バッハの対位法を学ぶ①

テーマ:
現在ブログ移転の準備をしてます。
近日中に新しい移転先に移行する予定です。
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複数回に分けてバッハの対位法について
私なりに書いてみたいと思います。


バッハの対位法は対位法の教科書で見られるような
パレストリーナ様式の厳格対位法ではなく、
機能和声を土台においたカデンツありきの
和声的な対位法なので、いくら厳格対位法を学んでも 対旋律を
作るという訓練にはなるかもしれませんが、
それだけでバッハの様式が身に付くかどうかは
全くの別問題となります。


2~4声の厳格対位法を第一類~第五類まで学ばれた方は
たくさんいらっしゃると思いますが、それらの厳格対位法を織り交ぜつつ、
順を追ってバッハの書法を考えてみましょう。


1.厳格対位法とバッハの対位法の違い
ペロタン(1300年代)、パレストリーナ(1525?-1594)、
ジョスカン・デ・プレ(1455年?-1521)、などの
バッハ以前の作曲家の対位法と バッハの対位法の最大の違いは
機能和声を土台にして考えているか否かです。


2-アルマンド フランス組曲2番 アルマンド

バッハの曲にはほぼ100%カデンツがあります。

これは説明する必要はないと思いますが、
バッハの作品は和音にトニック、ドミナント、サブドミナントの機能分類を行い、
それに基づいたドミナントモーションや副属7などの技法を用いた
いわゆる機能和声によって曲が作られています。


何もいわずに対位法という言葉を使うときは
基本的に ルネッサンス音楽や中世西洋音楽の時代、
つまり和声法確立以前であるバッハ以前の時代の
厳格対位法をさすことが多く、
例えば下の動画の「教皇マルチェルスのミサ曲」のような 時代の技法を挿すことが多いです。




しかし、一般的な和声の教科書では
バッハ、ハイドン、モーツァルト、 ベートーベン、シューベルト、etc…の
和声法を学べないように
(個別の作曲家の技法に焦点を当てた本もありますが)
ペロタンやジョスカンやパレストリーナなどの違いも
対位法の教科書で学びにくいのが現状です。 
(同じく個別の作曲家の技法に焦点を当てた対位法の本もありますが)
0000000000000 教皇マルチェルスのミサ曲の冒頭


対位法の教科書としておそらく一番日本でメジャーだと思われるのは
対位法(ノエル=ギャロン著)ですが、
この本にはバッハはもちろん特定の作曲家に
フォーカスを当てた 内容は書かれていません。


000000000000000000000
対位法(ノエル=ギャロン (著), マルセル・ビッチュ )


主に伝統的な訓練としての対位法の内容が書かれており、
バッハ=対位法、対位法を学べばバッハっぽい曲が作れる、
という風に考えると全然当てが外れてしまいます。


バッハは純粋な意味での厳格対位法をほとんど用いておらず、
単純に和声の土台の上で
単純に横のラインを重視した声部書法で作曲を行ったため
バッハ=対位法、つまり厳格対位法やればいいの?
みたいな 誤解?を持たれる方がいらっしゃるかもしれませんが、
実際にはあまり教科書的な厳格対位法は
バッハの様式を習得するという意味においては
個人的にあまり重要でないように思えます。


厳格対位法は現代のポップスのようなメロディー+和音ではなく、
単純に声部書法に慣れる・声部書法の技術を磨くという 意味では
大いに意味がありますので、その意味での訓練として、
あるいは 中世西洋音楽やルネッサンス期の対位法楽曲を学ぶ土台としては
大いに勉強の意義があると思います。


バッハの作風を手っ取り早く学ぶには
バッハの和声法と対位法が合体した実際の作品を
ピンポイントで見ていくのが一番近道です。  



2.和声を内包する旋律
バッハの旋律は多くの場合和声を含んでいます。
現代風にいうならメロディーを見ただけでコードがわかる ようになっています。


0000000000000 無伴奏フルートのためのパルティータの冒頭

上の楽譜はバッハの無伴奏フルートのための パルティータの冒頭ですが、
旋律を見ただけでコードを判定出来るように 作られているのがわかるでしょうか?

10000000000000 コードを付けてみると上の画像のようになると思います。
多少の経過音と刺繍音を伴いますが、
メロディーを見ただけでコードがわかるようになっています。


バッハの曲のすべてがそうなっているわけではありませんが、
旋律そのものが機能和声に基づくカデンツを含んでいることが多く、
機能和声を土台に旋律が成り立っていると 考えても良いと思います。


ある程度の声部書法を習得しているならば
バッハっぽい曲を作るのに必要なのは
対位法よりもむしろバロック的な和声法と言えます。


もちろんバッハは同時代のヘンデルやヴィヴァルディーに比べて
ずっと線的な書法を行っているので 対位法を軽んじて良いと
言っているわけではありません。


まずは単純なものからスタートするという意味で、
バッハの旋律は和声を内包していることが
多いということを理解して
そこからスタートするのが有益という意味です。



0000000000000 フランス組曲3番のサラバンド抜粋


今度はフランス組曲3番のサラバンドを見てみましょう。
先にコード分析をしてみます。
0000000000000

コード分析をよく見てそれが頭に入ったら、
今度は下の旋律のみを取り出した画像を見てみましょう。


0000000000000

E7の後ろのBmがややわかりにくいですが、
(それはほかの声部で充填されます)
旋律そのものがある程度の和声を持っているのがわかるでしょうか?


バッハっぽい曲を作るコツはポップスの多くの曲にあるように
コード感は伴奏に任せて、
ほとんどコード感を持たない自由な旋律ではなく、
単旋律のみを見てある程度コード感を含むように作るのが第一歩です。


バッハというとどうしても複数の声部を伴う対位法に目がいきますが、
まずは単旋律でバッハの様式に沿わないと バッハっぽくはなってきません。

単旋律が上手く作れていなければ、
複数の旋律を作るようになっても、
1つ1つの声部がちゃんと出来ていないということになりますので、
バッハの様式には近づいてきません。


全部が全部こうなっているわけではありませんが、
バッハの様々な曲に目を通すことで、
その配分や手法が徐々に見えてくると思います。

次回以降に続きを書かせて頂きます。  


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ラヴェルの水の戯れを少しアナリーゼしてみたいと思います。
長い曲ですので、全部は無理ですが、冒頭だけでも
軽くさらってみるとラヴェルの和声のほんの一部ですが、
感じ取ることが出来ます。





IMSLPはこちらです。

テンポは♪=144と指定されていますが、
個人的には多少速く、そして多少揺らいで弾いた方がカッコ良くで好きです。


1~2小節目

冒頭は調性を確立させるため単純なⅠーⅣの和声です。
古典ならⅠーⅤですが、ラヴェル(に限らず近代フランスの作曲家)は
古典やロマンを彷彿とさせる単純なⅠーⅤを嫌う傾向にあります。


ラヴェルは特にその傾向が強く、単純なⅠーⅤやⅤ7ーⅠは
極々稀にしか出てきません。


それまでのありきたりな和声法を脱却したいという理由なのでしょうが、
これは水の戯れのみならず、ラヴェルの作品全体を通して
言えることだと思います。


全体の配置が高域であること、
そして開離配置(オープンボイシング)での右手のアルペジオや
左手の3度堆積を用いない和音伴奏によって
軽やかで透明感のある印象を出しています。


3度堆積の密集した和音を避けて、
5度か6度を積み重ねて二重音で伴奏をしているのは
3度堆積による古くさい感じを逃れ、
透明感を出すのにラヴェルやドビュッシーがよく用いるボイシングです。


属7以外の7の和音は第7音の予備が必要であるという古典和声の規則も
当たり前のように破られています。


ラヴェルの和声のポイントはいくつもありますが、
属7以外の7の和音の多用やテンションや変位を駆使した
豪奢な和音がラヴェルを理解する上で非常に重要になります。



2小節目

冒頭の主題音型が和声を変えて確保されていますが、
今度はⅣで始まっています。
属7が避けられる傾向はここでも現れています。

2小節目の2つめの和音ですが、
E7aug(9)G#7-5(b13)の2通りの解釈が可能で、
どちらで取るかは迷うかもしれません。



2つの解釈の比較


個人的にはG#7-5(b13)で取りたいと思うのですが、
その理由はいわゆる典型的な増6の和音、
もっと言うならフランスの六の和音(テンションがありますが)に
なっている点や後半でこの解釈で取らなければならない似たような和音が
何度も登場するからです。

フランスの六の和音と私が呼んでいる和音は
フランスの三四、あるいは増三四六の和音とも呼ばれています。
ここではフランスの六に統一しています。


臨時記号の書き方としても
典型的な古典和声のトレードマークである
増6の和音をベースに近代風なアレンジとしてテンションを加えたものであり、
E7aug(9)という解釈も成り立ちますが、
こちらはあまり一般的な解釈方法ではないように思えます。



ただ異名同音的にはE7aug(9)G#7-5(b13)のどちらで解釈してもOKであり、
むしろラヴェルは下記のような偶成和音を考えているように思えます。






いわゆる刺繍和音ですが、G#7-5(b13)AM7であれば
単純なⅤ7→Ⅰという正格終止を避けた偽終止にもなります。


どっちで解釈してもOKみたいな場合は
前後や全体の流れ、その時代の様式、その作曲家の流儀で
判断すればOKです。


大切なのは(作曲する人間なら)技術を技術として習得することであり、
演奏家さんならどういう技法で、なんの目的でこういうことをしているのかが
自分なりに理解出来ることです。


4小節目


主題の確保が連続しますが、
4小節目からバスが3度で連続下行して
一旦大きく響きが揺らぎます。


ラ→ファ#→レ→シ♭→ソ→ミ→ド#という風にバスが下行しますが、
平行和音というわけではなく、
かなり豪奢な和声ではあるものの調性の解釈が成りたちます。

和声進行の解釈よりもラヴェルの和音の使い方の一端を見るために
この部分を全音符に簡略化した譜例を見てみましょう。

4小節目~5小節目頭までの和声の単純化


是非ピアノで鳴らしてみて下さい。
まず5和音、6和音が目立ちます。
古典和声ではあり得ないテンションと変位満載の
非常に豪華な和音で、如何にもラヴェル的なお洒落な和音です。

6種類の音が使われるという意味で
6和音という言葉を使っていますが、
ロマン派において、具体的にはシューマンからスタートする
根音を省略しない属9の5和音をさらに
進歩させたような音使いです。

ドビュッシーにも同様の和音は見られます。

AM7以降はずっとドミナントコードの連続です。
本来長調にはダイアトニックにおける属7の和音は
一つしかないのですが、
こうやって連続してドミナントコードを続けることによって
調性をあやふやにしています。


少なくとも全音符化された上の譜例をピアノ弾いてみると
調の確定度はかなり低く、
○メジャーキーや○マイナ-キーという風に
調設定がかなりやりにくいです。
こういう書法もラヴェルの曲では非常に多く見られます。


4小節目の3個目と4個目の和音は
3小節目で登場したテンション入りのフランスの六の和音ですね。


このような古典の和音を拡張した増6の和音を
ラヴェルが好んでこの和音を使っていることがわかります。


ラヴェルは形式的にはかなり古典性が強いですが、
使用和音はかなり発展的ではあるものの、
そこはかとなく古典に立脚した響きがこのようにあるのは
やはり本質的な意味でのクラシックを感じさせます。



この部分の調的な解釈としては
Ⅳ→♭Ⅶ→Ⅰ7→Ⅵ7→Ⅰ7→Ⅵ7と
正規のドミナントモーションを避けた進行の連続です。
(Ⅰ7→Ⅵは次の小節でも反復されています。)


属7の和音はすべての度数の和音へ
理論的な矛盾なく進行が可能であるということを
前に書いた作曲の本で述べましたが、
ここでの進行もすべて理にかなっています。


理論的なことはおいておくと、
完全4度上行のドミナントコードの進行は
古典やロマンを感じさせるため3度を用いているというのが
ラヴェルの意図のように思えます。


この後もⅠ7→Ⅵ7は計画的に反復されるわけですが、
下部付加の3度下行というちょっとロマン派的なテクニックに
ラヴェルらしい豪奢な和音を用いて、
AM7から一気に駆け下りるお洒落なフレーズです。


ラヴェルに限らずですが、
予め大雑把な和声進行を決めておき、
その目的の和音に対して逆算して作ってあるとして思えない和声進行は
ラヴェルには多数見られます。


行き当たりばったりで考えるのではなく、
計画性を持って、目的地から逆算してフレーズを作るのは
現代人である私たちも当たり前のように行いますが、
ラヴェルは特に計画的である場合が多いです。


5~6小節目


既に述べたとおりE7-5C#7でⅠ7→Ⅵ7の反復となります。


一応Eコードなので、これがドビュッシーならば
トニックに帰ってきていると考えても良いのですが、
この曲の真のトニックはその2小節後です。

ここではドミナント化され、
既に何度も登場した増6の和音としてEコードは登場しています。

ラヴェルが特別にフランスの六の和音を偏愛しているのがわかりますね。


6小節目でⅢ7→Ⅱ7→Ⅴ7となり、
本当のトニックへの回帰となりますが、
Ⅴは下方変位されており、
ここでもやはり増6の和音であるフランスの六を用いています。
水の戯れのトレードマークと言ったら言いすぎかもしれませんが、
かなり目立つ使い方です。


7小節目でもう一度トニックに回帰して、
今度はヘ音記号の音域の低音ありの伴奏で再び主題が確保されます。



///////////////////////////////////////////////


細かい和声分析はここまでにしたいのですが、
ここからさらに私からアドバイス出来るとすれば、
細かい和音分析をしただけで終わりにしてはいけないということです。


細かい部分もわからなければ行けませんが、
そういった小手先のテクニックに加えて、
全体を通してラヴェルの意図を掴み取らねばなりません。



ラヴェルの作品のアナリーゼを難しいと感じるか
簡単と感じるかはその人の進歩度合いによって千差万別ですが、
和声分析は時代を遡るにつれてどんどん単純になっていき、
バッハまで遡るならば、
もはや和声分析が簡単過ぎて個性の獲得や作曲家の意図を読み取るという点で
意味の無い行為になってきます。


そもそも和声が個性を発揮する手段として用いられるようになるのは
ロマン派からであり、
それまでは和声は作曲家にとって
誰もが共通で用いるツールのようなものであることが
たくさんの作品を勉強すれば感じることが出来ます。



バッハ、ヘンデル、ハイドン、モーツァルトなどの曲に
コードネームを付けてもどれもコードネームだけを見るなら
それほど違いはありません。


しかし聞こえてくる音やその和声によって表現される曲の着想は
全く別物であり、
常にその部分を読み取れるようになる必要があります。


近代フランス、あるいは後期ロマン派の曲だと
コードネームやディグリー、調設定だけでも
一般的な音楽理論の勉強が終わっていなければ
大変かもしれませんが、
それが終わっただけでは半分もアナリーゼしたことにはなりません。


大事なことはもっと先に存在し、
作曲するならば小手先のテクニックも
全体的な着想も、その両方を応用出来るようになるべきです。


お仕事の場合はリファレンスありきなので、
○○の曲に似せてくれ、と言われることがほとんどですが、
個人として作る場合は誰かのコピーになる必要はありません。


コピーになる必要はないのですが、
音楽への理解度がある程度あれば、
自分なりの作曲の仕方というものに対して
選択肢が多くなり、考え方も広がってきますので、
過去の大家たちの作品をよく見て、
その技法や着想を自分の引き出しに入れておくのは
それなりに有益だったりします。


道具と一緒で、たくさん持っていれば
すべての道具がすべての場面で必要とは限らないけれど、
あった方が便利である場合が多いです。


コードネームやディグリーを付けただけで分析を終わりするのではなく、
「作曲のされ方そのものや作品の全体性」に目を向けるのが
アナリーゼの第一義的な目的とされるべきだと思います。


今回は完全にポピュラー的なアナリーゼをしていますが、
普通に音楽理論を学んだ方ならば
ラヴェルやドビュッシーの曲に対して、
コードネームやディグリー、あるいは調設定は
ひょっとしたら1つ、2つくらいは難しい部分はあるかもしれませんが、
特に問題なく出来るスラスラと出来るはずです。


フランスの六の和音のような豆知識を知らなくても、
コードネームやディグリーの設定それ自体は難しくはありません。


そこまでは容易だと思うのですが、
大事なことは全体や作品の本質を見通す目であって、
コードネームやディグリーはそれらを知るための
小道具に過ぎないということです。


どうしてもブログだと長い曲をすべて行うのは不可能ですし、
小手先のテクニックに関しての内容が多くなるのですが、
小さい部分を見る技術が、
どなたかの作品の全体性を見る参考になれば幸いです。


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BGMを作るときに、一般的なよく知られたエフェクト、
つまりディストーション、コーラス、ディレイ、フランジャーなど
ギターのコンパクトエフェクターにあるようなものではなく、
もっと飛び道具的で劇的なエフェクターが欲しいときに
LinPlugのrelectroがお気に入りです。


LinPlug relectro


なかなか分類が難しいのですが、
シンセサイザーのオシレーターがないようなイメージの
エフェクターで主にフィルターやLFOなどを駆使して
ハチャメチャな音が作れます。

参考動画
http://vk.com/videos149086558?z=video149086558_168050744%2Fpl_149086558


Linplugは日本では唯一の国産DAWを作っている
インターネット社と提携?しているのか
インターネット社のDAWを買うと
Linplugのいくつかのプラグインや音源が付いてきたのですが、
ABILITY2.0からはrelectroも無料で付いてくるようです。


Linplugは個人的には結構気に入っていて、
SSW時代から付いてきた音源なども
VEproで使いたいという理由から個別に買っていたりしました。


テクノ系やダンス系全般で
「この音どうやって作ってるの?」
というなんだこれ??という音を簡単に作れます。


リズムパートやシンセ、あるいは一発ものの効果音に掛けたりして
かなり独創性の強い音を作れるあまり同類の製品のないプラグインで
曲調が合えばかなり使えるプラグインです。
とにかく面白い音が作れます。



フィルター系の面白いエフェクターというコンセプトなら
soundtoysのfilterfreakもたまに出番があります。

soundtoys filterfreak




relectroとはちょっと方向性が違い、
フィルターの可能性を追求したようなエフェクターですが、
これもなかなか面白い音が作れます。


常用するものではなくて飛び道具的なものですが、
こういったエフェクトがあると、
曲の細かいところで興味深い変化が付けられますので、
普通のエフェクターに飽きてしまった人にお勧めです。


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特定の曲に焦点を当てて分析するのもありだとは思うのですが、
少し視点を変えての総括的な和声について
学生さんの参考になるような内容を考えてみたいと思います。


また日本では和声~理論と実習という本(いわゆる赤、黄、青本)で
学ばれる方が多いと思うのですが、
この辺も絡めて独断と偏見に基づき
とても基本的なことから取り扱ってみます。


まともにやっていくと膨大な量になりますので、
回を分けて、不定期でやっていく予定です。


○バロックと古典の書法について

よく古典和声という用語を本で見ますが、
古典和声とは具体的にはなんでしょう。


古典という言葉が入っていますので、
ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどの古典時代の作曲家の
使っている和声法というのが真っ先に連想されますが、
和声~理論と実習の冒頭では
「われわれはバッハ、モーツァルト、ベートーヴェン等によって代表される
古典的な西洋音楽の和声を学び~」

と述べられており、バッハも古典和声の中に入っているような印象を受けます。


事実古典和声の範疇でバッハの和声法は理解出来ますが、
言うまでも無く、バッハとモーツァルト、ベートーヴェンでは
全く書法が違い、同じ古典派のモーツァルトとベートーヴェンでも
全然違ったりします。


古典和声とはとてもあやふやな用語だと思いますが、
多くの場合バロック期から古典期において用いられる和声法を
総括していう用語として用いられることが多いと思います。


しかしバロックと古典では決定的な違いがいくつもあり、
和声~理論と実習では規則や禁則を淡々と述べているだけで
細かいことを一切省略しています。


何よりも決定的な違いはその書法です。


バロック時代と言ってもたくさんの作曲家がいますが、
とりわけバッハ(1685年~1750年)は声部書法において驚異的な対位法能力を
発揮しており、フーガやカノンなどはほとんど神業と言って良いくらい
あまりにも良く出来た作品がたくさんあります。







平均率1巻のEbメジャーキーのフーガ

ここで注目したい最大の特徴は声部書法がかなり明確で
一つ一つの声部の独立性が強い点です。


1声、1声が明確な仕事を持っており、
どれか一つがいなくなると音楽が破綻するという特性を持っています。


こういった音楽では連続音程などによって
声部の独立性が損なわれるのは良くないと言えます。


次に古典初期の代表格ともいうべきハイドンの初期の弦楽四重奏を見てみましょう。



弦楽四重奏曲第1番 変ロ長調『狩』


ハイドンの弦楽四重奏第1番というマイナーな作品ですが
バロック時代と古典時代の明確な作風の違いを感じ取ることが出来ます。


バッハのような緻密な声部書法は放棄されて、
楽譜を見るともっと単純な書法になっているのがわかります。


同じくハイドンです。声部書法がかなり弱い


声部書法はかなり軽んじられて、
特に内声は単にハーモニーの補強という感じで、とても貧弱です。


第2ヴァイオリンはコードのアルペジオという感じで単純であり、
独立したアルト声部というよりは単なるアルペジオのようにも見えます。


どちらかというとコードを半小節ごとに変化させ、
カデンツによって音楽の進行力を得ようとしているように感じます。

こういった声部書法が軽んじられる様式では
連続音程などが出てきても、
そもそも独立した声部という概念が希薄なため、
バッハの作品のような声部書法の作品とでは
全然意味が異なってきます。


バッハのような対位法を前面に押し出した緻密な声部書法を
良しとする人からみれば
この弦楽四重奏は未熟な習作に見えるでしょう。



逆に当時流行だったこういった単純なホモフォニー的な音楽を
良しとするならばバッハのような作品は時代遅れの古い作風に見えると思います。



技術的にはバッハのほうが高度ですが、
ハイドンが未熟というよりは
時代の流行が移り変わっていったことに注目すべきです。


現代のメロディー1つ+和音のポップスなどがそうであるように
聴衆がより単純なわかりやすい音楽を求めるようになった結果でしょうか。



この曲が書かれたのはバッハが死んだ1750年の
12年後の1762年ですが、
当時の様式を理解するのに適切な曲だと思います。


モーツァルトもベートーヴェンも晩年は対位法に大きな関心を持ちますが、
若い時はこんな感じの曲をたくさん書いているのは
言うまでもありません。


よく伝記などで「バッハは存命当時、晩年は既に時代遅れな作曲家と見做されていた」
云々という文章を見ますが、
これは時代の流行が複雑な声部書法から
もっとわかりやすい単純なものへ時代が移り変わっていったということを意味しています。



またハーモニーに関しても
複雑精妙・微妙なものから単純なものへと変わってきます。

バッハ 平均率第1巻1番のフーガ


上のバッハのフーガではレソ#ラドが同時に鳴っています。
コードを付けるならE7ですが、ラはアボイドであり
経過音ということになるものの瞬間的にソ#とぶつかっています。


こういう例は枚挙に暇がなく非和声音で処理も出来ますが、
もっと複雑な和音の例を見てみましょう。


平均率18番のフーガ


18番のフーガでは下から異名同音でドレレ#シという和音が登場します。
もちろん旋律の動きの中で生まれるもので、
フーガの主唱、対唱などの声部書法の関係でこうなることが多いですが
和音がかなり複雑です。

上にコードネームを付けて分析してみましょう。



対してハイドンの弦楽四重奏はどうでしょうか?


和音が極めて単純であり、バッハに見られるような
複雑精妙・微妙な響きは少なくともこの部分には見られません。


声部書法を捨てて、和声も単純になり、わかりやすい音楽になっています。


このハイドンの弦楽四重奏は声部書法というにはあまりにも貧弱であり、
一応ソプラノ、アルト、テノール、バスと分類は可能ですが、
各自が独立した声部で、その声部だけしか出来ない仕事を受け持っている
という風に考えることは出来ません。


ハーモニーの単純さと合わせて
ここだけ見ても、バロック時代と古典時代で
まるきり音楽の様式が違うことがわかります。


しかし複雑な声部書法を捨てた代わりに、
古典派の音楽は単純さを旨にした
高速なテンポでの演奏が可能になり、
加えて演奏人数規模の拡大も出来るようになりました。


ほかにもバッハの時代には見られなかった和音が
古典に見られるようになったり、
カデンツの進行に違いがあったり、
色々な差違があります。



受験を除けば和声とは教科書で学ぶものではなく、
作曲で必要になる和声は
実際の作品から学ぶものであると思うので、
この辺りのことを考えつつ、
続きはまた次回以降に書かせて頂きます。



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バッハの「チェンバロ組曲第1番」を軽くアナリーゼしてみたいと思います。



チェンバロ協奏曲 第1番 ニ短調 BWV.1052


IMSLPはこちら


バッハの作品の中で知名度の高い作品の一つであり、
バロック期の短調の和声法、協奏曲のスタイルや形式などを
知るための一つのサンプルとして見てみましょう。


今回もいつ作られたとか、エピソード云々は横に置いておき、
純粋に音楽だけを考えてみます。


焦点はバロック期の短調の和声法への理解、
バッハの和声的対位法ともいうべき技法、
現代のBGM制作でバロック期の室内楽を作れるようになるための
ヒントなどを得ることです。


ブログ内の僅かな記事のみでそれらを習得するのは
到底無理ですが、どなたかの一助になれば幸いです。


1~4小節目


冒頭は全員ユニゾンで開始されます。
バッハの旋律は単旋律であっても和声を連想させる形になっている場合が多く、
一応コードネームを付けてみました。

もっと細かく取ることも可能ですが、単旋律なので大雑把に
ⅠーⅤという風に解釈しています。


5~8小節目

毎度のことですが、
上にコードネームを下にディグリー(あるいは和声の記号など)を書いていきます。


6小節目にカデンツっぽい動きがあり、
単旋律ではありますが、
明らかにDGmADmEADm
という副属7を伴うカデンツの動きがあります。


もしこの単旋律に和音付けるとしたら、
バロックの流儀ではこれ以外はないでしょう。


5小節目の2拍目まではドミナントコードで
メロディックマイナーの動きをしていますが、
3拍目から「ラシ♭ドードレミ♭ー」という風に
ドがナチュラルになり、ミが♭しています。


これは次のDに対するⅡーⅤのⅡであり、
ⅣmであるGmコードを仮のⅠと見立てた、
ⅡーⅤです。

単旋律ですが、もしコードネームを付けるならAm7-5で、
コードスケールはロクリアンになります。

KEY-GmのⅡm7-5→Ⅴ7→Ⅰmである
Am7-5D7Gmですね。


単旋律なのでD7の7thは楽譜にはありませんが、
バッハの頭の中ではこういう和声の動きです。

そのあとGmADm(Ⅳm→Ⅴ→Ⅰm)、
EADm(Ⅱ→Ⅴ→Ⅰm)と2回S→D→Tの動きを繰り返して、
チェンバロが主役の部分が始まります。


6小節目からは主音の上でⅠm→Ⅴを繰り返す
典型的なバロック、古典に見られる様式です。


9~12小節目


9~12小節目も主音のペダル上でのⅠmとⅤの繰り返しで
特筆すべき点はありません。


あえて言うのであれば、
ナチュラルマイナー、ハーモニックマイナー、メロディックマイナーの
3種類のマイナースケールをバッハがどう使い分けているかです。

よく教科書などには上行はメロディックマイナー、
下行はナチュラルマイナーなどと書かれていますが、
バッハはケースバイケースで
下行ではナチュラルマイナーとメロディックマイナーを使い分けています。


下行のメロディックマイナーは
あくまでⅤ7という大きな和声の中での
スケールの動きでそうする
という意味であって、
1音ずつコードが変わっていく時に
メロディックマイナーの下行を使うのは極めて例外的です。


バッハのCD全集は155枚組もあり、
バッハの曲をすべて聞いて分析したわけではないので、
もしかしたら例外があるかもしれませんが、
これはバロック期における一つの慣例として考えましょう。


下行のメロディックマイナースケールに
一つ一つ別の和声付けを行った多彩な技法が一般的になるには
後期ロマン派まで待たねばなりません。


逆に上行では2度上行するならばナチュラルマイナーが使われることは
極めて稀であり、ほとんどの場合導音を伴ったメロディックマイナー、
あるいはワザと増2度を出したハーモニックマイナーなどになります。


それでも探せば上行でナチュラルマイナーが用いられている例が
極々稀にありますが、これは本当に例外中の例外と考えるべきでしょう。


和声付けは主にⅠmかⅤ7においてですが、
バッハのどのスコアを見ても上行では導音を伴っており、
これはバッハのみに言えることではなくて、
同時代の作曲家全員の共通と言えます。



ここまで僅か12小節しか見ていませんが、
このようにバッハの時代の和声法は
単純にコードネームを付けてディグリーで解釈するだけなら
甚だ簡単であり、ポピュラーや和声の勉強を
ある程度行った現代人から見れば
コードネームやディグリーを付けるまでもなく、
ほとんど見ただけでわかるほど簡単なものが多いです。


基本的に和声の基本はドミナントモーション、並びに4度進行であり、
正規の解決をしないドミナントモーションはほとんど登場しません。


単純に「和声だけ」を見るのであれば極めて簡単なのが
バッハの時代の和声法の特徴です。


むしろバッハの分析において大切なのは
「バッハ個人の技法」と「バロック時代の様々な様式」、
そして「対位法の技術」への理解です。


例えばバロック時代のメロディーについて考えてみますと
現代人がこのチェンバロソナタのメロディーを聞いて
おそらく多くの人が単純な作られ方だと感じると思いますが、
バッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディーなどバロック期の大家たちの
短調における旋律の使い方は全くその通りで
どれも似たり寄ったりの主題ばかりです。


和声付けやスケールの使用法が限定されていた時代だったため
仕方のないことではありますが、
これは当時旋律の独創性がまだ求められていない時代であった
ということを意味しており、
バッハの様式を学ぶには旋律の作られ方も同様に分析する必要があります。


長調と短調それぞれの和声進行、
旋律の作られ方、形式、リズム、
対位法的な要素、主題展開の技法、転調の領域と方法、etc…
それらを見ていくことによって徐々にバロック時代の
特徴が掴めてきます。


アナリーゼが出来たら自分で真似て作ってみるのもとても大切です。

正しく特徴を掴めているのであれば、
物真似と同じで、真似が出来るはずですので、
作曲志望の方は挑戦してみると良いかもしれません。


その過程で疑問がたくさん出てくると思いますので、
それらのケースバイケースの疑問の答えを、
再度バッハらの譜面に求めることによって、
より当時のやり方が見えてきます。

そういった練習を繰りかえているうちに段々と掴めるようになってくるはずです。

また機会があれば続きか、別の曲を取り上げてみたいと思います。

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(初心者向けの作曲導入本です)


前回の記事はこちらです。
IMSLPの楽譜や動画へのリンクは第1回です。
まとめリストはこちらです。

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18小節目から見ていきましょう。


まず18、19小節目は前の小節のB♭7
Ⅴ7の裏である♭Ⅱ7となり、
Am7にドミナントモーションしてきます。


オーボエ→クラリネット→再びオーボエを受け継がれてきた旋律は
少し上に移旋されてフルートが最後に受け継ぎます。


「ミーードーミドラーシラファ#ーラー」とフレーズを奏でて、
バソンやホルンが冒頭の動機のリズムで伴奏をしています。

フルートの旋律はどんどん音程が下がっていくものの、
全く同じリズムですね。
典型的なドビュッシーの作法です。


コード部分にAm6(D/A)とも取れると書いてありますが、
最初の2拍はバスがラ、
2ndヴァイオリンとヴィオラはラドミ、
ホルンがミーファ#-、
フルートがミーードーミドと動いており、
これだけを全部鑑みればAm6ですが、
チェロのレラという動きはレを11thと取るか、
あるいはDを根音と取ってD/Aと取るか悩ましい部分です。


D/Aと取るならば正確なコードネームは
D7(9)/Aとなります。
(どっちとっても理屈の上では正しいです)


ポピュラーやジャズではテンションは上の方にくるという風に
初心者向けの本には書いてあることが多いので、
11thがチェロの低い部分で出てくるとD/Aのように見えるかもしれませんが、
昨今のバークリーの教授が出版するようなATN系の書籍では
テンションは内部に埋まっている例はたくさんあり、
最新のジャズ音楽でも中に埋まっているテンションボイシングはたくさんあります。


ドビュッシーは既に牧神の時代から
かなり和声の内部の下にテンションを持ってくるボイシングを好んでおり、
「11thがこんなに下にあるのにAm6と取るのは苦しくないか?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
それは「テンションが和声の上部にあるはず」という
考えから来るものだと思いますので、
私としてはほかのドビュッシーの作品群と見比べても
Am6(11)と取りたいです。

もちろんD7(9)/Aでも正解です。


3拍目からもあやふやな感じではありますが、
フルートの旋律の動きや1stヴァイオリンのレの音などを考えると
ここから完全にD7(9)/Aのように聞こえます。


ひょっとしたらドビュッシーはわざとボヤかしているのかもしれませんが、
疑義を挟むあやふやな音使いであり、
それがドビュッシーらしさ、つまり古典和声の機能・解決などを
ガン無視した和声法なので、
無理に古典和声に当てはめずにドビュッシーなりの和声法として受け入れるべきです。


楽譜にはコードスケールをメロディックマイナーと書きましたが、
18、19小節目で実際に使われている音は
「ラシドレミファ#」の6音のみであり、
ド#が出てこないため、
むしろドリアンスケールっぽく私の耳には聞こえてきます。


ソならドリアンスケール、ソ#ならメロディックマイナーですが、
敢えてこの音を避けることで
旋法(ドリアン)っぽい響きをドビュッシーが狙っているのは明白です。



20小節目からはカデンツっぽい動きになり、
トゥッティーっぽい(トゥッティーではないですが)感じで
やや盛り上がります。


コード表記はスラッシュ表記と正体表記と2つ書きました。

Am7Dm/GEm/FF/EDmEm/ACDmEm/ACという
スラッシュ表記は全体が弾いている音を
和音とバスを分離して表記したもので、
ポピュラーでよく見られる表記です。

いわゆる並行和音であり、
連続5度の連続となります。

ドビュッシーの分析でいまさら古典和声云々を述べるのは
やや的外れな気もしますが、
いわゆる古典和声の安定(トニック)、不安定(ドミナント)の原則が
無視されているのがドビュッシーのハーモニーの世界であり、
そもそも古典和声の音世界が無視されているので、
当然古典和声の規則も無視されています。



こういった並行和音やそのスラッシュコードの使い方は
現代の歌もののヒットソングで登場するような
そのままの使い方です。


スラッシュ表記を書いた理由は実際にドビュッシーがこういう風に
オーケストレーションしているからですが、
分析としては正体を書くべきですので、
Am7G7sus4(9)FM7(9)E7sus4(♭9)DmAm7(9)CDmAm7(9)C
と書くべきでしょう。

元のコードがなんだかわからないスラッシュは
演奏者さんには親切ですが、
分析するときには不適切です。


例えばE/Fというコードがあった場合、
これは鍵盤奏者にはとても親切な表記で、
右手でミソ#シ、左手でファを弾けばOKです。

ではFルートで見るとなんというコード表記になり、
自分で応用するときに
コードスケールはどうなるでしょうか?

ミがありますのでFM7なのは確定となり、
シは#11thですが、
ソ#は何でしょうか?

音程だけを見るなら#9thとなり、
E/FというコードはFM7(#9,#11)という表記になります。

普通、作曲家の頭にあるのは
E/FではなくFM7(#9,#11)であり、
コードスケールはリディアン#2と考えて使うのが一般的です。

ディグリーもちゃんと根音を明確にしたほうが
分析のときに把握しやすいです。


このように分析時は正体の方を常に書いたほうが
自分にとって楽が出来るのでお勧めです。


このような手法はドビュッシーにも多く見られる音使いですが、
常に正体を見破れるようになりましょう。


肝心のスコアですが、テンションが複雑であるものの、
Ⅰm7♭Ⅶ♭ⅥⅣmⅠm7♭ⅢⅣmⅠm7♭Ⅲ
ディグリーに直すととてもシンプルで、
Ⅰm7♭Ⅶ♭ⅥⅣmⅠm7→みたいな進行は
普通に現代の歌ものにもたくさん存在しますね。


オケスコアだと上手く音が把握出来ないという方も
いらっしゃると思うのでピアノに直してみました。


20~22小節目のピアノリダクション


オクターブ重複などを除いて、極限までシンプルに
骨格だけを抜き出しています。

是非ピアノで弾いてみて下さい。


そして出来るならこのピアノリダクションされた和声の骨格と
オーケストラスコアを見比べて、
どのように拡大配分され、
どの声部がどの楽器に割り当てられているのかを見てみましょう。


右手だけを見るならば(左手を無視して)、
DmDmEmDm/FEmCという基本形
の並行を主体とした和声付けです。


リズムは冒頭の主題のリズムなのである種の展開・変奏とも取れますね。


右手だけで見ないで左手のバスありきで見ると、
コードはほとんどポップスのスラッシュコードのようになります。


Am7→Cという進行が平行調であるKEY-Cの解決のようにも聞こえます。

これは古典的なドミナントモーションを意図的に避けている
近代フランスに多い終止のバリエーションの一つです。


KEY-Cで見れば一応第7音である(導音ではない)シが登場していますが、
Am→Cという進行はトニックの代理和音から真正のトニックへ向かう進行であり、
ふんわりした終止感が得られています。


こういった古典的なドミナント→トニックというありきたりな終止を避けるために
近代フランスの作曲家がどういった努力をしてきたのかは
フォーレあたりから下って見てみると色々なバリエーションがあって面白いです。


フォーレの作品はその時代の色々な技法の折衷案をとっているように
私には聞こえますが、ある意味、フォーレは玉虫色でありつつも、
それまでのロマン的な音楽とドビュッシーやラヴェルなどへの
過渡期と言える響きがたくさんあるので、
ドビュッシーやラヴェルとその前の世代であるフォーレの関係を見てみるのも
勉強になります。



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1回のみのつもりでしたが、
もうちょっとだけドビュッシーのペレアスとメリザンドの
分析をしてみたいと思います。

前回はこちら
IMSLPの楽譜や動画へのリンクもこちらです。


私も全部やったわけではありませんが、
ブログのネタに当分困らないくらいの量はありますので、
どなたかの参考になれば思いますので続けさせて頂きます。


14~15小節目(スコアマーク①のラスト)

前回の13小節目でKEY-Dmの♭Ⅵ6である
B♭コードに進み、
その後上画像の14小節目でB♭はドミナント化されて、
B♭7(#9,#11)というオルタードコードになります。


オケスコアに不慣れな方へのヒントになると思い、
スコアの各所にコードのR(根音)、3(第3音)、7(第7音)や
テンションの度数を数字で書き込んでいます。


コードを担当しているバソン、弦楽器を中心に音を見て、
コードを判定します。


ピアノに比べれば段数は増えますが、
ただそれだけのことで、
コードトーンやテンションからコードネームを判別し、
調判定やディグリー、コードスケールを取っていく作業は同じです。


B♭7のR・3・7のほかにコードパートでテンション#11thがあり、
さらに旋律を担当するオーボエのフレーズに
「ラ♭ーーシ♭ーレ♭シ♭」とレ♭の#11thがあります。


B♭7(#9,#11)のコードシンボルにおけるコードスケールはなんでしょうか?
作曲の基礎的な内容が分かっている方にとっては簡単ですが、
オルタードスケールかコンディミスケールですね。


第5音がない、#11th・#9thがあるという条件で、
当てはまるのはオルタードスケールが最有力候補です。
コンディミかもしれませんが、第5音の有無の判断材料が
スコア中に存在しないためどちらかという絶対的な判断は出来ません。


画像では第5音がない、#11th・#9thがあるという条件から
オルタードにしてありますが、コンディミでも良いと思います。


こういう風に特定出来ない場合は実際の作品では多々ありますが、
曲全体の音使い、前後の流れなどで判断すれば良く、
自分で応用するときも好きな方を選べばOKです。
無理に限定する必要はありません。



16~17小節目

スコアマーク②に切り替わりますが
バス音はシ♭が保属音されています。

しかしテンション構成が変わり、
2拍ごとにB♭7(♭9th)B♭7sus4(♭9th)が入れ替わります。

♭9thがある、第5音がある、sus4音があるということは
普通に考えればHMP5Bスケールです。


前後を無視してB♭7sus4(♭9th)の部分だけを切り取り、
B♭ドリアン♭2スケールやB♭フリジアンスケールと考えるのもありですが、
sus4の音と第3音が両方あるので、
オルタードドミナントsus4系と考えるのは適切ではないでしょう。


管弦楽法的には16小節目において
ピンクで囲ってあるクラリネットの旋律の重要な音だけを
オーボエが重ねており、
17小節目ではその役割が逆になっている点が興味深いです。


またオクターブ関係の32分音符のトレモロのような
2ndヴァイオリンとヴィオラの伴奏もモヤのような効果があって面白いです。


チェロによる低音伴奏も
HMP5Bスケールには第5音があるので、
先ほどと違い、5th→根音という動きになっています。

#11th→→根音という動きはトライトーンなので、
それが解決するのでなんとなく安定感が生まれています。


この部分から次の転調に入りますが、

B♭コードのままテンション構成が変わる
↓↓↓↓↓↓↓
スケールも変わる
↓↓↓↓↓↓↓
出身キーが変わってそれを転調の呼び水にする


というテクニックが用いられています。

この場合はB♭オルタード(Bメロディックマイナー出身)から
B♭HMP5B(E♭ハーモニックマイナー出身)と
出身キーが変わり、それを軸に転調しています。


こういう技法自体はロマン派音楽にもよく見られ、
丁度ブルックナーをある生徒さんのレッスンでやっているのですが、
似たようなテクニックが存在します。


表コードという言い方はありませんが、
ドミナントの裏コードと元々の形をすり替えて転調する作法は
現行の歌ものやBGMでも当たり前のように見られますが、
近代フランスの作曲家たちも好んでこの手法を大いに用いています。


この場合はB♭7はKEYーDmの♭Ⅵ7であり、
それをKEY-Amの♭Ⅱ、つまり裏コードと見立てて、
次の小節で転調していますが、続きはまた次回予定です。


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近代音楽の祖として評価の高いドビュッシーですが、
彼の中の最高傑作の一つに数えられる
ペレアスとメリザンドをの冒頭を分析してみたいと思います。
(全部やるのはアメブロという制約の中と長さ的に不可能なので…)


記事は僅かですが、ドビュッシーの和声法に興味がある方、
あるいはオーケストラを書きたいと思っている方の
参考になれば幸いです。



Claudio Abbado "Pelléas et Mélisande" Debussy


IMSLPはこちらです。


仕事の合間の疲れた時に寝転がりながらパラパラと見ているのですが、
ドビュッシーの作品の中では編成規模が大きく(3管編成)、
日本でのオペラの不人気やちょっと長い(約2時間半)のも理由なのか、
ポケットスコアも出ておらず、
演奏会で抜粋で取り上げられることもほとんどなく
知名度そのものは曲の素晴らしさに反比例して低いです。



オケスコアは横長のモニターでは見にくいので
紙の楽譜を買うのもありです。
ドーバー社のが最安だと思います。


ドビュッシーが自分自身の技法を確立した当初の作品、
つまり弦楽四重奏 ト短調牧神の午後への前奏曲よりも
ちょっと後の時期で分類としては中期に位置し、
かなり「ドビュッシーらしさ」が現れているのがポイントです。


既にそれより前の作品にいわゆる印象主義的な語法は
ポツポツと見られますが、
世間的な評価が確立し、以後の彼の作風の中心となる和声語法が
明確に、全面に押し出されるようになったのはこの頃からです。



1~7小節目


チェロで提示される低音の主題と
木管楽器で提示される主題は
この曲の後で何度も展開されるテーマです。


ますチェロがオクターブで旋律を奏でていますが、
これは普通にKEY-Dmで特に難しい部分はありません。


敢えて何か言うのであれば弦楽器が弱音器を付けて
音色が少しくぐもった音になっている点と
チェロとコンバスに対して3本のバソンがどのように重ねられているか?です。


チェロとコンバスを補強するような動きですが、
完全にユニゾンするでのではなく断片的であり、
且つチェロにもコンバスにもない音を吹いていたりもします。


こういった重ね方は管弦楽法の一例として
覚えておくと良いかもしれません。


4小節目からコードがA♭(#11)、E(#11)と書かれていますが、
あまりコードネームに意味は無く、
この部分はホールトーンスケールです。


オーボエ、コールアングレ、クラリネットが主体で
リズムがが中々面白いです。


3管編成でトランペットが2本、トロンボーンが3本、
ホルンが4本でチューバもいます。

ドビュッシーのオーケストラの中ではかなり規模の大きい作品です。


コールアングレはイギリスとも、
英語とも何の関係もないのに
誤解からイングリッシュホルンとも呼ばれているオーボエの管長を1.5倍にした
なかなか渋い音色の楽器で、楽譜は完全5度下で読みます。

お馴染みのクラリネットはB管なので2度下ですね。


「移調楽器が読めねー」という方のために
大譜表に直してみました。


5、6小節目を大譜表に直したもの


ヴィオラ、コンバス、ティンパニ(クラリネット2も)のペダル上で
レーミーレミレミレーレミーレミレという
リズムを付けたトリルみたいなフレーズですが、
使っている音は前述の通りすべてホールトーンであり、
トップの音がレの時とミの時でそれぞれ
ボイシングは固定されています。


大譜表を見ればレの時はC-5(9)コード、
ミの時はB♭7-5コードであることがわかります。
これのボイシングをそれぞれの楽器に割り振っています。
この2小節をピアノでゆっくり弾いてみましょう。


ホールトーンスケールは調性音楽のように
基本的なボイシングパターンがあるわけではありませんが、
「どう使うの?」という方は既存の曲の使い方を
研究してみるとその作曲家なりのパターンや考え、
そしてそれによって得られる効果がわかるので
一つの勉強方法としてお勧めです。


管弦楽法としてはピアニッシモによるティンパニのロールが
不気味な感じを醸し出していて雰囲気が出ていますね。
ありきたりと言えばそうかもしれませんが、
なかなか効果的な手法です。


8~13小節目


8小節目からもう1回それぞれのテーマが奏でられますが、
変奏と管弦楽法の達人であるドビュッシーが
そのままリピートするはずもなく、
弦楽器はコンバスが消えてヴィオラが入り、
さらに和声も変わっています。


1回目は1小節ごとにDm→Cでしたが、
2回目は旋律はそのままで半小節ごとにコードが変わり
Dm→F→Am7→Fという和声になります。


バソンはヴィオラとユニゾンしていますが、
バス声部がなくなって旋律だけになったと考えても良いかもしれません。


12小節目からは有名なペレアス和声という名前が付いている
ドビュッシーの個性的な部分ですが、
これを私は単なるハーモニックマイナーとして片付けています。

以前のペアレス和声の記事はこちら

コードスケールでいうとリディアン#2スケールであり、
ペアレントはKEY-Dmです。


ハーモニックマイナーを使った曲はたくさんありますので、
ペアレス和声などと呼ばずに、
普通にハーモニックマイナーとして処理した方が
用語も増えず、混乱も帰さないためお勧めです。


8小節目からのフレーズはKEY-Dmですので
12小節目からもそのままKEY-Dmと考えるべきでしょう。


音使いからも単なるハーモニックマイナーであることは明白です。
こういった音使いは牧神あたりから既にドビュッシーの作品に登場しており、
大いに参考にしたい部分でもあります。


ハーモニックマイナーについては残念ながら詳しく述べている
和訳された理論書は少ないのですが、
私の作曲本で一応ハーモニックマイナーについて一通り触れています。


和声的には単なるハーモニックマイナーですが、
管弦楽法的には1回目と割り当てが大きく異なっています。
オーボエが消えて、代わりにフルートが登場し、
バソンも大いに旋律に加わっています。


これも移調楽器に加えてバソンがテノール記号になっているので
大譜表にしてみました。

ピアノで弾いてみて、
前回との違いを感じ取ってみましょう。

12~13小節目を大譜表に直したもの


B♭のペダルの上でのソーラーソラソラー→という
トリルみたいな2音だけのフレーズは
トップがソの時はB♭6コード、ラの時はAコードの
ボイシングがなされており、
手法としては1回目と基本的には同じです。

ドビュッシーがドを#で書いていることからも
Dハーモニックマイナー出身であることがよくわかります。


1回目はホールトーン、2回目はハーモニックマイナーで、
旋律としては移調されただけで全く同じでも
和声的には色彩感溢れる微妙さがあり、
楽器の割り当てによる音色効果も如何にもフランス音楽という感じです。


ペレアスとメリザンドに限った話ではありませんが、
こういった色彩的な変奏はドビュッシーの最も得意とするところであり、
あらゆる曲であらゆる形で登場します。



ドビュッシーが生きた時代は調性崩壊直前の時代であり、
多くの作曲家が如何にして従来の音楽手法から脱却するかを
模索した時期でもありました。


もちろん保守派もいましたし、
シェーンベルクのようなモロに無調な革新派もいましたが、
ドビュッシーはあくまで調性音楽や古典を拡大解釈して
独自の技法を生み出しています。


メロディックマイナーの和声活用はフランクやフォーレにも
大いに見られますので、
ドビュッシーのオリジナルとは言えませんが、
ペアレス和声などと呼ばれる
ハーモニックマイナーの積極的な和声活用は
おそらく歴史上ドビュッシーが最初なのではないかと思います。


単に音階としてのみ出てくるなら
それこそバッハやモーツァルトの作品にも
メロディックマイナーやハーモニックマイナーは山ほど登場しますが、
音階として上がり下がりするだけでなく、
明確な出身キーを持った上で和声に組み込み、
しかも美しく活用することで従来の長調・短調を
拡張・脱却する技法の一つとして
ドビュッシーが活用しているのがポイントでしょうか。


この辺りはドビュッシーのスコアを見ていれば
自然と分かってきますが、
13歳年下のラヴェルもまた違ったアプローチで作品を書いており、
ドビュッシーやラヴェルの先生・先輩に相当する
フォーレ、フランク、サンサーンスなどの作品も
合わせて、一連の歴史的な流れの中で見ると
近代フランス音楽の進歩の歴史が見えてきて面白いです。


あるいは後の世代のフランス6人組
(ミヨー、オネゲル、プーランクあたり)や
さらに後のメシアンなんかも見てみると勉強になります。


全部やるのは大変なのでチラチラっと見るだけでも
かなり勉強になるはずです。


ペレアスとメリザンドの分析、
というよりオケスコアの分析は大変なので、
続きは気が向いたらやらせて頂きます。


ピアノソロ曲だと楽そうですし、A4で1枚か2枚くらいなら
完結も出来そうですので、
やるならその方向が良いのかなとも思いました。


ペレアスとメリザンドはドビュッシーの中でも
名曲中の名曲ですので、
面白そうだなぁ感じられた方は是非自分自身でも
進めてみて下さい。
ドビュッシーの理解の一助になるはずです。


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前回の続きです。


9~13小節目

リピートマークの後の第2部はFコードから始まります。
C7Fにドミナントモーションしてきますが、
このFコードがピボットコードとなってKEY-Gmへ転調しています。


FコードはKEY-FのⅠであり、KEY-GmのⅦという一人二役で
和声でいうところの定調的転調にあたります。


Cm7D7Gm …と続いていきますが、
Ⅳ7 → Ⅴ7 → Ⅰと基本通りで
調判定さえ出来れば特に難しい部分はありません。


この調判定というのがなかなか難しく、
ファ・ラ・ドでメジャーのように
コードネームがわかっても調が判別出来ず、
なぜそこでそのコードが出てくるのがわからない場合が
初学者の方に多いです。


調がわからないとディグリーもわからず、コードスケールもわからず、
進行の意味もわからないので
調判定を常に矛盾なく正確に判断出来るようにする必要があります。


KEY-Gmに転調しているものの、
和声のお手本通りのシンプルな進行です。


主題のドーファーミラファドミ♭ミ♭ーの最後がミ♭に変わり、
主題がそのまま違うキーで変奏されたような展開がなされています。


13小節目でB♭コードに進んで再び異なる形で主題が始まっていますが、
この部分からさらに転調で
B♭はKEY-GmにおけるⅢであり、
同時に次のKEY-DmのⅥの和音でピボットになっています。


やはり定調的転調になっています。


またここまでで登場するドミナントモーションはすべて正規の
根音4度上行のみであるのもポイントです。


14~18小節目


13小節目からB♭GmA7という風に進みますが、
ここで始めて偽終止が出てきます。

KEY-DmのⅤ7であるA7からB♭へ進む短調の偽終止で、
その後ももう1度偽終止が出てきています。
これは今までにない新しい変化です。


しかし和声進行としてはⅡ→Ⅰ2→Ⅴ→Ⅰや
Ⅳ→Ⅴ→Ⅵなど単純なものばかりで、
特に難しい部分はありません。


16小節目のリタルダンドがいわば展開部の終わりになるわけですが、
ここで元調のドミナントコードであるC7が登場して、
元のキーにドミナントモーションで回帰します。


ここまでの9小節目~16小節目までは
主題展開が行われており、
最初の8小節で提示されるKEY-Fの主題が
下属調の平行調であるKEY-Gmと
平行短調であるKEY-Dmで異なる調と和声進行で
変奏されていることがわかります。


中間部で主題を展開・変奏しつつ、調的に主調から離れて広がりを出す
というのはソナタ形式に代表されるように西洋音楽の基本であり、
非常に多くの楽曲に見られる基本的な流れになります。


緑で回帰と書かれた17小節目から
再現部みたいなものですが、
元の調に帰ってきて主題も冒頭の形そのままで再現されます。


19小節目~最後まで


20小節目から終結部に相当する最後の主題が現れます。
ドーファーミファラドララーと
冒頭と同じ音程関係ですが、22小節目のラの音に対して
ⅤのⅤの9の和声付けがされており、
次にお約束のⅠ2ーⅤ7を期待させます。


属9の和音はここまで何度も出てきていますが、
すべて短調の属9であり、
ここで始めて長調の属9の和音が登場しているのもポイントです。

この部分は和音も厚くとても綺麗ですね。

そのあとゆっくりリタルダンドしながら
Ⅱ→ⅡのⅤ→Ⅱ→Ⅴ7→Ⅰという風に
もう1回サブドミナント→ドミナントという流れで終わります。


全体の調の流れとしては

KEYーF(提示部みたいなもの)

KEYーGm
↓ (2つ合わせて展開部みたいなもの)
KEYーDm

KEYーF(再現部みたいなもの)

という感じです。

提示部「みたいな」と書いたのは
ソナタ形式みたいにしっかり作られているわけでもなく、
極めて単純で規模も小さいからですが、
概念としては小さいながらも提示→展開→再現という
様式が用いられています。


これで主題が2つあり(あるいはそれ以上)、
展開部や再現部の規模がもっと大きくなれば
一応様式としてはソナタ形式になります。


全体の和声進行としては甚だ単純であり、
調設定さえ間違えなければあまりにも単純過ぎて
やってみたら拍子抜けという方も多いかもしれません。


逆にこのレベルでも難しいという方もいらっしゃるかもしれませんが、
いずれにしても慣れであり、たくさん数をこなして、
可能ならちゃんと正しく出来ているか誰かに見てもらうと良いと思います。
(特に難しい曲はなおさらです)


ピアノ曲からオーケストラまで何でも芸術は真似から入りますが、
まずはちゃんと既存曲を解釈出来る力は
様々な曲を作る上で大きな強みになります。


演奏家さんは和声進行や曲の節々に見える作曲家の意図を読み取り、
音楽形式や作曲の様式を自分なりに解釈していくことが
演奏にフィードバックされていくかもしれません。


和声の知識は全体の形式や各部分の構造を理解するためには必須ですし、
譜面に書いていないピアノやフォルテ、あるいはクレッシェンド、
非和声音・和声音の違いにおける旋律の隠された強弱の弾き分けなどの
理解をお持ちの演奏家さんは結構いらっしゃいます。



とは言ってもやはりどうしてもわからない部分があるのは
誰でも同じであって、
私も学生時代はよく先生に質問した記憶があります。


自分で一生懸命考えても、
わかんねーとなるのはむしろ学生の特権でもありますので、
音楽の先生などに質問するのが一番手っ取り早くもあります。


ブログのネタがないときはアナリーゼをやれば良い
ということに気がつきましたので
また気が向いたら何かがしかの曲を取り上げたいと思います。

全体の大きな画像はこちらでDL出来ます。


世の中に対してこういうニーズがどれくらいあるのかわかりませんが、
ドビュッシーやラヴェルの難易度の高い曲や
リリ・ブーランジェなどのマイナー作曲家、
メシアン、フォーレやサンサーンスも面白いですし、
ショパン、リスト、ブラームス、フランク、
ベートーヴェン、モーツァルト、バッハetc…
(権利問題が解決できれば現代音楽やポップスやBGM曲など)
ネタは無限に近いほどありますので、
またそのうちに書かせて頂きます。


特に作曲志望の方はまずはこうやって
自分の好きな曲をアナリーゼして
真似て行けば作曲の勉強になりますので、
この記事がどなたかのお役に立てば幸いです。


自分の好きな曲を片っ端からアナリーゼしていきましょう。


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