1回のみのつもりでしたが、
もうちょっとだけドビュッシーのペレアスとメリザンドの
分析をしてみたいと思います。

前回はこちら
IMSLPの楽譜や動画へのリンクもこちらです。


私も全部やったわけではありませんが、
ブログのネタに当分困らないくらいの量はありますので、
どなたかの参考になれば思いますので続けさせて頂きます。


14~15小節目(スコアマーク①のラスト)

前回の13小節目でKEY-Dmの♭Ⅵ6である
B♭コードに進み、
その後上画像の14小節目でB♭はドミナント化されて、
B♭7(#9,#11)というオルタードコードになります。


オケスコアに不慣れな方へのヒントになると思い、
スコアの各所にコードのR(根音)、3(第3音)、7(第7音)や
テンションの度数を数字で書き込んでいます。


コードを担当しているバソン、弦楽器を中心に音を見て、
コードを判定します。


ピアノに比べれば段数は増えますが、
ただそれだけのことで、
コードトーンやテンションからコードネームを判別し、
調判定やディグリー、コードスケールを取っていく作業は同じです。


B♭7のR・3・7のほかにコードパートでテンション#11thがあり、
さらに旋律を担当するオーボエのフレーズに
「ラ♭ーーシ♭ーレ♭シ♭」とレ♭の#11thがあります。


B♭7(#9,#11)のコードシンボルにおけるコードスケールはなんでしょうか?
作曲の基礎的な内容が分かっている方にとっては簡単ですが、
オルタードスケールかコンディミスケールですね。


第5音がない、#11th・#9thがあるという条件で、
当てはまるのはオルタードスケールが最有力候補です。
コンディミかもしれませんが、第5音の有無の判断材料が
スコア中に存在しないためどちらかという絶対的な判断は出来ません。


画像では第5音がない、#11th・#9thがあるという条件から
オルタードにしてありますが、コンディミでも良いと思います。


こういう風に特定出来ない場合は実際の作品では多々ありますが、
曲全体の音使い、前後の流れなどで判断すれば良く、
自分で応用するときも好きな方を選べばOKです。
無理に限定する必要はありません。



16~17小節目

スコアマーク②に切り替わりますが
バス音はシ♭が保属音されています。

しかしテンション構成が変わり、
2拍ごとにB♭7(♭9th)B♭7sus4(♭9th)が入れ替わります。

♭9thがある、第5音がある、sus4音があるということは
普通に考えればHMP5Bスケールです。


前後を無視してB♭7sus4(♭9th)の部分だけを切り取り、
B♭ドリアン♭2スケールやB♭フリジアンスケールと考えるのもありですが、
sus4の音と第3音が両方あるので、
オルタードドミナントsus4系と考えるのは適切ではないでしょう。


管弦楽法的には16小節目において
ピンクで囲ってあるクラリネットの旋律の重要な音だけを
オーボエが重ねており、
17小節目ではその役割が逆になっている点が興味深いです。


またオクターブ関係の32分音符のトレモロのような
2ndヴァイオリンとヴィオラの伴奏もモヤのような効果があって面白いです。


チェロによる低音伴奏も
HMP5Bスケールには第5音があるので、
先ほどと違い、5th→根音という動きになっています。

#11th→→根音という動きはトライトーンなので、
それが解決するのでなんとなく安定感が生まれています。


この部分から次の転調に入りますが、

B♭コードのままテンション構成が変わる
↓↓↓↓↓↓↓
スケールも変わる
↓↓↓↓↓↓↓
出身キーが変わってそれを転調の呼び水にする


というテクニックが用いられています。

この場合はB♭オルタード(Bメロディックマイナー出身)から
B♭HMP5B(E♭ハーモニックマイナー出身)と
出身キーが変わり、それを軸に転調しています。


こういう技法自体はロマン派音楽にもよく見られ、
丁度ブルックナーをある生徒さんのレッスンでやっているのですが、
似たようなテクニックが存在します。


表コードという言い方はありませんが、
ドミナントの裏コードと元々の形をすり替えて転調する作法は
現行の歌ものやBGMでも当たり前のように見られますが、
近代フランスの作曲家たちも好んでこの手法を大いに用いています。


この場合はB♭7はKEYーDmの♭Ⅵ7であり、
それをKEY-Amの♭Ⅱ、つまり裏コードと見立てて、
次の小節で転調していますが、続きはまた次回予定です。


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