸島、ガダルカナル島
     に作戦中の部隊は2月上旬…。


勢いよく始まった太平洋戦争でしたが…。

ラジオ) 極めて整斉確実に、ガダルカナル島より戦
     略的転進を完了しました。ソロモン群島、なら
     びに…


桜子) 転進…。
室井) 物は言いようだね。


日本は、勢力を盛り返した連合軍の前に、
敗戦に次ぐ敗戦。にもかかわらず、
戦果を偽り続け、
もはや後には引けない悪循環に陥りました。
そして…
国民生活もそれにつれて悪循環に。
食品、日用品、衣料品は、ほぼすべて、
配給制に移行し…
店頭で自由に買える物はほとんど無くなりました。

主婦たちは、今日は米。明日は野菜。
あさっては油、と日々様々な配給の列に、
2時間も3時間も、並ばねばならなくなりました。
それは、大変な時間と労力の負担で、
隣組単位での共同購入という形を、
とる人たちが増えました。持ち回りで並ぶのです。
そんな中、め以子は…


女性) あの人やで。のっぽの。
女性) あの人なんや!
女性) ごちそうさん!
女性) え~子供らにおやつあげはる人かいな。


このご時世に、
子供におやつを配る、ごちそうさんとして、
ちょっとばかり尊敬され、図に乗っておりました。


**********

伸世) ちょっと、このカブラ、葉っぱばっかりやがな。
多江) はあ? 目方は同じでっせ。
伸世) せやけど、こんなん不公平や。
    この人のカブラ、ころころしてはりますがな。
房子) 何を言うてんの。
    大根はあんたの方が太いやないよ。
伸世) 大根…。失礼な。
め以子) ほな、私のと換えます?
     葉っぱの方が、栄養あるともいいますし。
伸世) そうなん?
め以子) どうも、そうらしいですよ。
伸世) せやけど、腹の足しにはならんし。
め以子) ほな、どうぞ。
伸世) えっ、え…ええの? ホンマ? ごちそうさん。
め以子) ああ、ほな。私は、これで。
伸世) あっ…おおきに。
女性) さすがごちそうさんやなあ。
女性) 近所の子ぉにも、おやつやってんねやろ?
    今時分、ようやりはるよなあ。

**********

め以子) 何、あんたら?
子供) ごちそうさん、遅い!
子供) お腹空いて死にそうや!
め以子) おう、やかましな。おばちゃんにはおばちゃ
     んの生活があるんや。
子供) どうでもええから、今日何? ごちそうさん。
め以子) 何やろなあ?
子供) 早う!
子供) お腹空いた、ごちそうさん!
め以子) はいはいはい。何やろなあ?

**********

静) ああ~さぶ。さぶさぶ。
  今日、何? またかぶらかいな。
  この間もちゃうかった?
め以子) 配られるもんは選べませんからねえ。
活男) お母ちゃん、小池さん、来はった。
め以子) あっ、はいはい、はいはい。


(家中の戸を閉め…)

小池) そこまでせんでも。
め以子) 壁に耳あり障子に目ありですから。
     密告されるといけませんから。さっ、早う。


配給だけでは生活できなかった庶民は、
いろんな手だてを講じておりました。
家族の数を水増し申請して配給を受けたり、
農家などに買い出しに行ったり、
このように、闇屋を利用する者もおりました。
多かれ少なかれ、みんなやってる事でしたが、
不正には違いなく、警察への密告を恐れ、
お互い、ひた隠しにするのが、常でございました。

**********

川久保) また、お米の闇値が揚がったんですか?
め以子) 公定価格の6倍や。
     お砂糖なんて20倍やて。
川久保) 20倍…。
め以子) まあ、背ぇに腹は、代えられんからなあ。
川久保) 市場の人らに、直接言うて、都合してもらう
     とかでけへんのですか?
め以子) う~ん。私もお客の一人やし、向こうからし
     たら、キリがなくなる思たら、言いにくうて。
悠太郎) お金、大丈夫ですか?
め以子) まあ、なんとか、ギリギリやれてます。
泰介) ごめんな。4月から、高校の金…。
め以子) 何言うてんの。それよりふ久、あんたや、あ
     んた。あんた来年、師範学校卒業やろ。
     どうするつもりなん?
ふ久) 人に教えるん面倒くさい。
め以子) うちでゴロゴロしてたかて、勤労奉仕に駆り
     出されるだけやんか。希子ちゃん、ほれ、言う
     たって。
希子) あ…仕事するんも、向き不向きがありますし。
活男) ほな、わし中学やめよか?
め以子) 今は、コックの修行なんてどこ行ってもでけ
     へんて、何べん言うたら…。
活男) なあ、なんで、東京のおじいちゃんのとこ、
    行ったらあかんの?
め以子) 今は、あっちもそれどころじゃないねんて。
     馬介さんとこ手伝うんで我慢しといて。

**********

活男) 馬介さん。今日の、日替わりは?
馬介) ハァ…。
活男) なしか。
馬介) どないかせんとなあ。
室井) ただいま~。
桜子) お帰り。
活男) うわ、うまそう! これ、どないしたんですか?
室井) 時局物の軍国歌謡を作ってね。それで、少し
    もらえたんだけど。文女ちゃ~ん!
文女) うん? へえ~ええリンゴやんか。
馬介) そ…それ、出してええ?
室井) えっ?
馬介) いや、買うから。言い値で買うから。
室井) え~? でも、そんなにいっぱいないし。
桜子) いいですよ。出しちゃいましょうよ。
室井) えっ?
桜子) 食べられない時に、いろんな人に助けてもら
    ってきたでしょ? 食べさせてもらったでしょ?
室井) 別にここのお客さんには食べさせてもらった
    わけ…
(桜子にお盆で叩かれ) イテッ!
活男) 出せる。いう事でええんかな?
文女) ええと思うよ。


**********

みね) 里芋で作ったん? これ。
め以子) うん。配給の里芋と、残ってたおうどんで。
女性) う~ん、このもちもち感がええわ。
    これどうやって作るん?
め以子) ふかした里芋と、軟らか~く茹でたおうどん
     を、一緒に潰して混ぜたんです。
一同) へえ~。
女性) なあ、あれ誰?
女性) ああ~婦人会の本部の、偉い人違う?
女性) 松島さん。時々、婦人雑誌に出てはるよな。
一同) ああ~。
女性) 高山さん、大阪支部長狙ってはるからねえ。
一同) ああ~。

**********

多江) 天満支部では、近頃、金属の供出と、
    国債の購入に力を入れておりまして。
松島) 「ごちそうさん」、いう人は?
多江) えっ?
松島) 「ごちそうさん」いう人が、いはるんやろ?
多江) はい。ちょっと~。西門さ~ん。
め以子) あっ、はい。
多江) こちら、婦人会の副会長の松島さん。
め以子) 初めまして。
松島) そうなんや。あなたでしたか。
    お会いしたかったんよ~。

**********

活男) お母ちゃん、雑誌出るん?
め以子) 婦人会の、座談会載せるんやて。それで、
     「ごちそうさん」呼ばれてる人いう事で、料理
     の始末とか、献立の事とか話してくれへんか
     って。
希子) ええなあ。ちい姉ちゃんは。
め以子) うん?
希子) 「ごちそうさん」て、ええ生き方ですよね。
め以子) え?
希子) 身のまわりの人に、ご飯ふるまって、みんな
    が幸せになって。ホンマに、ええ生き方ですよ
    ね。どんな時代でも、それはもう、絶対にええ
    事やもん。
め以子) 希子ちゃん?
静) あんたかて、立派な仕事してるやんか。
め以子) そうや。あんな立派なお仕事、誰もができ
     る事とちゃうやんか。
希子) ええ。


**********

男性) 西門さん!
め以子) はい?
泰介) な…何ですか?
情報局役人) この家は、違法な闇物資を購入してる
        んとちゃうかという、通報があった。
        これより、立ち入り検査を行う。
め以子) あっ、ちょ…ちょっと、待って下さい。
     うちは何も…。
役人) 何や、この米は!
め以子) あ…配給米、です。
役人) 配給は玄米のはずやろ!
め以子) 自分らで、ついてるんです。みんな、お腹が
     弱くて、玄米だとくだしてしまって。お国のため
     に、働けなくなりますから!
役人) どけ!
め以子) な…何ですか? うちは、何も…。
役人) 米はどこや!
役人) おい! 蔵、開けろ。
め以子) えっ…。
役人) 蔵開けろ言うてるんや。
め以子) 米は…あそこです。
役人) どう見ても、配給米やないな。

当時、没収された物資は、公定価格で、
買い上げられる決まりとなっておりました。
つまり、大損。

静) あんた、いくらで買うたん?
活男) けど、通報て…。
希子) 誰に、やられたんでしょうねえ。
泰介) 単に目立ってもうたんとちゃう?
    子供におやつやったりして。
    そんな余裕あるのおかしいて思われたとか。
静) かもしれんなあ。
悠太郎) ただいま戻りました~。
川久保) ただいま戻りました~。
静) お帰り。
希子) お帰りなさい。
悠太郎) 何やあったんですか?
め以子) お父さん、地下室造って。
悠太郎) えっ?
め以子) 絶対見つからんような、地下室造って。

**********

闇夜のカラス…じゃなくて、闇屋で物買うめ以子の図。
魔法のように湧き出る食材への疑問は、これで解決!
まあ、それしかないでしょ、の予想通りの展開。とはい
え、ここまであからさまに、堂々と、何の躊躇もなく闇
の物資を手に入れる主人公っていうのは、今まで見た
ことがないかも。画期的だわ~(んなわけあるかー!)
泰介のいうとおり、あれだけ目立つ行動をして、目をつ
けられない方がおかしい。あの人おかしいよねって思
う方がまとも。め以子は、そんなこともわからないおバ
カさんな子というキャラに描かれているから仕方ない。

もう、好きで好きで困ってる…ヒロインを図に乗らせて、
落とすお話が…。ドSな脚本家の声が聞こえてきそう。

希子には「ごちそうさん」な生き方は羨ましいみたいな
言い方をさせているけど、そう思えないのは、め以子
のそれが、全くの自己満足でしかないように描かれて
きてるから。子供らにおやつをやるのはいい。でも、あ
つかましく図々しい子供らを叱るでもなく、躾をしてや
るでもなく、近所の犬猫にエサをあげるような感じでし
かないのが気持ち悪い。どう考えても、好き勝手に食
材を買ってきたせいで家計が厳しいとしか思えないの
に、息子たちには学費の心配やら、学校をやめようか
と言わせ、娘は師範まで行きながら、人に教えるのは
面倒くさいというのを叱るでもなく…。西門家の頂点に
君臨するめ以子の図というのが、本当に気持ち悪い。
あげくに、夫に地下室を造れと命令するめ以子さま…。
どうやら、昭和のカリスマ主婦を描くつもりらしいけど、
どうしたってオゾマシ主婦にしか見えないんだけど…。

もはや、「監視する」ために、観ているという声を見か
けるし、その声に、ああ~なるほどと、納得してしまう。
反戦を訴えているようで、何か、違和感が残る。気持
ち悪さを感じる正体は何なのか、見守らなければと…。


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