「なぞの転校生」 第3話~ショパンの「雨だれ」がない世界 | 日々のダダ漏れ

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「なぞの転校生」

なぞの転校生

第3話
ショパンの「雨だれ」がない世界


渡辺) 東日本大震災で東北は、大きな被害を被り、
    多くの犠牲者が出た。今も、避難所で暮らして
    いる方々が、数多くおられる。
被害を、あそこま
    で大きくしたのは、みんなも知ってるとおり、

    波だった。…と僕が今しゃべっているこの声も、
    空気を
伝わってキミらの鼓膜まで届く、振動の
    波だ。波。
波とは何だ? 何だと思う? 
    はい、春日愛。
愛) えっと…海でこう、バシャーンって。
渡辺) そのバシャーンって何だ? はい、転校生。
典夫) はい?
渡辺) 波とは何だ?
典夫) 波…。
渡辺) わからんか。
典夫) 物理学においては、波動という言い方が正確
    か
もしれません。何らかの物理量の周期的変
    化が、空間方向へ
と伝わる現象です。
渡辺) おお、詳しいなあ。後は何知ってる?
典夫) 波動には、振動数、周期、振幅、波長、波

    などの物理量が定義されます。音波や水面の
    波、あるいは
地震波のように、物質の振動が媒
    質を通して伝わる現象の
他に、電磁波のように、
    媒質がない空間を伝わるものもあります。
そも
    そも、宇宙そのものが波であり、渦のようにうね
    った時
空が、複雑な波動で、いくつもの平行世
    界を形成しています。
渡辺) ん? 最後の話は何だ?
典夫) 平行世界についてです。
渡辺) 平行世界?
典夫) ご存じないんですか?
    D-12世界はご存じですか?
渡辺) D-12世界?
典夫) …いえ、何でもないです。

**********

広一) なあ、さっきのD-12世界って何だよ。
典夫) 何でもない。先生をからかったフィクションさ。
    SF小説で読んだ話だ。
    世界はここだけじゃない。よく似た世界がレイヤ
    ー状に重なって幾つも存在し、
D-8とか、D-12と
    か、それぞれにナンバーがつけられている。
    まあ、そんな話さ。D-1世界の人類はある日、知
    的物質モノリスを発見し、
時限移動に成功する。
    そんな話さ。
広一) へぇ~。それ、何て小説?
典夫) 何だったかな。忘れてしまったよ。
広一) アーサー・C・クラークじゃない?
    「2001年 宇宙の旅」。
典夫) アーサー・C・クラークは物理学者だろ?
広一) 小説家だよ。
典夫) そうだっけ?
広一) そうだよ。
みどり) ムー君はSFおたくだから間違いない。
愛) SF研究会の部長だしね。
広一) 何かバカにしてない?
愛) してないよ。褒めてんじゃん。
典夫) そうか。
    アーサー・C・クラークは物理学者じゃないのか。
愛) 何かさ、変な人だよね。
健次郎) ストレートすぎるだろ、それは。

**********

寺岡) あちらの世界は、どうでしたか?
典夫) 僕の口からは何も言えないが、まぁ、ひどい世
    界だったよ。それに比べて、ここはとてもいい世
    界だ。
寺岡) こちらはこちらでおかしなところは、たくさんあり
    ますよ。政治家はバカなヤツらばかりですし、金
    の亡者がウロウロしている。汚い世界です。
典夫) それはD-8世界も…
    いや、どこの世界もそう変わらんな。
寺岡) そうですか。
    世界は違えど同じ人間ですからね。根底にある
    思考回路は、同じような、ものなんで
しょう。
典夫) そうだな。
寺岡) ところで、
    我々は何をお手伝いすればいいのでしょうか?
典夫) 王妃が、危険な状態にあるそうだ。
寺岡) ご病気でいらっしゃる?
典夫) ああ。それを助けなければならない。ガラテア
    のテロで負傷された。至急治療が必要だ。
    それと、DNAの損傷もひどい。
寺岡) 我々に出来ることなら、
    何なりとお申しつけ下さい。
典夫) あぁ、ありがとう。では、今すぐ、DRSのスペシャ
     リストを集めてほしい。
スペシャリストで医療チ
     ームを編成したい。
寺岡) DRS? DRSとは?
典夫) 知らないのか? DNAの書きかえ手術だ。
寺岡) DNAの書きかえ…。私自身、DNAの専門家で
    はないので、存じ上げないんですが。
    DNAをどのようにして書きかえるんでしょうか?
典夫) 人間には約60兆の細胞があるだろう? 原理的
    には、それを一つ一つ検証し、修復していくのだ
    が…。
まさか…ないのか?この世界には。
寺岡) あぁ…DNAの研究は盛んですが、生きた人間
    の60兆もある細胞を書きかえるなんて…。そん
    な技術は今までに
聞いたこともありません。
典夫) ない?…それは本当か?
寺岡) はい。残念ながら…。
    お役に立てず、申し訳ありません。
典夫) ならせめて、人工臓器を作る技術は?
    それぐらいならあるだろう?
寺岡) そんな技術もそちらの世界にはあるんですか?
典夫) しかしもう…何もないんだ。あちらには…。
    何ということだ…。こういう時、人は泣くんだろうな。

**********

典夫) なんだ…ただの紙飛行機か。
    マイクロリコンかと思った。
寺岡) マイクロリコン?
典夫) 超小型偵察爆撃機のことだ。ちょうどあんな形
    をしたものだった。王妃はそれで、わき腹に穴を
    開けられたのだ。


**********

典夫) 君はH・G・ウェルズが好きなのかい?
広一) 好きっていうか、彼はSFの父って呼ばれてるか
    らね。SF好きの初級編さ。
典夫) 彼は世界で最初に、
    平和憲法を考案した人物だ。
広一) よく知ってるね。日本国憲法は、彼の平和憲法
    をモデルにしてるって説がある。
典夫) 国際連盟も彼のアイディアだ。
広一) そうそう、詳しいね。
典夫) しかし、その反面、核兵器を最初に思いついた
    人物でもある。
広一) 「解放された世界」。彼はそういう世界になっ
    ほしくないから、それを書いたんだ。
典夫) だが、物理学者のレオ・シラードは、「解放され
    た世界」を読んで、実際に核兵器を作ってみよう
    と考えた。
それがマンハッタン計画に発展し、広
    島と長崎に原爆が
投下された。皮肉な話だが、
    そういう意味では、
H・G・ウェルズは核兵器の生
    みの親と呼べるかも
しれないな。
広一) でも、「解放された世界」に出てくる核兵器は、
    まだ誰も作ってない。H・G・ウェルズの考えた核
    爆弾は、一度爆
発したら爆発し続けるんだ。
    そう、まるで太陽のようにね。
それは知ってた?
典夫) そうなんだ。まだ誰も作ったことがないのか。
広一) そんなの作ったら大変だよ。地球が滅んじゃう。
典夫) だからH・G・ウェルズは、平和憲法を考えたん
    だ。世界から戦争がなくなれば、核兵器そのも
    のが
必要なくなる。それが唯一の手段だと考え
    た。
だが、世界はそうはならなかった。世界は常
    に、彼の考えた最悪のシナリオどおりに進んだ。
    そして…滅んだ。
広一) いや、まだ滅んじゃいないよ。
典夫) あ…そうだな。悪かった。君の部は面白そうだ。
広一) 入るか?
典夫) いや。けど、時々また遊びに来てもいいか?
広一) うん。ぜひ。
典夫) じゃあ、また来るよ。
広一) うん。
拓郎) 何者ですか? 部長。
広一) 転校生。
くみ) 何か、怪しい人ですね。
広一) ちょっと変わった奴なんだよ。
拓郎) 何か、エイリアンみたいですね。

**********

(ピアノを弾く典夫)

大谷) 何て曲?
    あっ…ごめんなさい。驚かしちゃった。
典夫) この曲、知らないんですか? そうか…
    ここにはショパンの「雨だれ」がないのか。
大谷) でも素敵な曲。


**********

みどり) 何て曲?
典夫) ショパンの「雨だれ」。
みどり) ショパンの「雨だれ」。モーツァルト?
典夫) いや、ショパン。
みどり) ショパン…ショパン…。
     知らない。でもいい曲ね。

**********

肺がないという典夫。どんな肉体構造になってるん
だろう? アーサー・C・クラークは物理学者で、紙飛
行機のような形の超小型偵察爆撃機があり、DNA
の書きかえ手術が行われる世界。そして…ショパン
が存在する世界。何より驚かされたのは、典夫がや
ってきた世界の事ではなく、広一とみどりの世界が、
ショパンの存在しない世界であり、パラレルワールド
の一つであった事。おお~!そうくるのか~と、ワク
ワクしてくる。当たり前に存在するものが、少しずつ
違って存在していたり、存在していなかったり。広一
の世界には、他にもないものがあって、私たちが知
らない歴史があるという事なんだよね。ドラマの世界
は、今自分が知っている世界だと信じきって観てい
たのが、ショパンのシーンで、一気に足元が揺らぐ
ような、目の前の空間が歪むような錯覚に襲われて。

そうか。そうなのかと。私が知らない世界なのか…。

きっと限りなく似ている世界なのだろうけれど、少し
ずつ違う世界は、過去も未来も少しずつ変わって
いる筈で、何がその違いとなったのだろうかと考え
てみたり。典夫の世界に、広一の世界に、私に似
た人物はいるのだろうかと想像してみるのも楽しい。
ショパンが存在しない世界ということは、「雨音はシ
ョパンの調べ」なんて曲も存在しないんだよね…w
ショパンが存在しない世界は、少しだけ、センチメン
タルが、ロマンが、足りないような…気がしてしまう。


ちなみにこちらが、ショパンの「雨だれ」 ↓
前奏曲 作品28の15「雨だれ」 ショパン



「なぞの転校生」関連ブログ↓
第1話~狂いだす僕らの日常
第2話~なんて美しいんだ、この世界は
第3話~ショパンの「雨だれ」がない世界
第4話~妹の夢と学校のヒエラルキー
第5話~アステロイドというバイオアプリ
第6話~モノリスのバグ、或いは・・・
第7話~アイデンティカと、敵の存在
第8話~痛快アスカ姫と王妃のオペ
第9話~きれいな雨とマルスの結晶
第10話~シャボン玉とアイデンティカ
第11話~王妃の死、アスカの秘密
第12話~アンドロイドが見た夢は・・・

●「なぞの転校生」HP


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