特定の曲に焦点を当てて分析するのもありだとは思うのですが、
少し視点を変えての総括的な和声について
学生さんの参考になるような内容を考えてみたいと思います。


また日本では和声~理論と実習という本(いわゆる赤、黄、青本)で
学ばれる方が多いと思うのですが、
この辺も絡めて独断と偏見に基づき
とても基本的なことから取り扱ってみます。


まともにやっていくと膨大な量になりますので、
回を分けて、不定期でやっていく予定です。


○バロックと古典の書法について

よく古典和声という用語を本で見ますが、
古典和声とは具体的にはなんでしょう。


古典という言葉が入っていますので、
ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどの古典時代の作曲家の
使っている和声法というのが真っ先に連想されますが、
和声~理論と実習の冒頭では
「われわれはバッハ、モーツァルト、ベートーヴェン等によって代表される
古典的な西洋音楽の和声を学び~」

と述べられており、バッハも古典和声の中に入っているような印象を受けます。


事実古典和声の範疇でバッハの和声法は理解出来ますが、
言うまでも無く、バッハとモーツァルト、ベートーヴェンでは
全く書法が違い、同じ古典派のモーツァルトとベートーヴェンでも
全然違ったりします。


古典和声とはとてもあやふやな用語だと思いますが、
多くの場合バロック期から古典期において用いられる和声法を
総括していう用語として用いられることが多いと思います。


しかしバロックと古典では決定的な違いがいくつもあり、
和声~理論と実習では規則や禁則を淡々と述べているだけで
細かいことを一切省略しています。


何よりも決定的な違いはその書法です。


バロック時代と言ってもたくさんの作曲家がいますが、
とりわけバッハ(1685年~1750年)は声部書法において驚異的な対位法能力を
発揮しており、フーガやカノンなどはほとんど神業と言って良いくらい
あまりにも良く出来た作品がたくさんあります。







平均率1巻のEbメジャーキーのフーガ

ここで注目したい最大の特徴は声部書法がかなり明確で
一つ一つの声部の独立性が強い点です。


1声、1声が明確な仕事を持っており、
どれか一つがいなくなると音楽が破綻するという特性を持っています。


こういった音楽では連続音程などによって
声部の独立性が損なわれるのは良くないと言えます。


次に古典初期の代表格ともいうべきハイドンの初期の弦楽四重奏を見てみましょう。



弦楽四重奏曲第1番 変ロ長調『狩』


ハイドンの弦楽四重奏第1番というマイナーな作品ですが
バロック時代と古典時代の明確な作風の違いを感じ取ることが出来ます。


バッハのような緻密な声部書法は放棄されて、
楽譜を見るともっと単純な書法になっているのがわかります。


同じくハイドンです。声部書法がかなり弱い


声部書法はかなり軽んじられて、
特に内声は単にハーモニーの補強という感じで、とても貧弱です。


上の譜面の2小節目のヴィオラはチェロの3度上で
ハモっていますが、
テノール声部であるヴィオラがなくなっても別に音楽として破綻はしませんし、
ハイドンがバッハのような声部書法を軽んじているのがわかります。


第2ヴァイオリンはコードのアルペジオという感じで単純であり、
独立したアルト声部というよりは単なるアルペジオのようにも見えます。


どちらかというとコードを半小節ごとに変化させ、
カデンツによって音楽の進行力を得ようとしているように感じます。

こういった声部書法が軽んじられる様式では
連続音程などが出てきても、
そもそも独立した声部という概念が希薄なため、
バッハの作品のような声部書法の作品とでは
全然意味が異なってきます。


バッハのような対位法を前面に押し出した緻密な声部書法を
良しとする人からみれば
この弦楽四重奏は未熟な習作に見えるでしょう。



逆に当時流行だったこういった単純なホモフォニー的な音楽を
良しとするならばバッハのような作品は時代遅れの古い作風に見えると思います。



技術的にはバッハのほうが高度ですが、
ハイドンが未熟というよりは
時代の流行が移り変わっていったことに注目すべきです。


現代のメロディー1つ+和音のポップスなどがそうであるように
聴衆がより単純なわかりやすい音楽を求めるようになった結果でしょうか。



この曲が書かれたのはバッハが死んだ1750年の
12年後の1762年ですが、
当時の様式を理解するのに適切な曲だと思います。


モーツァルトもベートーヴェンも晩年は対位法に大きな関心を持ちますが、
若い時はこんな感じの曲をたくさん書いているのは
言うまでもありません。


よく伝記などで「バッハは存命当時、晩年は既に時代遅れな作曲家と見做されていた」
云々という文章を見ますが、
これは時代の流行が複雑な声部書法から
もっとわかりやすい単純なものへ時代が移り変わっていったということを意味しています。



またハーモニーに関しても
複雑精妙・微妙なものから単純なものへと変わってきます。

バッハ 平均率第1巻1番のフーガ


上のバッハのフーガではレソ#ラドが同時に鳴っています。
コードを付けるならE7ですが、ラはアボイドであり
経過音ということになるものの瞬間的にソ#とぶつかっています。


こういう例は枚挙に暇がなく非和声音で処理も出来ますが、
もっと複雑な和音の例を見てみましょう。


平均率18番のフーガ


18番のフーガでは下から異名同音でドレレ#シという和音が登場します。
もちろん旋律の動きの中で生まれるもので、
フーガの主唱、対唱などの声部書法の関係でこうなることが多いですが
和音がかなり複雑です。

上にコードネームを付けて分析してみましょう。



対してハイドンの弦楽四重奏はどうでしょうか?


和音が極めて単純であり、バッハに見られるような
複雑精妙・微妙な響きは少なくともこの部分には見られません。


声部書法を捨てて、和声も単純になり、わかりやすい音楽になっています。


このハイドンの弦楽四重奏は声部書法というにはあまりにも貧弱であり、
一応ソプラノ、アルト、テノール、バスと分類は可能ですが、
各自が独立した声部で、その声部だけしか出来ない仕事を受け持っている
という風に考えることは出来ません。


ハーモニーの単純さと合わせて
ここだけ見ても、バロック時代と古典時代で
まるきり音楽の様式が違うことがわかります。


しかし複雑な声部書法を捨てた代わりに、
古典派の音楽は単純さを旨にした
高速なテンポでの演奏が可能になり、
加えて演奏人数規模の拡大も出来るようになりました。


ほかにもバッハの時代には見られなかった和音が
古典に見られるようになったり、
カデンツの進行に違いがあったり、
色々な差違があります。



受験を除けば和声とは教科書で学ぶものではなく、
作曲で必要になる和声は
実際の作品から学ぶものであると思うので、
この辺りのことを考えつつ、
続きはまた次回以降に書かせて頂きます。



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バッハの「チェンバロ組曲第1番」を軽くアナリーゼしてみたいと思います。



チェンバロ協奏曲 第1番 ニ短調 BWV.1052


IMSLPはこちら


バッハの作品の中で知名度の高い作品の一つであり、
バロック期の短調の和声法、協奏曲のスタイルや形式などを
知るための一つのサンプルとして見てみましょう。


今回もいつ作られたとか、エピソード云々は横に置いておき、
純粋に音楽だけを考えてみます。


焦点はバロック期の短調の和声法への理解、
バッハの和声的対位法ともいうべき技法、
現代のBGM制作でバロック期の室内楽を作れるようになるための
ヒントなどを得ることです。


ブログ内の僅かな記事のみでそれらを習得するのは
到底無理ですが、どなたかの一助になれば幸いです。


1~4小節目


冒頭は全員ユニゾンで開始されます。
バッハの旋律は単旋律であっても和声を連想させる形になっている場合が多く、
一応コードネームを付けてみました。

もっと細かく取ることも可能ですが、単旋律なので大雑把に
ⅠーⅤという風に解釈しています。


5~8小節目

毎度のことですが、
上にコードネームを下にディグリー(あるいは和声の記号など)を書いていきます。


6小節目にカデンツっぽい動きがあり、
単旋律ではありますが、
明らかにDGmADmEADm
という副属7を伴うカデンツの動きがあります。


もしこの単旋律に和音付けるとしたら、
バロックの流儀ではこれ以外はないでしょう。


5小節目の2拍目まではドミナントコードで
メロディックマイナーの動きをしていますが、
3拍目から「ラシ♭ドードレミ♭ー」という風に
ドがナチュラルになり、ミが♭しています。


これは次のDに対するⅡーⅤのⅡであり、
ⅣmであるGmコードを仮のⅠと見立てた、
ⅡーⅤです。

単旋律ですが、もしコードネームを付けるならAm7-5で、
コードスケールはロクリアンになります。

KEY-GmのⅡm7-5→Ⅴ7→Ⅰmである
Am7-5D7Gmですね。


単旋律なのでD7の7thは楽譜にはありませんが、
バッハの頭の中ではこういう和声の動きです。

そのあとGmADm(Ⅳm→Ⅴ→Ⅰm)、
EADm(Ⅱ→Ⅴ→Ⅰm)と2回S→D→Tの動きを繰り返して、
チェンバロが主役の部分が始まります。


6小節目からは主音の上でⅠm→Ⅴを繰り返す
典型的なバロック、古典に見られる様式です。


9~12小節目


9~12小節目も主音のペダル上でのⅠmとⅤの繰り返しで
特筆すべき点はありません。


あえて言うのであれば、
ナチュラルマイナー、ハーモニックマイナー、メロディックマイナーの
3種類のマイナースケールをバッハがどう使い分けているかです。

よく教科書などには上行はメロディックマイナー、
下行はナチュラルマイナーなどと書かれていますが、
バッハはケースバイケースで
下行ではナチュラルマイナーとメロディックマイナーを使い分けています。


下行のメロディックマイナーは
あくまでⅤ7という大きな和声の中での
スケールの動きでそうする
という意味であって、
1音ずつコードが変わっていく時に
メロディックマイナーの下行を使うのは極めて例外的です。


バッハのCD全集は155枚組もあり、
バッハの曲をすべて聞いて分析したわけではないので、
もしかしたら例外があるかもしれませんが、
これはバロック期における一つの慣例として考えましょう。


下行のメロディックマイナースケールに
一つ一つ別の和声付けを行った多彩な技法が一般的になるには
後期ロマン派まで待たねばなりません。


逆に上行では2度上行するならばナチュラルマイナーが使われることは
極めて稀であり、ほとんどの場合導音を伴ったメロディックマイナー、
あるいはワザと増2度を出したハーモニックマイナーなどになります。


それでも探せば上行でナチュラルマイナーが用いられている例が
極々稀にありますが、これは本当に例外中の例外と考えるべきでしょう。


和声付けは主にⅠmかⅤ7においてですが、
バッハのどのスコアを見ても上行では導音を伴っており、
これはバッハのみに言えることではなくて、
同時代の作曲家全員の共通と言えます。



ここまで僅か12小節しか見ていませんが、
このようにバッハの時代の和声法は
単純にコードネームを付けてディグリーで解釈するだけなら
甚だ簡単であり、ポピュラーや和声の勉強を
ある程度行った現代人から見れば
コードネームやディグリーを付けるまでもなく、
ほとんど見ただけでわかるほど簡単なものが多いです。


基本的に和声の基本はドミナントモーション、並びに4度進行であり、
正規の解決をしないドミナントモーションはほとんど登場しません。


単純に「和声だけ」を見るのであれば極めて簡単なのが
バッハの時代の和声法の特徴です。


むしろバッハの分析において大切なのは
「バッハ個人の技法」と「バロック時代の様々な様式」、
そして「対位法の技術」への理解です。


例えばバロック時代のメロディーについて考えてみますと
現代人がこのチェンバロソナタのメロディーを聞いて
おそらく多くの人が単純な作られ方だと感じると思いますが、
バッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディーなどバロック期の大家たちの
短調における旋律の使い方は全くその通りで
どれも似たり寄ったりの主題ばかりです。


和声付けやスケールの使用法が限定されていた時代だったため
仕方のないことではありますが、
これは当時旋律の独創性がまだ求められていない時代であった
ということを意味しており、
バッハの様式を学ぶには旋律の作られ方も同様に分析する必要があります。


長調と短調それぞれの和声進行、
旋律の作られ方、形式、リズム、
対位法的な要素、主題展開の技法、転調の領域と方法、etc…
それらを見ていくことによって徐々にバロック時代の
特徴が掴めてきます。


アナリーゼが出来たら自分で真似て作ってみるのもとても大切です。

正しく特徴を掴めているのであれば、
物真似と同じで、真似が出来るはずですので、
作曲志望の方は挑戦してみると良いかもしれません。


その過程で疑問がたくさん出てくると思いますので、
それらのケースバイケースの疑問の答えを、
再度バッハらの譜面に求めることによって、
より当時のやり方が見えてきます。

そういった練習を繰りかえているうちに段々と掴めるようになってくるはずです。

また機会があれば続きか、別の曲を取り上げてみたいと思います。

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前回の記事はこちらです。
IMSLPの楽譜や動画へのリンクは第1回です。
まとめリストはこちらです。

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18小節目から見ていきましょう。


まず18、19小節目は前の小節のB♭7
Ⅴ7の裏である♭Ⅱ7となり、
Am7にドミナントモーションしてきます。


オーボエ→クラリネット→再びオーボエを受け継がれてきた旋律は
少し上に移旋されてフルートが最後に受け継ぎます。


「ミーードーミドラーシラファ#ーラー」とフレーズを奏でて、
バソンやホルンが冒頭の動機のリズムで伴奏をしています。

フルートの旋律はどんどん音程が下がっていくものの、
全く同じリズムですね。
典型的なドビュッシーの作法です。


コード部分にAm6(D/A)とも取れると書いてありますが、
最初の2拍はバスがラ、
2ndヴァイオリンとヴィオラはラドミ、
ホルンがミーファ#-、
フルートがミーードーミドと動いており、
これだけを全部鑑みればAm6ですが、
チェロのレラという動きはレを11thと取るか、
あるいはDを根音と取ってD/Aと取るか悩ましい部分です。


D/Aと取るならば正確なコードネームは
D7(9)/Aとなります。
(どっちとっても理屈の上では正しいです)


ポピュラーやジャズではテンションは上の方にくるという風に
初心者向けの本には書いてあることが多いので、
11thがチェロの低い部分で出てくるとD/Aのように見えるかもしれませんが、
昨今のバークリーの教授が出版するようなATN系の書籍では
テンションは内部に埋まっている例はたくさんあり、
最新のジャズ音楽でも中に埋まっているテンションボイシングはたくさんあります。


ドビュッシーは既に牧神の時代から
かなり和声の内部の下にテンションを持ってくるボイシングを好んでおり、
「11thがこんなに下にあるのにAm6と取るのは苦しくないか?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
それは「テンションが和声の上部にあるはず」という
考えから来るものだと思いますので、
私としてはほかのドビュッシーの作品群と見比べても
Am6(11)と取りたいです。

もちろんD7(9)/Aでも正解です。


3拍目からもあやふやな感じではありますが、
フルートの旋律の動きや1stヴァイオリンのレの音などを考えると
ここから完全にD7(9)/Aのように聞こえます。


ひょっとしたらドビュッシーはわざとボヤかしているのかもしれませんが、
疑義を挟むあやふやな音使いであり、
それがドビュッシーらしさ、つまり古典和声の機能・解決などを
ガン無視した和声法なので、
無理に古典和声に当てはめずにドビュッシーなりの和声法として受け入れるべきです。


楽譜にはコードスケールをメロディックマイナーと書きましたが、
18、19小節目で実際に使われている音は
「ラシドレミファ#」の6音のみであり、
ド#が出てこないため、
むしろドリアンスケールっぽく私の耳には聞こえてきます。


ソならドリアンスケール、ソ#ならメロディックマイナーですが、
敢えてこの音を避けることで
旋法(ドリアン)っぽい響きをドビュッシーが狙っているのは明白です。



20小節目からはカデンツっぽい動きになり、
トゥッティーっぽい(トゥッティーではないですが)感じで
やや盛り上がります。


コード表記はスラッシュ表記と正体表記と2つ書きました。

Am7Dm/GEm/FF/EDmEm/ACDmEm/ACという
スラッシュ表記は全体が弾いている音を
和音とバスを分離して表記したもので、
ポピュラーでよく見られる表記です。

いわゆる並行和音であり、
連続5度の連続となります。

ドビュッシーの分析でいまさら古典和声云々を述べるのは
やや的外れな気もしますが、
いわゆる古典和声の安定(トニック)、不安定(ドミナント)の原則が
無視されているのがドビュッシーのハーモニーの世界であり、
そもそも古典和声の音世界が無視されているので、
当然古典和声の規則も無視されています。



こういった並行和音やそのスラッシュコードの使い方は
現代の歌もののヒットソングで登場するような
そのままの使い方です。


スラッシュ表記を書いた理由は実際にドビュッシーがこういう風に
オーケストレーションしているからですが、
分析としては正体を書くべきですので、
Am7G7sus4(9)FM7(9)E7sus4(♭9)DmAm7(9)CDmAm7(9)C
と書くべきでしょう。

元のコードがなんだかわからないスラッシュは
演奏者さんには親切ですが、
分析するときには不適切です。


例えばE/Fというコードがあった場合、
これは鍵盤奏者にはとても親切な表記で、
右手でミソ#シ、左手でファを弾けばOKです。

ではFルートで見るとなんというコード表記になり、
自分で応用するときに
コードスケールはどうなるでしょうか?

ミがありますのでFM7なのは確定となり、
シは#11thですが、
ソ#は何でしょうか?

音程だけを見るなら#9thとなり、
E/FというコードはFM7(#9,#11)という表記になります。

普通、作曲家の頭にあるのは
E/FではなくFM7(#9,#11)であり、
コードスケールはリディアン#2と考えて使うのが一般的です。

ディグリーもちゃんと根音を明確にしたほうが
分析のときに把握しやすいです。


このように分析時は正体の方を常に書いたほうが
自分にとって楽が出来るのでお勧めです。


このような手法はドビュッシーにも多く見られる音使いですが、
常に正体を見破れるようになりましょう。


肝心のスコアですが、テンションが複雑であるものの、
Ⅰm7♭Ⅶ♭ⅥⅣmⅠm7♭ⅢⅣmⅠm7♭Ⅲ
ディグリーに直すととてもシンプルで、
Ⅰm7♭Ⅶ♭ⅥⅣmⅠm7→みたいな進行は
普通に現代の歌ものにもたくさん存在しますね。


オケスコアだと上手く音が把握出来ないという方も
いらっしゃると思うのでピアノに直してみました。


20~22小節目のピアノリダクション


オクターブ重複などを除いて、極限までシンプルに
骨格だけを抜き出しています。

是非ピアノで弾いてみて下さい。


そして出来るならこのピアノリダクションされた和声の骨格と
オーケストラスコアを見比べて、
どのように拡大配分され、
どの声部がどの楽器に割り当てられているのかを見てみましょう。


右手だけを見るならば(左手を無視して)、
DmDmEmDm/FEmCという基本形
の並行を主体とした和声付けです。


リズムは冒頭の主題のリズムなのである種の展開・変奏とも取れますね。


右手だけで見ないで左手のバスありきで見ると、
コードはほとんどポップスのスラッシュコードのようになります。


Am7→Cという進行が平行調であるKEY-Cの解決のようにも聞こえます。

これは古典的なドミナントモーションを意図的に避けている
近代フランスに多い終止のバリエーションの一つです。


KEY-Cで見れば一応第7音である(導音ではない)シが登場していますが、
Am→Cという進行はトニックの代理和音から真正のトニックへ向かう進行であり、
ふんわりした終止感が得られています。


こういった古典的なドミナント→トニックというありきたりな終止を避けるために
近代フランスの作曲家がどういった努力をしてきたのかは
フォーレあたりから下って見てみると色々なバリエーションがあって面白いです。


フォーレの作品はその時代の色々な技法の折衷案をとっているように
私には聞こえますが、ある意味、フォーレは玉虫色でありつつも、
それまでのロマン的な音楽とドビュッシーやラヴェルなどへの
過渡期と言える響きがたくさんあるので、
ドビュッシーやラヴェルとその前の世代であるフォーレの関係を見てみるのも
勉強になります。



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1回のみのつもりでしたが、
もうちょっとだけドビュッシーのペレアスとメリザンドの
分析をしてみたいと思います。

前回はこちら
IMSLPの楽譜や動画へのリンクもこちらです。


私も全部やったわけではありませんが、
ブログのネタに当分困らないくらいの量はありますので、
どなたかの参考になれば思いますので続けさせて頂きます。


14~15小節目(スコアマーク①のラスト)

前回の13小節目でKEY-Dmの♭Ⅵ6である
B♭コードに進み、
その後上画像の14小節目でB♭はドミナント化されて、
B♭7(#9,#11)というオルタードコードになります。


オケスコアに不慣れな方へのヒントになると思い、
スコアの各所にコードのR(根音)、3(第3音)、7(第7音)や
テンションの度数を数字で書き込んでいます。


コードを担当しているバソン、弦楽器を中心に音を見て、
コードを判定します。


ピアノに比べれば段数は増えますが、
ただそれだけのことで、
コードトーンやテンションからコードネームを判別し、
調判定やディグリー、コードスケールを取っていく作業は同じです。


B♭7のR・3・7のほかにコードパートでテンション#11thがあり、
さらに旋律を担当するオーボエのフレーズに
「ラ♭ーーシ♭ーレ♭シ♭」とレ♭の#11thがあります。


B♭7(#9,#11)のコードシンボルにおけるコードスケールはなんでしょうか?
作曲の基礎的な内容が分かっている方にとっては簡単ですが、
オルタードスケールかコンディミスケールですね。


第5音がない、#11th・#9thがあるという条件で、
当てはまるのはオルタードスケールが最有力候補です。
コンディミかもしれませんが、第5音の有無の判断材料が
スコア中に存在しないためどちらかという絶対的な判断は出来ません。


画像では第5音がない、#11th・#9thがあるという条件から
オルタードにしてありますが、コンディミでも良いと思います。


こういう風に特定出来ない場合は実際の作品では多々ありますが、
曲全体の音使い、前後の流れなどで判断すれば良く、
自分で応用するときも好きな方を選べばOKです。
無理に限定する必要はありません。



16~17小節目

スコアマーク②に切り替わりますが
バス音はシ♭が保属音されています。

しかしテンション構成が変わり、
2拍ごとにB♭7(♭9th)B♭7sus4(♭9th)が入れ替わります。

♭9thがある、第5音がある、sus4音があるということは
普通に考えればHMP5Bスケールです。


前後を無視してB♭7sus4(♭9th)の部分だけを切り取り、
B♭ドリアン♭2スケールやB♭フリジアンスケールと考えるのもありですが、
sus4の音と第3音が両方あるので、
オルタードドミナントsus4系と考えるのは適切ではないでしょう。


管弦楽法的には16小節目において
ピンクで囲ってあるクラリネットの旋律の重要な音だけを
オーボエが重ねており、
17小節目ではその役割が逆になっている点が興味深いです。


またオクターブ関係の32分音符のトレモロのような
2ndヴァイオリンとヴィオラの伴奏もモヤのような効果があって面白いです。


チェロによる低音伴奏も
HMP5Bスケールには第5音があるので、
先ほどと違い、5th→根音という動きになっています。

#11th→→根音という動きはトライトーンなので、
それが解決するのでなんとなく安定感が生まれています。


この部分から次の転調に入りますが、

B♭コードのままテンション構成が変わる
↓↓↓↓↓↓↓
スケールも変わる
↓↓↓↓↓↓↓
出身キーが変わってそれを転調の呼び水にする


というテクニックが用いられています。

この場合はB♭オルタード(Bメロディックマイナー出身)から
B♭HMP5B(E♭ハーモニックマイナー出身)と
出身キーが変わり、それを軸に転調しています。


こういう技法自体はロマン派音楽にもよく見られ、
丁度ブルックナーをある生徒さんのレッスンでやっているのですが、
似たようなテクニックが存在します。


表コードという言い方はありませんが、
ドミナントの裏コードと元々の形をすり替えて転調する作法は
現行の歌ものやBGMでも当たり前のように見られますが、
近代フランスの作曲家たちも好んでこの手法を大いに用いています。


この場合はB♭7はKEYーDmの♭Ⅵ7であり、
それをKEY-Amの♭Ⅱ、つまり裏コードと見立てて、
次の小節で転調していますが、続きはまた次回予定です。


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近代音楽の祖として評価の高いドビュッシーですが、
彼の中の最高傑作の一つに数えられる
ペレアスとメリザンドをの冒頭を分析してみたいと思います。
(全部やるのはアメブロという制約の中と長さ的に不可能なので…)


記事は僅かですが、ドビュッシーの和声法に興味がある方、
あるいはオーケストラを書きたいと思っている方の
参考になれば幸いです。



Claudio Abbado "Pelléas et Mélisande" Debussy


IMSLPはこちらです。


仕事の合間の疲れた時に寝転がりながらパラパラと見ているのですが、
ドビュッシーの作品の中では編成規模が大きく(3管編成)、
日本でのオペラの不人気やちょっと長い(約2時間半)のも理由なのか、
ポケットスコアも出ておらず、
演奏会で抜粋で取り上げられることもほとんどなく
知名度そのものは曲の素晴らしさに反比例して低いです。



オケスコアは横長のモニターでは見にくいので
紙の楽譜を買うのもありです。
ドーバー社のが最安だと思います。


ドビュッシーが自分自身の技法を確立した当初の作品、
つまり弦楽四重奏 ト短調牧神の午後への前奏曲よりも
ちょっと後の時期で分類としては中期に位置し、
かなり「ドビュッシーらしさ」が現れているのがポイントです。


既にそれより前の作品にいわゆる印象主義的な語法は
ポツポツと見られますが、
世間的な評価が確立し、以後の彼の作風の中心となる和声語法が
明確に、全面に押し出されるようになったのはこの頃からです。



1~7小節目


チェロで提示される低音の主題と
木管楽器で提示される主題は
この曲の後で何度も展開されるテーマです。


ますチェロがオクターブで旋律を奏でていますが、
これは普通にKEY-Dmで特に難しい部分はありません。


敢えて何か言うのであれば弦楽器が弱音器を付けて
音色が少しくぐもった音になっている点と
チェロとコンバスに対して3本のバソンがどのように重ねられているか?です。


チェロとコンバスを補強するような動きですが、
完全にユニゾンするでのではなく断片的であり、
且つチェロにもコンバスにもない音を吹いていたりもします。


こういった重ね方は管弦楽法の一例として
覚えておくと良いかもしれません。


4小節目からコードがA♭(#11)、E(#11)と書かれていますが、
あまりコードネームに意味は無く、
この部分はホールトーンスケールです。


オーボエ、コールアングレ、クラリネットが主体で
リズムがが中々面白いです。


3管編成でトランペットが2本、トロンボーンが3本、
ホルンが4本でチューバもいます。

ドビュッシーのオーケストラの中ではかなり規模の大きい作品です。


コールアングレはイギリスとも、
英語とも何の関係もないのに
誤解からイングリッシュホルンとも呼ばれているオーボエの管長を1.5倍にした
なかなか渋い音色の楽器で、楽譜は完全5度下で読みます。

お馴染みのクラリネットはB管なので2度下ですね。


「移調楽器が読めねー」という方のために
大譜表に直してみました。


5、6小節目を大譜表に直したもの


ヴィオラ、コンバス、ティンパニ(クラリネット2も)のペダル上で
レーミーレミレミレーレミーレミレという
リズムを付けたトリルみたいなフレーズですが、
使っている音は前述の通りすべてホールトーンであり、
トップの音がレの時とミの時でそれぞれ
ボイシングは固定されています。


大譜表を見ればレの時はC-5(9)コード、
ミの時はB♭7-5コードであることがわかります。
これのボイシングをそれぞれの楽器に割り振っています。
この2小節をピアノでゆっくり弾いてみましょう。


ホールトーンスケールは調性音楽のように
基本的なボイシングパターンがあるわけではありませんが、
「どう使うの?」という方は既存の曲の使い方を
研究してみるとその作曲家なりのパターンや考え、
そしてそれによって得られる効果がわかるので
一つの勉強方法としてお勧めです。


管弦楽法としてはピアニッシモによるティンパニのロールが
不気味な感じを醸し出していて雰囲気が出ていますね。
ありきたりと言えばそうかもしれませんが、
なかなか効果的な手法です。


8~13小節目


8小節目からもう1回それぞれのテーマが奏でられますが、
変奏と管弦楽法の達人であるドビュッシーが
そのままリピートするはずもなく、
弦楽器はコンバスが消えてヴィオラが入り、
さらに和声も変わっています。


1回目は1小節ごとにDm→Cでしたが、
2回目は旋律はそのままで半小節ごとにコードが変わり
Dm→F→Am7→Fという和声になります。


バソンはヴィオラとユニゾンしていますが、
バス声部がなくなって旋律だけになったと考えても良いかもしれません。


12小節目からは有名なペレアス和声という名前が付いている
ドビュッシーの個性的な部分ですが、
これを私は単なるハーモニックマイナーとして片付けています。

以前のペアレス和声の記事はこちら

コードスケールでいうとリディアン#2スケールであり、
ペアレントはKEY-Dmです。


ハーモニックマイナーを使った曲はたくさんありますので、
ペアレス和声などと呼ばずに、
普通にハーモニックマイナーとして処理した方が
用語も増えず、混乱も帰さないためお勧めです。


8小節目からのフレーズはKEY-Dmですので
12小節目からもそのままKEY-Dmと考えるべきでしょう。


音使いからも単なるハーモニックマイナーであることは明白です。
こういった音使いは牧神あたりから既にドビュッシーの作品に登場しており、
大いに参考にしたい部分でもあります。


ハーモニックマイナーについては残念ながら詳しく述べている
和訳された理論書は少ないのですが、
私の作曲本で一応ハーモニックマイナーについて一通り触れています。


和声的には単なるハーモニックマイナーですが、
管弦楽法的には1回目と割り当てが大きく異なっています。
オーボエが消えて、代わりにフルートが登場し、
バソンも大いに旋律に加わっています。


これも移調楽器に加えてバソンがテノール記号になっているので
大譜表にしてみました。

ピアノで弾いてみて、
前回との違いを感じ取ってみましょう。

12~13小節目を大譜表に直したもの


B♭のペダルの上でのソーラーソラソラー→という
トリルみたいな2音だけのフレーズは
トップがソの時はB♭6コード、ラの時はAコードの
ボイシングがなされており、
手法としては1回目と基本的には同じです。

ドビュッシーがドを#で書いていることからも
Dハーモニックマイナー出身であることがよくわかります。


1回目はホールトーン、2回目はハーモニックマイナーで、
旋律としては移調されただけで全く同じでも
和声的には色彩感溢れる微妙さがあり、
楽器の割り当てによる音色効果も如何にもフランス音楽という感じです。


ペレアスとメリザンドに限った話ではありませんが、
こういった色彩的な変奏はドビュッシーの最も得意とするところであり、
あらゆる曲であらゆる形で登場します。



ドビュッシーが生きた時代は調性崩壊直前の時代であり、
多くの作曲家が如何にして従来の音楽手法から脱却するかを
模索した時期でもありました。


もちろん保守派もいましたし、
シェーンベルクのようなモロに無調な革新派もいましたが、
ドビュッシーはあくまで調性音楽や古典を拡大解釈して
独自の技法を生み出しています。


メロディックマイナーの和声活用はフランクやフォーレにも
大いに見られますので、
ドビュッシーのオリジナルとは言えませんが、
ペアレス和声などと呼ばれる
ハーモニックマイナーの積極的な和声活用は
おそらく歴史上ドビュッシーが最初なのではないかと思います。


単に音階としてのみ出てくるなら
それこそバッハやモーツァルトの作品にも
メロディックマイナーやハーモニックマイナーは山ほど登場しますが、
音階として上がり下がりするだけでなく、
明確な出身キーを持った上で和声に組み込み、
しかも美しく活用することで従来の長調・短調を
拡張・脱却する技法の一つとして
ドビュッシーが活用しているのがポイントでしょうか。


この辺りはドビュッシーのスコアを見ていれば
自然と分かってきますが、
13歳年下のラヴェルもまた違ったアプローチで作品を書いており、
ドビュッシーやラヴェルの先生・先輩に相当する
フォーレ、フランク、サンサーンスなどの作品も
合わせて、一連の歴史的な流れの中で見ると
近代フランス音楽の進歩の歴史が見えてきて面白いです。


あるいは後の世代のフランス6人組
(ミヨー、オネゲル、プーランクあたり)や
さらに後のメシアンなんかも見てみると勉強になります。


全部やるのは大変なのでチラチラっと見るだけでも
かなり勉強になるはずです。


ペレアスとメリザンドの分析、
というよりオケスコアの分析は大変なので、
続きは気が向いたらやらせて頂きます。


ピアノソロ曲だと楽そうですし、A4で1枚か2枚くらいなら
完結も出来そうですので、
やるならその方向が良いのかなとも思いました。


ペレアスとメリザンドはドビュッシーの中でも
名曲中の名曲ですので、
面白そうだなぁ感じられた方は是非自分自身でも
進めてみて下さい。
ドビュッシーの理解の一助になるはずです。


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(初心者向けの作曲導入本です)



前回の続きです。


9~13小節目

リピートマークの後の第2部はFコードから始まります。
C7Fにドミナントモーションしてきますが、
このFコードがピボットコードとなってKEY-Gmへ転調しています。


FコードはKEY-FのⅠであり、KEY-GmのⅦという一人二役で
和声でいうところの定調的転調にあたります。


Cm7D7Gm …と続いていきますが、
Ⅳ7 → Ⅴ7 → Ⅰと基本通りで
調判定さえ出来れば特に難しい部分はありません。


この調判定というのがなかなか難しく、
ファ・ラ・ドでメジャーのように
コードネームがわかっても調が判別出来ず、
なぜそこでそのコードが出てくるのがわからない場合が
初学者の方に多いです。


調がわからないとディグリーもわからず、コードスケールもわからず、
進行の意味もわからないので
調判定を常に矛盾なく正確に判断出来るようにする必要があります。


KEY-Gmに転調しているものの、
和声のお手本通りのシンプルな進行です。


主題のドーファーミラファドミ♭ミ♭ーの最後がミ♭に変わり、
主題がそのまま違うキーで変奏されたような展開がなされています。


13小節目でB♭コードに進んで再び異なる形で主題が始まっていますが、
この部分からさらに転調で
B♭はKEY-GmにおけるⅢであり、
同時に次のKEY-DmのⅥの和音でピボットになっています。


やはり定調的転調になっています。


またここまでで登場するドミナントモーションはすべて正規の
根音4度上行のみであるのもポイントです。


14~18小節目


13小節目からB♭GmA7という風に進みますが、
ここで始めて偽終止が出てきます。

KEY-DmのⅤ7であるA7からB♭へ進む短調の偽終止で、
その後ももう1度偽終止が出てきています。
これは今までにない新しい変化です。


しかし和声進行としてはⅡ→Ⅰ2→Ⅴ→Ⅰや
Ⅳ→Ⅴ→Ⅵなど単純なものばかりで、
特に難しい部分はありません。


16小節目のリタルダンドがいわば展開部の終わりになるわけですが、
ここで元調のドミナントコードであるC7が登場して、
元のキーにドミナントモーションで回帰します。


ここまでの9小節目~16小節目までは
主題展開が行われており、
最初の8小節で提示されるKEY-Fの主題が
下属調の平行調であるKEY-Gmと
平行短調であるKEY-Dmで異なる調と和声進行で
変奏されていることがわかります。


中間部で主題を展開・変奏しつつ、調的に主調から離れて広がりを出す
というのはソナタ形式に代表されるように西洋音楽の基本であり、
非常に多くの楽曲に見られる基本的な流れになります。


緑で回帰と書かれた17小節目から
再現部みたいなものですが、
元の調に帰ってきて主題も冒頭の形そのままで再現されます。


19小節目~最後まで


20小節目から終結部に相当する最後の主題が現れます。
ドーファーミファラドララーと
冒頭と同じ音程関係ですが、22小節目のラの音に対して
ⅤのⅤの9の和声付けがされており、
次にお約束のⅠ2ーⅤ7を期待させます。


属9の和音はここまで何度も出てきていますが、
すべて短調の属9であり、
ここで始めて長調の属9の和音が登場しているのもポイントです。

この部分は和音も厚くとても綺麗ですね。

そのあとゆっくりリタルダンドしながら
Ⅱ→ⅡのⅤ→Ⅱ→Ⅴ7→Ⅰという風に
もう1回サブドミナント→ドミナントという流れで終わります。


全体の調の流れとしては

KEYーF(提示部みたいなもの)

KEYーGm
↓ (2つ合わせて展開部みたいなもの)
KEYーDm

KEYーF(再現部みたいなもの)

という感じです。

提示部「みたいな」と書いたのは
ソナタ形式みたいにしっかり作られているわけでもなく、
極めて単純で規模も小さいからですが、
概念としては小さいながらも提示→展開→再現という
様式が用いられています。


これで主題が2つあり(あるいはそれ以上)、
展開部や再現部の規模がもっと大きくなれば
一応様式としてはソナタ形式になります。


全体の和声進行としては甚だ単純であり、
調設定さえ間違えなければあまりにも単純過ぎて
やってみたら拍子抜けという方も多いかもしれません。


逆にこのレベルでも難しいという方もいらっしゃるかもしれませんが、
いずれにしても慣れであり、たくさん数をこなして、
可能ならちゃんと正しく出来ているか誰かに見てもらうと良いと思います。
(特に難しい曲はなおさらです)


ピアノ曲からオーケストラまで何でも芸術は真似から入りますが、
まずはちゃんと既存曲を解釈出来る力は
様々な曲を作る上で大きな強みになります。


演奏家さんは和声進行や曲の節々に見える作曲家の意図を読み取り、
音楽形式や作曲の様式を自分なりに解釈していくことが
演奏にフィードバックされていくかもしれません。


和声の知識は全体の形式や各部分の構造を理解するためには必須ですし、
譜面に書いていないピアノやフォルテ、あるいはクレッシェンド、
非和声音・和声音の違いにおける旋律の隠された強弱の弾き分けなどの
理解をお持ちの演奏家さんは結構いらっしゃいます。



とは言ってもやはりどうしてもわからない部分があるのは
誰でも同じであって、
私も学生時代はよく先生に質問した記憶があります。


自分で一生懸命考えても、
わかんねーとなるのはむしろ学生の特権でもありますので、
音楽の先生などに質問するのが一番手っ取り早くもあります。


ブログのネタがないときはアナリーゼをやれば良い
ということに気がつきましたので
また気が向いたら何かがしかの曲を取り上げたいと思います。

全体の大きな画像はこちらでDL出来ます。


世の中に対してこういうニーズがどれくらいあるのかわかりませんが、
ドビュッシーやラヴェルの難易度の高い曲や
リリ・ブーランジェなどのマイナー作曲家、
メシアン、フォーレやサンサーンスも面白いですし、
ショパン、リスト、ブラームス、フランク、
ベートーヴェン、モーツァルト、バッハetc…
(権利問題が解決できれば現代音楽やポップスやBGM曲など)
ネタは無限に近いほどありますので、
またそのうちに書かせて頂きます。


特に作曲志望の方はまずはこうやって
自分の好きな曲をアナリーゼして
真似て行けば作曲の勉強になりますので、
この記事がどなたかのお役に立てば幸いです。


自分の好きな曲を片っ端からアナリーゼしていきましょう。


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前回が古典のベートーヴェンでしたので、
次はロマン派のシューマンの中から
子供の情景 第7曲のトロイメライをアナリーゼしてみたいと思います。
(溜まったらリスト化しようかと思います)

シューマンについて、子供の情景についても
色々なエピソードや蘊蓄は幾らでもネットや書籍で見ることが出来ますので、
やはり純粋に音楽だけを見ていきましょう。





IMSLPはこちら

トロイメライはドイツ語で夢という意味ですが、
如何にも子供が見る他愛ない夢という曲調です。

そのままではクラシックの曲ですが、
全体的な雰囲気の作り方は現代のBGMでも応用出来そうです。


本気でやってみたい方は是非、
まずは自分でアナリーゼしてみましょう。


コードが取れても調設定が出来なかったり、
和声の把握が不正確だったり、
細かい部分が取れていなかったり、
という人は結構たくさんいますので、
この記事はあくまで答え合わせとしてやってみると
本当の意味での自分の上達に繋がります。


特に作曲志望の方はそのようになさることをお勧めします。
その曲をアナリーゼ出来ない、何をやっているのかもわからないのに、
自分で同じレベルの曲を作るのは技術的に不可能です。


高いアナリーゼ能力と作曲能力は必ずしもイコールではありませんが、
音楽をしっかり把握出来る能力は自分で作曲するときに
考え得る選択肢の増加、その取捨選択・判断速度の向上、
ケアレスミスの減少など作曲に大いに役に立ちます。


何に寄らずしっかり音楽を理解し、把握出来る人は
大抵作曲においても高い能力を持っている人が多いです。


音楽に対する把握力、理解力の低さはそのまま
自分が作るときの発想の狭さ、高度さ、速度、ミスの多さに関わってくるので、
何を聴いてもちゃんと自分で理解出来て、
真似出来るようになると作曲の上達に繋がっていきます。
(実際に真似するかどうかは別として)


音楽をしっかり理解する=作曲能力の向上は
ある意味当たり前のことですが、
なかなか一朝一夕では行かない部分もあり、
基礎的な内容の習得度合や日頃の訓練がものをいうので
常日頃からの努力が大切になります。


今回も上にポピュラーのコードネーム、
下に和声の記号を書いています。

1~4小節目

この曲はある種の再現部を持つ非常に簡単な変奏曲のようであり、
中間部に簡単な展開部を持つ3部形式のような形式でもあります。

小節構造的には2部形式っぽくで書かれていますが、
こじんまりした提示→展開→再現という
古典の基本概念に忠実な構造になっています。


紙一枚の短い曲ですが、いわゆる典型的なクラシックの概念を持った
構造なので、全体を見渡した後にその点も抑えておきましょう。


最初の4小節はテーマの提示で
Ⅰ→Ⅳ→Ⅰ2→Ⅴ7→Ⅰ1→Ⅴ→Ⅰ→Ⅴという流れで、
サブドミナントが1回出てくるだけで、
あとはずっとⅠとⅤの反復です。

着目すべきは和声の単純さではなく、
隠されたリズムで、
和声の変化のタイミングがかなり変則的な点です。

 FB♭FC
5拍 3拍 1拍 2拍

FCFC7
0.5拍 0.5拍 1拍 3拍

*譜面を見て確認してみましょう。

ジャズでいうところのチェンジのタイミングが甚だ不規則で
和音の移り変わりが小節線を跨いでいたり、
強拍、弱拍がランダムです。


和声とはこういうものですが、
これによって聞き手にイチニチサンシイという
手拍子を取れるようなリズムを感じさせず、
揺り籠が揺れるような曖昧な揺らぎを印象付けます。

これはそのままBGMでも活用出来るテクニックですし、
実際に私はしていたりします。


シューマンが此処で狙っているのはある種のルバート効果であり、
演奏家さんがシューマンの意図を汲むならば
拍通りではなく、ややルバート気味に弾くはずです。
(他愛ない子供の夢といった感じで)


この部分に限ったことではありませんが、
アナリーゼすることによってある程度までは
一体作曲家が何を考えているのか?何を狙っているのか?
演奏者にどういう表現を求めているのか?は
例えなんとなくでも伝わってきたりします。


理想は楽譜を見ること=即アナリーゼですが、
最初の内はゆっくり、じっくり行うべきです。


この部分は和声的にはかなり古典に忠実であり、
全体を通して見ても、多少偶成和音が登場したり、
Ⅰの2転を基本形同様に使うなど
やや古典和声に比べて発展的な部分がありはしますが、
十分に古典和声で把握出来る簡単な内容です。


初期から中期にかけてのロマン派音楽のサンプルとしては
適切な難易度ではないでしょうか。


またシューマンの和声語法はそのままブラームスにも
受け継がれていくので、
シューマンがなんたるか?を理解しておくと
その流れに続くあとの作曲家の理解にも役立ちます。
(そのためにはたくさんシューマンをやらないといけません)


ドミナントモーションにはコードの間に山形の矢印を付けていますが、
すべて正規の解決をしているのもポイントです。


つまり完全終止(4度上)か偽終止(2度上)のどちらかになっており、
この辺りも古典和声からそれほど逸脱した和声進行がないことがわかります。


また書法がいわゆる声部書法に比較的近く、
一部音数が多い部分がありますが、
和声のソプラノ、アルト、テノール、バスを連想させるような
書かれ方をしているのもポイントです。
そのまま弦楽四重奏やオーケストラに編曲出来そうであり、
事実編曲練習課題としてもよく用いられます。


いわずもがな冒頭のド→ファーミファラドファファーというのが
テーマとなります。

5~6小節目

4小節目の最後からもう一度テーマが反復されます。
1回目と旋律の後半が異なりますが、
これは「確保」と呼ぶべき部分でしょう。


1回目より和声が複雑になっており、
副属7や偶成和音が登場します。

FA7DmでⅠ→ⅥのⅤ→Ⅵですが、
A7Dmに対する副属7であり、
調的な広がりが見えます。

さらにDmFmC/GD7G7C7と進み、
ⅤのⅤである副属7のG7も登場します。


問題は7小節目のFmで、KEY-FなのになぜFmコードが
登場するのか?という点です。


これはいわゆる経過和音(偶成和音)として解釈可能で
和声~理論と実習の青本に出てくる用法です。


古典でも既に偶成和音は登場しますが、
偶成和音がより発展的に
特に時代が下がるほど半音階を伴って用いられるようになるのが
ロマン派、あるいは後期ロマン派の特徴です。


一口にロマン派と行っても最初と最後で全然違いますが、
より音楽の表現力を上げるために
作曲家たちが和音の用法を発展的にしていく様を
個別のテクニックとして、あるいは全体の歴史の流れとして
ちゃんと把握しておくのは有益でしょう。


DmFmC/Gは純粋にコードネームだけを見ると
ダイアトニックとして???という感じですが、
アルトの動きを見れば「ラ→ラ♭→ソ」となっており、
アルトの半音階ゆえに生まれた偶成和音という感じです。


偶成和音についてよくわからないという方は
是非とも和声の基本的な勉強をお勧めします。


まずは偶成和音とはどういうものを云うのか?
独立和音とはどうやって違いを見分けるのか?
大家の作品におけるその具体的な用法はどんなものがあるのか?
などをしっかり学びましょう。


どのみち和声法をしっかり学ばないと本当の意味で
クラシックの作曲法は身に付きませんし、
クラシック的なオーケストラや室内楽も
作れるようにはならないと思います。
(なんちゃってで良ければ可能ではありますが…)


自分が何処までの理解度を持ちたいのか?
どのレベルまで進みたいかによって勉強の内容と
その深さは変わってきますので
短い人生で無駄な回り道をしないで済むように
しっかり目標と手段を見据えていきましょう。


D7(♭9)でⅡのⅤがオルタード化されているのもポイントです。
コードスケールを付けるならHMP5Bでしょうか。


Fmという偶成和音のあとにドミナントモーションの連続で一旦区切りです。
やはり最後はドラムのフィルインのように
それまでと比べて和声の動きに幅があり、リズムも細かいですね。
古典に忠実な作り方と言えるでしょう。


こういった考えは現代のポピュラーのボーカル曲や
BGMでもそのまま受け継がれています。


次回はリピートマークの続きからの予定です。


本当はポップスやロック、あるいはBGM系の曲を取り上げたいのですが、
著作権の関係でアウトなので、
(アメブロ運営からブログを削除されてしまいます)
この辺りは何かいいアイデアがないか調べてみます。

どなたか良いアイデアがあれば智惠を貸して下さい。

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色聴に関して。

テーマ:

一昔前は色聴に関して色々と面白いと考え、
自分の考えを論文もどきにまとめてみたりもしましたが、
あまり意味の無い行為であったというか、
共感覚と音楽を結びつけて考えるのは
音楽の本道から逸れる行為であると思うようになり論文も削除しました。


すべてを端折って結論だけを述べると
私にはこんな風に見えます。




色はマンセル色相環で定量的に表しています。
私の場合は調性に対して色彩を感じるわけですが、
発動条件は人それぞれのようです。


面白そうだと感じる方は「共感覚」「色聴」などで
調べてみると良いかもしれません。


私としてはこれは音楽と結びつけて考えるべきではないと
現時点では考えています。


メシアン、スクリャービン、コルサコフなど
作曲家の中には共感覚の所有者がおり、
色聴であったと言われている人が何人かいますが
音楽であることを捨てて、
それだけを全面に押し出した作品は残していません。
現代の日本の作曲家にもたくさん色聴所有者はいるようです。


もちろん見えるものは見えるので作曲時に
影響を全く受けないというわけにはいかず
無意識下での影響はあるでしょうが、
私としても、あんまり色聴を全面に押し出す作品は
もう何年も作っていませんし、
今後も作ることはないでしょうし、
あまり意識もしなくなりました。


やはり誰にも理解されない、
自分にしか見えていないというのが最大の理由です。


誰とも共感出来ない、誰にも自分の意図を伝達できないツールに
存在意義はないと感じています。

何処にも通じない携帯電話が
通話するための道具としては存在意義がないようなものです。


色聴は全員がある音に対して同じ色を見るわけではなく、
また発動条件も人それぞれです。

感度も人それぞれで12音中A音だけが赤く見えるが、
それ以外は何も感じないという人もいました。


(おそらく僅かでも共感覚があるという意味において)
2000人に一人と昔は何かで読んだことがありますが、
個人的にはもっといると思っています。


学校で教員をやっていた頃、色々なクラスで授業を受け持つ度に
生徒全員にこのことを教壇からまとめて話したことが何度もありますが、
何人も自分もそうだという生徒はいました。


もちろん条件や感度は人それぞれで、
内気な生徒であれば、共感覚であっても
黙っていた子もいると思うので、
実際にはもっと多かったのかもしれません。


そしてやはり、ある音に対して見える色は
完全に全員揃っていたわけではありません。


ある人にはドが白に見え、別の人にはドが赤に見えます。
全員が同じものを共感出来ないという部分に大いに問題を感じます。


携帯電話で私が「こんにちは」と話したら
相手先には「さようなら」と聞こえてしまう、あるいは聞こえもしないのであれば
そんな特殊な携帯電話は使わないほうが良いでしょう。


絵を描くときに赤い絵の具を塗ったのに、
別の人には青く、または黄色く見えてしまうのでは
画家の意図を伝えるツールとしてはその絵の具は破綻しています。
普通の絵の具を使うべきと多くの画家は考えるでしょう。


私にとっては色聴はそんな自分一人だけの狭い感覚です。
全員が同じ感度で同じ音に対して同じ色彩を感じるときに
始めて共感が起こり、芸術の表現形式としての意味をなすのであって、
そうでないならば、むしろそんな不確定なものを主軸において
物事を進めるのはあまりにも不確実に思えます。


話のネタとしては面白いかもしれませんが、
それは音楽の本質からかけ離れています。


また調に対しての印象も私は持っていますが、
これも考えようで、色聴や音視と同様に考えるべきでしょう。


*以下、見えない見にくい文字は範囲選択すると見えます。
                                                                                                                                                                                                        
  

調

  
  

  
  

調の性格的印象と力

  
  

ハ長調

  
  

白色

  
  

単純明快・素朴で無装飾。(白だと見えないので黒で記載)

  
  

ハ短調

  
  

銀色

  
  

真剣な感情や情熱を表す。全調の中で最も鋭い印象。

  
  

嬰ハ長調

  
  

金色っぽい

  
  

装飾的な意味での華やかさ。着飾っているという虚構的な雰囲気。

  
  

嬰ハ短調

  
  

黄土色

  
  

それほど強くない寂しさ、孤独感を示す。色彩的にも薄く、あまり力もない。

  
  

ニ長調

  
  

  
  

全の調の中で最も神聖な印象。人造ではない超自然的な神聖さ。

  
  

ニ短調

  
  

ダークブルー

  
  全の調の中で最も陰鬱で魔に近い調。絶望的な悲しみを示す。  
  

変ホ短調

  
  

赤みがかった薄い灰色

  
  

ト短調のような純潔さや変イ長調のような淡い悲しみではなく、どちらかというと俗っぽい感じがする。自己憐憫。

  
  

変ホ長調

  
  

白銀色

  
  

♭3つの持つ真剣な感じは長調同様。調そのものが輝きをもっている。装飾でない内面からの輝き。

  
  

ホ長調

  
  

黄色

  
  

内面から溢れ出る喜び、世俗的な喜びや楽しさ。俗的な感じが強い。

  
  

ホ短調

  
  

暗い緑

  
  

内面に向かう悲しみ。自虐的な攻撃心を表現する。内側に向かう負のエネルギーを持つ。

  
  

ヘ長調

  
  

水色

  
  

何処か牧歌的。よい過去への回想。穏やかな喜び、大人が幼少時代を思い出すような雰囲気。

  
  

ヘ短調

  
  

赤紫

  
  

外に向かう負の感情。ハ短調には劣るがかなりの鋭利さを持ち外部を傷つける。ホ短調とは力の向きが正反対。美化された悲しい想い。悲しくも美しい短調。自己憐憫。

  
  

変ト長調

  
 

薄い赤茶色

  
  ♭系で最も俗っぽい性格。強い個性を持っておらずどっち付かずの平凡さ。  
  

嬰ヘ短調

  
  

暗い赤

  
  

自己憐憫。ヘ短調と違い外に向かう力はなくホ短調とも違い内にも向かわない。行き場のない悲しみ。

  
  

ト長調

  

  
 

緑の調、ニ長調に続き人造の神聖さでない超自然的な印象をもっている。この緑は大自然の緑でもある。癒すような優しさ。 

  

ト短調

  
  

薄い灰色

  
  

無気力。この調に力はほとんどない。しかし無垢さや純潔さを持っている。

  
  

嬰ト短調

  
  

灰色

  
  
あまり力を持っていない調。無気力。
  
  

変イ長調

  
  

淡い赤色

  
  淡い悲しみ、影のある喜び。最も短調に近い長調。  
  

イ長調

  
  

  
  情熱的・燃えるような赤。夢や未来への希望に燃えるストレートな明るい情熱。
  
  

イ短調

  
  

やや暗い赤

  
  暗い赤と書いたが色彩印象が非常に弱い。簡潔な悲しみ。  
  

変ロ長調

  
  

明るい灰色

  
  あまり力を持たない脱力的な長調。明るい光沢のない灰色の長調。。  
  

変ロ短調

  
  やや茶色がかった灰色    僅かな鋭さと美化された虚構。 
  

ロ長調

  
  

輝きのある灰色

  
  着飾った印象を受けるが、嬰ハ長調ほどの虚構さない。これもそれほどの力はもっていないが、どこか不思議な輝き、神聖さがある。  
  

ロ短調

  
  

少し青みがかった灰色

  
 最も長調に近い短調。救いのある悲しみや失望を表現する。  



文字色はアメブロのカラーパレットから近しい色を選んでいます。
パレットの色数が少ないのであまり正確ではありません。


今でもレッスンの生徒さんに調に関する印象を聞いてみたりすることがありますが、
やはり人それぞれです。


私の色と調に対する印象はある程度リンクしていますが、
これは今でも作曲するときの調選択、
つまり作り始めるときに「何のキーにしようかな~」という時に
一応役立ってはいます。


しかしこれが他人に理解されるわけでもなく、
私が勝手にたった一人で感じているだけのことです。


ある意味役には立ちますが、色聴や音視を全面に押し出した芸術に
未来はないのではないでしょうか。


音楽はやはり音楽として面白くなければ
音楽としての価値はないわけで、
音楽以外の要素は音楽の道を追求するのに
役に立つことはあっても、それはあれば便利だ程度であって、
それを真ん中に据えてはいけないように思えます。



バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、
シューベルト、ショパン、ブラームス、フランク、
ドビュッシー、ラヴェルなどが色聴だったかどうかは知りませんが、
そんなことは関係なしに素晴らしい作品をたくさん残しています。


それは音楽が音楽として高度であるからこそであり、
誰にも理解されない閉じた感覚だけを頼りに
音楽を作っていたら多分今のような価値は
彼らには見い出されていないでしょう。


正直見えたから何の役に立つのくらいにしか思えません。
視覚はどちらかというと絵画芸術の領分であって、
音楽からはむしろ切り離して考えるべきのように思えます。


もちろんこれは芸術としての話であって、
娯楽としては面白いかもしれない思います。


例えばレの鍵盤を押すと青い光が出るような玩具の鍵盤は
子供が喜ぶかもしれませんし、
そんなピアノで色々なピアノ曲を弾くのも
ある意味面白いかもしれません。
(ディズニーにそんなオルガンがあったような気がします)


自分が進みたいと思う進歩の道は人それぞれですが、
音楽の本質は少なくとも、
誰とも共感出来ない、独りだけの閉じた世界ではないはずなので
私としてはあまり意味ないと感じるようになりました。


芸術の進歩における音楽は
ほかの何かと混ぜて考えるのではなく
音楽としてのみで考えるべきというのが現時点の私の考えになります。



前回の続きからです。

5小節目


KEY-E♭に転調して一旦明るい感じになります。
長調と短調の対比効果はあらゆる時代のあらゆる作曲家に見られますが、
古典時代なので調域は比較的狭いです。

ここでは平行調を用いていますが、
時代に下るに連れて転調や借用和音の調域は広がっていきます。

ドビュッシーやラヴェルになると最大遠隔調までいきなり転調したりしますが、
ベートーヴェンは割と狭い調域を用いています。
(それでもハイドンやモーツァルトに比べるとやや広いです)

6小節目

5小節目から6小節目にかけて
E♭Bb7FmB♭7という進行の後にA7が来ます。

ポピュラーのディグリーなら
Ⅱmという進行です。
(古典和声ではⅡmは偶成和音と取るべきですが)


最後のA7はダイアトニックコードではないわけですが、
正体は次の小節のD7に対するドミナントコードです。

和声法では2つの調の間の和音は
可能な限り後続調に所属する
(青本p18)と考えますので
A7からの調判定はKEY-Cmとなり、
ここから元のキーに戻っていると考えます。


4転がたくさん出てきますので一見複雑ですが、
それさえ気を付ければ問題ない部分です。


7~9小節目頭まで


6小節目の最後のA7(ⅤのⅤのⅤ)から
ドミナントモーションしてD7(ⅤのⅤ)に進みます。
その後さらにドミナントモーションしてG(Ⅴ)に進み、
転回しつつ、旋律はクロマティックオルタレーションしたりしながら
最終的にⅤ7の基本形に辿り着きます。


バスが下行しながら旋律が上行していくのも
基本に忠実な感じです。

B♭7(♭9)なら♭9thはド♭と書くのが
異名同音としては正しいですが、
ベートーヴェンはそのように書いていません。


シのナチュラルの方がドの♭よりも
よく用いる表記ではありますが、
ベートーヴェンは異名同音を難しくなると
正しく書かない作曲家です。

割と記譜においては当時の常識を破っている部分があります。


異名同音についての考察はこちらの記事でも書いています。

9小節目


9小節目は頭でG7に解決した後、
多少旋律的に動き、A♭に偽終止します。

和声の赤本に出てくるような導音は上がって
後は全部下がるという基本通りの進行です。


一旦偽終止して、勿体付かせた後に本当の終止が
次の小節から始まります。


10小節目


10小節目の頭は単旋律ですが、
前の小節のA♭の偽終止からの続きですので、
もしコードを付けるならA♭と付けるべきでしょう。

偽終止は後はこれまた和声のお手本で出てくるような
Ⅱ7→Ⅰ2→Ⅴ7というお決まりの進行です。


旋律は半音階化されていますが、
それを除けば極めて基本的に出来上がっています。


Ⅱ7の1転が7の音が予備されていない、
古典和声のルールを守っていないと
和声の黄本を学んだ方に突っ込まれそうですが、
これは高さの違う旋律のドを予備と取るか、
あるいはそもそもベートーヴェンが古典的な作曲家かどうか
というところから考えるべきだと思います。


言うまでも無くモーツァルトと直接会ったことがあり、
ハイドンの弟子でもあり、
時代的には日本でいうところの江戸時代中期ですので、
古典時代ではありますが、
果たしてその作曲技法は完全に古典に留まっているかどうかは
極めて疑問ではあります。


実際の和声・技法はかなりロマン派に頭を突っ込んでおり、
これを古典派の作品とは言わないだろ…という
曲もいくつも見られます。


例えば弦楽四重奏大フーガを聴いて、
あるいは譜面を見て
「ウン、この曲を書いた人間は間違いなく古典派だ」
という人はどれくらいいるでしょうか。


ストラヴィンスキーは大フーガを
「絶対的に現代的な楽曲。永久に現代的な楽曲」
と言ったそうですが、
そこまで行かなくてもどう考えても古典派とは考えにくいです。


大フーガの譜面の一部

譜ずらを見ても個人的には前情報でベートーヴェンと知らなければ、
少なくとも古典にはあまり見えないです。


時代が下がるに連れていわゆる古典的な和声法の禁則は無視されるようになり、
ドビュッシーやラヴェルの時代になると完全に無視と言っても良いような
曲が多数見受けられ、
そこまで行かなくても後期ロマンやロマンの初期にも
少しずつ禁則が破られていく様を
様々な作曲家の譜面に見いだすことが出来ます。


要するにベートーヴェンを「和声~理論と実習」に書いてあるような
教科書和声で解釈しようとすると出来ない部分がたくさんある、
ベートーヴェンはそこまで古典和声に忠実ではない
(モーツァルトやハイドンと比較してですが)
ということです。


かなり乱暴な言い方をすれば
カッコ良ければ禁則上等という部分もあります。
この辺は彼の性格がよく表れています。


古典和声の権化であるモーツァルトを見るような目で
(モーツァルトですら古典和声に当てはまらない部分はたくさんありますが)
ベートーヴェンを見ると???という部分がたくさん出てきます。

もし学習段階の方がいらっしゃれば、
私から出来るアドバイスは
これはこういうものだと受け入れることです。


最後にフェルマータでラ♭→シという動きになっていますが、
上行にすると増音程になってしまうので下げているのと、
(古典和声では基本的に増進行は禁止です)
次のフレーズの頭の音に上手く繋がるように
高さを合わせています。


7小節目以降を大雑把に見たもの。

転回形を無視して、大雑把に和声進行を見るとやはり非常に単純です。

ポピュラーのディグリーで書くと
まずKEY-E♭でⅠーⅤーⅡmーⅤの後に
KEY-Cmに戻って
Ⅵ7→Ⅱ7→Ⅴ7→Ⅵm→Ⅱm7→Ⅴ7という進行です。
たったこれだけでお終いであり、
ポピュラーのコード進行としてもありきたりな
単純なものであることがわかります。


黄色の文字だけを追っていくとこんな単純なのかと
驚く方もいらっしゃるかもしれません。


古典和声とはこういうものですが、
この単純なカデンツに対して、
和音の転回形、非和声音の装飾、
転調、リズム的なギミックetc…、を用いて、
曲を作り上げているわけです。


わずか紙一枚だけの分析ですが、
作曲に応用するためのスタート地点として、
和声法の習得の経過地点として、
まずは正しく和音と和声進行、調設定などを
把握出来るようになるのが基本です。


総まとめの大きな画像はこちらからどうぞ。


和声を学んでいて作曲家を目指している方は
こんな感じの曲は作れそうでしょうか?


和声が理解出来ている=自分でも作れるというのが
作曲家としての基本姿勢だと思いますので、是非挑戦してみて下さい。


コードネームやディグリーを付けただけでは勉強は半分以下です。
自分で作るところまで進んで始めて作曲です。

またベートーヴェンのほかの曲や
もっと後の時代の作曲家に自分で挑戦するのも良いでしょう。
オーケストラが作りたい方はオーケストラ曲を
アナリーゼするのが一番手っ取り早いです。


演奏家の方も普段自分が弾いている曲がどういう風に
作られているのかを見るのは普段と違った視点から見えて
面白いかもしれません。


自分が弾いている曲をこのようにアナリーゼしてみるのも
作曲家が何を考え、何を表現しようとして、
具体的にどういう手法をとっているのか?がわかりますので、
それが演奏へフィードバックされることもあると思います。


様々な時代の曲を分析することで、
各時代の和声法、音楽に対する考え方、その時代の常識、
作曲技法の変遷も理解出来るようになります。


私もレッスンでよく生徒さんから全然知らない曲のアナリーゼを
求められることがありますが、
一人だったらにあまり触れないであろう曲も
レッスンを通してアナリーゼする中で
新しい発見があって勉強になることがよくあります。


ロマン派、国民楽派、近代フランス、現代音楽には
とてもたくさんの作曲家がいて、
マイナーな作曲家も含めると知らない作曲家の方が多いくらいですが、
作曲の基本姿勢としては聴いた音楽を自分でも再現できるというのが
特にBGM系の曲を作る方にとってはあったら便利な能力ですので、
日頃からたくさんの曲に触れて、
アナリーゼし、自分なりに再現出来るように
日頃から努力すると良いと思います。


最終的な目安としてはドビュッシーの牧神やラヴェルの弦楽四重奏などの譜面を見て、
全部普通に理解出来るというところまで進んだなら、
とりあえず基礎としての座学は終わりと考えて良いかもしれません。



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